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その18 神鳴 (5)

段蔵はただ闇の雨を睨んでいた


さっきまで

屋敷の陣江の部屋にいたのだが。。。

自分で下した「制裁」にさえ嫌気がさしていた


迂闊過ぎるにもほどがある

あれほど「影トラ」に陣江を近づけない


栃尾全体で決めたばかりなのに。。


いや。。。そんな事ばかりが

この

殴り倒すという制裁を実行した「拳」を痛ませているわけでもなかった



陣江の目。。。。

真っ直ぐな


「似ている。。。」


そうこぼすと腫れ上がった自分の拳をさすった





不始末だった「転落」騒ぎは

その日のうちに解決した


二の曲輪の騒ぎが伝わったのは

実乃とやたろーの乱闘によってだった

屋敷にいた段蔵が現地についた時に目の前にあったのは。。。。


ただ

呆れるばかりの乱痴気騒ぎで


段蔵はかなり機嫌を悪くしていたが「何事もなく」解決してくれた事で

荒げた事をわざわざ

実乃や,やたろーに言うでなく見過ごした


堀切からひっぱりあげられた陣江と「影トラ」

顔を見るに何か問題があった様子ではなかった事で

心を落ち着かせたが

己の監督不行届と

陣江の迂闊さには耐えられぬ怒りが沸き立ってしまっていた


陣江を屋敷に連れ戻すやいなや

言葉を交わすことなく




殴りつけた


目の前で襖を倒し大きく飛ばされた陣江を

雨の中

心配で駆けつけていた

おせんが手ぬぐいを投げ出しかばうように座り込むとわめいた



「何をなさるのです!!」


段蔵の目は

怒りという色はなく暗く沈んだ感じで

むしろ冷静だが

顎をあげ「憤怒」の様相を顔は隠していなかった



「おどきください」


下からはい出るように響く「怒」の声

おせんにはその目は恐ろしい物として写っていた

そんなおせんの身を手で避けようと陣江はよろよろと立ち上がった

段蔵は

迎え撃つかのようにもう一度殴り倒した


今度も受けて立つ事のできなかった陣江は殴られるままの方向に崩れた


泣きそうな声をあげおせんは

懇願するように段蔵に言った


「陣江様が何をしたと言うのですか!!!おやめ下さい!!」


その言葉を無視して

段蔵は

倒れ込み切れた口を押さえている陣江に問うた



「己の立場ってのがわかってないみたいだな?」


陣江は

段蔵が言う意味がわかっていた


「主君に懸想(恋慕)しているではないだろうな?」

という事

トラに近づく事を「良し」とされていない自分を

ココに来る時の会話を思い出しながら

初めて口を開いた



「わかってる。。。」


と吹き出す血を抑えながら

下から仰ぎ見ながら答えた


「わかってるんだな」


段蔵はおせんを手で避け

陣江の襟首を捕まえ顔を近づけて言った


「生臭坊主。。二度と「影トラ様」に近づくんじゃない」



低く命令した

その声はおせんにも聞こえていた

ちらりと

その背中を見ながら陣江の襟を捨てるように離し立ち上がり


「何もなかったから許してやる」


と吐き捨てた

その言葉に陣江は言い返した


「何もしない!!トラを守るだけだ!!」


その言葉が終わる前に段蔵は陣江を蹴飛ばした

それでも

もんどり打ちながらも

真っ直ぐな目でくじけぬ意志で

陣江は言い返す


「オマエの考えるような。。。」


今度は顔面を蹴った



その上で平然と


「やれやれ。。。女のケツはいくつあってもいいってか?」


手ぬぐいを握りしめ物言わぬながらも肩を震わせているおせんに聞こえるように言った



「おせん様も夫が夜いなくなるような事を見過ごすなどとは。。。しっかりつかんで置いてくださいな」

見くびるように言い続けた

首をかしげ

震えるおせんの顔を「あえて」のぞき見するように


「いやまぁ。。考えようによっては懐の大きな方かもしれませんが感心できませんなぁ。。それとも陣江は「男」としては。。その。。「もの足りない」ですか?」


陣江は怒り

その言葉を止めようとした

起こした身体をまたも蹴倒され

その上切れた口でうまく言葉が回らない


目の前おせんの肩は「悔しさ」でいっそう震えている



「無礼者!!!」


張りつめたその間を破ったのは

直江の妻だった

そう言うと走り娘の肩抱き段蔵を睨み


他の侍女の聞き耳を配慮したのか

幾分声の度合いを落としたもの言いで続けた



「まだ「許嫁」の身のせんに何を言うか!」


内儀は本気で怒っていた


段蔵は悪びれる事なく肩で溜息をすると


「そうでございました。。。失礼を。。。」


侮蔑的な態度で

挨拶をしそのまま部屋を出て行った





残された部屋で直江の妻は娘を抱き髪を撫でた

その手は優しく

愛おしむ手で


でも

おせんの震えは止まらなかった



陣江は。。。。かける言葉を見失ってただ頭を下げるだけだった


そんな態度に苛立ちを憶えたのか

内儀(直江の妻)は娘を抱いたまま立ち上がり

