表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/190

その17 花の嵐 (8)

宴は続いていた

酒も何杯も飲んだ。。。


諸将の喧噪は聞き流す強い風の日のような過ごし方

何も耳に届かなかった

何度か

実乃が私に耳打ちをして「会釈」する程度の事だった




酒の味がわからない


「加当陣江とおせん様の婚儀について。。。」


まさか

ジンが「嫁」を貰うなど考えた事もなかった

元々

私達は「僧侶」だ



俗世を斬り

御仏の世界に入った人にとって伴侶とは

そうだ

ある意味では


仏の道こそが「伴侶」だった。。。。ハズ。。。



いや

ちがう

そういう信心に即した憶測じゃなくって。。。

靄がかかった不透明な感情


私はどうしたらイイ?


この気持ちはなんなんだ?


まるで

置いてけぼりを食らわされた子供のような。。。



何か。。。


「どうしました?」

考え事に没頭していた私の前に中条が徳利をもって現れた

「影トラ様はお疲れですか?お顔が優れませんが?」


首を少し振った

酒宴を誘った私が具合を悪くしていたのでは「駆け引き」もはじまらない

「いやいや」


。。。。


「中条殿が奥方と会われたのはいくつの頃ですか?」


私はぼんやりした感じで目の前に来た彼に質問した

中条は手に持った徳利を床に降ろして

少し離れた所に腰掛けて答えた


「十五の頃だったと覚えています。」


十五。。。。


。。

中条は一瞬怪訝な表情になったが

話の腰をおる事なく質問をしてきた


「十五の時に想う方がいらっしゃいましたか?」

「いや。。。いない」


私は「想う」というのがわからなかった

おせんの

ほんのり赤のそまった頬を思い出す

あれが

想っている人の表情なのだろうか?


私の態度がおかしかったのか

実乃が徳利を持ち

中条に向けた


「中条殿これを機に「揚北」とのよいえにしを深められる事を期待しております」



「縁か。。。。」


実乃から酒を受け取りながら私を見ている

中条を前にこぼした


「奥方とはもう何年の縁になる?」

中条は杯を干して

膝に手を落とすと悲しそうな笑みで答えた


「十年前に身罷り(みまかり)ました」



飄々とした態度の中条からでた言葉に

私は顔を伏せた

中条は続けた


「しかし初めてあった時はかなり。。。引きました」

そういうと笑って続けた

中条の妻は

揚北の地元豪族の娘だった

十五の中条はいきなり降ってわいた「嫁」の話にかなり困惑した事をおもしろ可笑しく語った


「今まで見たどんな女より。。。醜女しこめ(注.美女の対義語)でして。。。」


その容姿がかなり細く「骨」かと思い

祝言の席から脱兎のごとくに

逃げ出しそうになったと


酒の席での中条の話が可笑しい事で

栃尾の諸将も集まりだした中

私は聞いた


「嫌っていたのか?」

「まぁ。。。あまり好きな女ではなかったですね。。」


大笑いの間

徳利を私に差し出しながら中条は言った



「ただ良くできた女でした」

「良くできた?」


杯につがれた酒に中条は

袂から懐紙に包んだ春を待つ「芽」を浮かべた


「奥(奥方)の名は「かや」と言いました。。いつも私を待っていました。。待っていてくれました。」


「待っていてくれた?」


大笑いだった間は静かになり

彼の次の言葉を私は待った


「男は我が儘な物なのかもしれません。。茅を嫌った私はすぐに側室を二人貰い。。奥の寝所には寄りつきもしませんでした」


心当たりがあるのか

急に俯く諸将もいたりする中,語った


子のない正室は。。。惨めだ

茅を長くないがしろにした事を淡々と告げた

豪族との約束の手前

手際よく執政はしていったが。。。自分の気晴らしに女遊びを続け

何人もの子供を城に。。。茅に預けては知らぬ顔をした事


「だが離縁はしない。。。まさにまつりごとのためだけの「正室」でした」


「それが「よく出来た」という事なのか?」


私は少し苛々してきていた

もし

ジンがおせんをそんな風に扱ったのなら許さない


「いやいや違います。。。天罰覿面!側室の二人は子を成した後いく年もたたぬうちに早世。。。その子達も疱瘡ほうそうにかかって両の目の光を失ったり。熱で寝込んでしまったり。。」


中条は自分で手酌して酒をあおり続けた


「荒れました。。今まで正室と子供を作らなかった罰だと親類縁者に罵られ。女遊びに放蕩三昧で作った子達の母はみなそれに乗じて「我が子が嫡子」と騒ぎだし。。」

自分の居場所を見失ってしまっていた事に気がついた



「何もかもを捨ててしまいたくなった」


遠い目で続けた


そんな失意の思いと惨めさで屋敷をうろついた時の事だった

今まで近寄った事もない屋敷の北の部屋

茅の部屋の前を通った時,気がついた


朝となく昼となく夜となく。。。。

静かに続く読経に

何をしている?

