その18 神鳴 (3)
短編で「龍」というのを書きました
こちらは時代物ではなく
普段の私の生活に近いところから題材をとってきました
よかったら読んでやってください
「なんで作務衣なのさ?」
土砂降りになり濁流を作り始めた谷の堀切りを避け
小高い
樹木の下に一時避難をした私はジンを見ながら聞いた
ジンは落っこちてきた先をを見ながら答えた
「夜とか。。。屋敷にいる時はこのカッコの方が落ち着くんだよ」
それにしても見渡す限りの競り立った断崖
これが
栃尾城を守る防備の谷だという事を期せずして自分で味わってしまった
そうとう下まで落っこちてしまった私たちは
なんとか上に向かって移動を試みて見たが
当然簡単に登ることもかなわず悪戦苦闘
そんな矢先に「雨」に降られ
足をとられ。。。
まったく。。。
なんて事か。。。。ついてない。。。
私は腹のあたり入れた屋敷から持ってきていた物調べた
懐紙は雨に浸かってダメになっていた
墨坪はそのまま置いて
酒を入れてきた竹筒を出した
ありがたい事に二つとも無事だった
春を待つ雨は冷たい身体を冷やしてしまわないようにと
「酒でも飲もう」
とジンに差し出した
振り返ったジンの顔は。。。。泥にまみれていて思わず吹き出した
「オマエもいっしょだって」
顔をしかめ苦笑いしながら泥を払って言った
言われるまでもない
髪も顔もドロドロだ
酒を口に運びながら周りを見渡したが
止む気配のない大雨になってきていて一寸先さえ見えない
朝まで動かずにいる事が最良の策だ
渡された竹筒を片手にジンは遠くに何かを見つけようとしながら
思い出したように言った
「昔もこんな事あったよな。。。」
「昔?」
雨を手にとって顔を拭いながら
「寺からオマエが逃げちゃた事。。。あっただろ?」
曖昧な記憶をさぐった
私は幼少の事をあまり憶えていない
少しづつ
私の周りにいる者から聞く話によって「きっと」こんな風な「子供」だったに違いない
という感じに自分の幼少時の事を考えるようにしていた
だけど
ジンには他者から聞いた話で作った自分を話したくはなかった
答えに迷って
考えこんだ
そんな私を知ってか?それとも知らぬふりなのか?
ジンは話しを続けた
「あの日も雨だったよな。。寺から逃げて城に帰るって言うことと聞かないオマエの後ろを付いて歩いた」
少しだけ
あの日の事を思い出した
夕焼けだったのか?
朝焼けだったのか?
真っ赤に染まった空の下
少ない雨の中を幼い私はとぼとぼと歩いていた
涙にくれて
しゃくりをあげながら一心に城を探していた
「後ろにいた?」
ジンは笑って酒に口を付けながら言った
「ああっずっと何度も寺に帰ろうって止めたんだけどオマエ全然言うこと聞かなくって。。。。そのうち雨は大降りになるわ道に迷うわで。。。しかたなく今日みたいに雨宿りした」
私は独りで泣いていた
それしか憶えていない
どこまで歩いても城に着けなかった
川を挟んだすぐ上にある城に。。。。。たどり着けなかった
ジンは後ろにいた?
わからない
「ごめん。。。あんまり憶えていないんだ。。。」
「ガキだったからな」
濡れた袖を絞る
私のとなりでジンは作務衣の上着を脱いでガシガシ絞り始めた
大きな背中だ
不思議な感じ
触ってしまいそうになる手を戻して
思い出を巻き返しながら
。。。。
この背中におぶられて。。。。泣きながら。。泣き疲れてうたた寝しながら寺に帰った?