陣江を睨みながら

何も言わず退出した


横を出て行くおせんの目にはいっぱいの「涙」が見えた






春を待つ霧雨の外をみながら

陣江は腫れ上がった片口を抑えた



例の「転落」事件から十日ほどたっていた


ひっぱりあげられた

トラに縋りついて泣く

つや


雨の洞で

自分の胸で泣いていたトラとかさなる


でもって

帰った屋敷で段蔵にぶん殴られ


震えるおせんに何も言ってやれなかった


怒濤の出来事だった



唇をさすりながら

少し戸をあけそそぐ霧の梅雨に手を伸ばし

切れた傷口にあててみる




段蔵の「忠義」は

自分を「トラ」に近寄らせない事。。。。



そのために手段を選ばない態度で接し

結果

おせんを傷つけた。。。。


わかっている

でも。。。

。。。



思い出すのはトラの事ばかりだった

あれほど罵られて

おせんまでもを罵倒に晒されたのに。。。


トラの事しか想っていなかった



あの日あの雨の中

トラの様子はおかしかった

昔から

確かに「癇癪」を起こす事が多々あった

それは寺に来た頃の方がよくあった

慣れない暮らしに苛立ちが募った結果だったのだろう

それが

何年か馴染んだ頃には見られなくなり

落ち着いたトラになった



なのに


この城に来てからたびたび癇癪を起こし

物に当たり散らしたりもするらしい



落ち着きを失い始めている?

それで「例のあれが」。。。


あの日のトラは「変」だった




「オマエは私の「物」」




あの声。。。。

あの言い方は。。。。


嫌な予感ばかりが心を騒がせた


「もっと。。。もっと近くに。。トラの近くにいてやらねば。。。」


暗雲をたちこめる雨に向かい拳をにぎり

ただ

自分に向かって誓った


それが

この後どんな「悲劇」に繋がっていくのかなど。。。。

考えの中になかった




春の嵐とともに暗雨は立ちこめ次なる「嵐」が来たとき。。。何もかもが引き裂かれていく事など。。



この時は誰も知る術がなかった

総括(藁)



後書きからこんちゃ〜〜ヒボシです


次回からいよいよ。。。。アレがでてきます(藁)

ホントは「あの方」たちが絡むところまで話を書くか?書かないか?迷っていたのですが


「書いてほしい」


ありがたい言葉も多々頂きましたのでがんばって書き書きっていこうと思います!!!


今まで出てきた人物を

少しまとめておきます



長尾影トラ(トラ)

現在十七才の「女城主」様(主人公)

最近になってやっと。。。「女の子」の日がきたりで。。。。忙しそうです(藁)


長尾晴景ながおはるかげ

現守護代様。。最近になって野心再燃

自分のプライドを賭けて打倒影トラに燃えてます


長尾政景ながおまさかげ

長尾宗家の剛の男

最近になって虎視眈々と守護代を狙っている

とりあえず目障りな影トラ打倒で晴景とタッグを組みました


本庄実乃ほんじょうじつの

栃尾の苦労人

最近やたろーとのケンカで生傷が絶えません

大抵原因は「トラ」だったりで苦労もひとしおです


やたろー(小嶋弥太郎)

栃尾の大男

最近つやが屋敷に上がるようになって

寂しいです


善治郎

栃尾の苦労人二号(やたろー配下)

鬼のやたろーに泣きのつや。。。

苦労してます


柿崎景家かきざきかげいえ

戦馬鹿

最近は活躍してませんがしょっちゅう栃尾に酒をたかりにきてます


金津新兵衛

栖吉の黒人(爆)

雪焼けなのか日焼けなのか

腹黒くはないけど真っ黒な人

発言は辛辣です


お猪

栃尾の肝っ玉おかーさん

実乃の奥様

最近まで実家で生母のお世話をしていたが戻ってきて

今はトラの世話してます


直江実綱なおえさねつな

春日山の番人

最近政景まさかげが入城してきて肩身が狭いです

陣江をおせんの婿に。。。。どこまで本気か?


直江の妻

誰か名前着けてください(泣)

最近めっちゃこまってます


おせん

直江実綱の娘

降ってわいた婚約話に最初は「拒否権発動」

しかし。。。田舎ではなかなか出会いのなかったところに陣江登場で

一目惚れ。。。。

嵐の予感です


つや

小嶋弥太郎の娘(藁)

たまに矢のように飛んでくるので要注意


中条藤資なかじようふじすけ

揚北あがきたの優男

亡き奥方茅様を今も深く愛しながらも

女を絶つ事ができません


加当陣江

ボコスカウォーズ(突っ込まれ役)

最近ボコボコに蹴られ殴られいいとこなし

おせんが本気になっている事に気がついてません(爆死)


芝段蔵

ボコスカウォーズ(つっこみ役)

最近評判めっちや悪いです

実は陣江と自分は似ている?なんて思ってたりもします


多英

本庄実乃の娘

栃尾のぼんやりさん

最近風邪ひきました


そんな感じで

これからも色々な人が出てきますが


よろしんお願いします!!!


それではまた後書きでお会いしましょ〜〜

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