少しづつ
ぼやけた思い出を目を閉じて探す
ただ寂しくて
寂しくて
どうしてだろう
私の心は彷徨って寺から逃げ出していた
道すがら
「誰か」と話している
「行こう」と
急かせる声と
「何処に?」と
躊躇する私。。。。
そんなやりとりが。。。。あったような
「誰と話していたのか」
その人の形も影も浮かばない
歩いた道には一人しかいなかった
たった一人での会話。。。。
自問自答
一本の道を動物のように行ったり来たり
私は確かに「誰かに」対して駄々をこねていた
そのうちに雨は激しくなって
涙もどっと溢れて
そうだ
雨の下よく焼けた肌のくりくり坊主走ってきて
私の前に立って何かを言っていた。。。
あれは。。。
「あの時。。。なんか言ったけ?」
記憶の糸。。。それを懸命にたぐってみる
髷をほどき髪を絞りながら聞いた
ジンは着物を絞る手を止めて背中越しに答えた
「ずっと近くにいる。。。て。。約束した」
そうだ。。。。
「約束」した。。。。
激しい雨音
揺れる木々
少しの間をおいてジンは振り返った
「髪。。。。ながっ。。」
少しの時間で呆けてしまった私
その下ろした髪の姿にジンが「変な」驚きかたをしているので
ジンの頭を叩きながら言い返した
「オマエだって!!ちょっと前までは坊主だったくせに!!」
「いて!!」
しんみりとしてしまった場を活気づけるかのように私は大きく声を出した
生意気な
たった二年でしっかり髷までつくって帰ってきたジンの頭を何度か叩いた
恥ずかしい
なんか髪を下ろした自分が
子供っぽく見られてしまったみたいで
「そんなに珍しいものでもないだろ。。ジロジロ見るなよ。。」
気恥ずかしくて酒をグイッと飲んだ
と
同時に大きな音が近くにドスンと落っこちてきた
一瞬で周りを昼間のように照らした光が落っこちた
雷
木々はよりいっそう大きく身震いしている
私は手に巻き付けた数珠を握りしめた
雨は雷も呼んだ
雨風をしのげる場所を探して
堀切りの尾根に近い方にむかって歩いた
途中何度かぬかるみに足をとられながらも
さすがに
ただの木陰では土砂降りはしのげない
尾根にむかう先に防柵用に切り出された丸太がくくりつけてあり
小さなクボミがあった
縄と石くつの道具があるところからしてココにも柵をつくろうとしていたのだろう
囲いのある場所に私たちは急いで身を隠した
しばらくジンは外を見ていた
変わらぬ暗雲
それにしても
なんだか言葉の少ない私たち
いざ面と向かったら何から話していいのか?
。。。。
実は頭の中には話したい事が。。あって
すぐにでも口に出してしまいそうなのだけど。。。。
「おせん」との事は。。。。なんとなく。。。聞きたくない
でも。。
「婚儀」。。。。
ホントはどうなのか。。。
ホントに「おせん」が好きなの?
あやうく口を滑らしてしまいそう
そんな私の
もやもやしている心を叩くようにまたも大きな光
雷が落ちた
息を呑んで
数珠をもう一度確かめ強く握った
「トラ?」
外を見回していたジンが暗くてよく見えない表情だが
何かに気がついたように少し笑って聞いた
「ひょっとして。。。まだ「物の怪」が怖いの?」
その言葉の後を押すように稲妻が走った
ジンの言葉に焦った私の顔は。。。。
落ちた光に照らされて
ばっちり見られていた
「ちがう!!」
悲鳴に近い
声をあげて否定した
神鳴
後書きからこんにちわヒボシです
。。。。
ぶっちゃけやってしまった感じですが。。。
サブタイトル修正とか。。。
雨宿りって章だったのですが。。。
構成をし直した結果「神鳴」に変更しました
すいません。。。もっそごめんなさいです
ダラダラと長引かせた内容を書き続けるのは良くない
という意見を頂いたので
真剣に構成をし直した結果と受け取ってもらいたいのです!!!(泣)
がんばって走っていきますから許してやってください。。。。陳謝
ところで
風林火山の「直江実綱」様「本庄実乃」様を見ました
直江様に関しては身近な人をモデルにしているのでちょっとイメージからそれましたが
実乃様は結構いいとこついてました!!(藁)
あんな感じです!!
それにしても
影トラ様の周りはおじさまが多いです
おじさまのハートがっちりわしづかみでがんばって欲しいです(爆笑)
ある意味オヤジキラーか(爆死)
ヒボシも殺されますね。。。
目で殺されますね(懐かしい)
それではまた後書きでお会いしましょ〜〜〜