荒れて酒浸りになりながらもその部屋の様子をうかがった

何人かの子供たちが出入りをしている


かつて

遊びで作った子達

母達はどこかに消えてしまったりで茅に預けた子達だ


「さあ。。手を合わせてお祈りしましょう」


それは祝言で聞いたきりだった茅の声


何をしている?

何を祈っている?


不思議な空間に吸い寄せられるように中条は茅の部屋の襖を開けた

部屋には数人の子供たちと

茅が仏壇に向かっていっしんに祈りを捧げていた


「何をしている。。」


何年ぶりに見た茅の顔は相変わらず痩せた細い面だった

「祈っております」

「何を?」


「子供たちの病が治る事を」

痩せた女の声とは思えない毅然とし張りのある声に

逆に中条は震える声で問うた


「オマエの子供じゃないのに。。。」





「みな。。あなた様のお子ですから。。。」


中条は泣いた

女も子供も「政」の道具ぐらいに思ってきた

そのもっとも最たる者として酷い扱いを続けた「茅」が

正室として立派に勤めを

子供たちを育て

祈ること

慈しむ事を教えていたことにひれ伏した


今まで

何をしてきたのだ。。。オレは。。。


こんなところに

自分を想い続けてくれた女を閉じこめ

自分だけで生きているなどと。。。


それ以来茅を表の屋敷に移し

子供たちから側室たちの世話まで一切を「責任職」として任せた




そこまで話して顔を上げた


「私の不出来で茅との間に子を作る事は出来ませんでした。。。しかし。。茅はどちらかという中条の家におけるもう一人の大きな母としてたくさんの子供たちに慕われ。。私の帰れる場所になってくれました。。。。」



「本当によく出来た女でした」


その顔は真実を語っていた

私の顔には涙がいっぱいになっていた

中条はかなりおどろいた様子でそれでも実乃に進められ酒を煽った

私は泣きながら聞いた

もう涙を止める事は出来なかった


「それだけの事を成した奥(奥方)を好いてはいなかったのか?」

杯を降ろした中条は困ったような照れくさそうな。。。それでも落ち着いて答えた


「大きなひとでした男と変わらぬ仕事をしてくれた茅にただ「好いた」など。。恥ずかしくて」


「そうか。。。良き奥方であったな。。会いたかった」

なんて大きな女。。。。

心から感心した私の言葉に中条はひれ伏した





宴が終わり

自室の前の縁側に足を投げ出して私は酒に浸っていた

時折吹く風で

木々から雪が舞い降りる


中条の奥方はなんと大きな「慈愛」を持った方だったのだろう

良い話を聞いた


杯を高く掲げた

雪が入ってくれないかと待った

ジンにも話してやろう。。。。良き「夫婦めおと」になれと



あのもやもやは

少し晴れたか?


私は中条の奥方のように

より大きな仕事をこなし「慈愛」の心を。。。。持ち。。。。



「あれ。。。。」


急に涙が溢れ出てしまった

さっきも泣いた

今も「何か」に引っかかって涙が。。。。。溢れる


わからない感情

両手で杯を押さえ

自分が一人きりである事に震えた。。。。

私は

私にも


中条の奥方のような方が。。。。いて欲しい。。。。



私だって疲れる。。。


「お身体に障りますよ」

いつきたのか「お猪」が着物を肩に掛けながら言った

ボロボロに泣いている私は顔を拭う


「猪は実乃の事。。好いてる?」

と聞いた


「もちろんです。。。でも今はおトラ様の方が大切ですよ」



その顔は悲しそうに見えた

手を引かれ部屋に戻る少しの間

私は月を探したが

空はにじむばかりで星さえ見つけられなかった


身体の奥に穴が開いた。。。。

そんな痛みが心に残った

風林火山。。。


後書きからコンニチワ〜〜〜ヒボシです


youtubeでなんと25話まで見ました(爆)

文明の利器万歳!!!

ところで

山本勘助ですが

当然「カイビョウヲトラ」でもそのうち出てきますが

風林火山の勘助は

私のイメージとはだいぶんちがってちょっと戸惑いました


えらく

立派な体格だぁ。。。

足は引きずってるけど。。。

身体なんかめっちゃ良い感じに鍛えられてるし

もっと

線の細い「狡猾」そうな人ってイメージがあるんですよヒボシには

ただ

ドラマですからね

ましてや主人公ですから

そんなメタメタなカッコの人ってわけにもいきませんよね(藁)

武田晴信は。。。ハハハハなかなか良かったです

今までにない感じの法性院様(藁)

後めっちゃ怖いのは諏訪御料人様事ゆう姫。。。

顔怖いよぉぉ

癇癪持ちだよぉぉぉ


この先「入水」自殺しちゃう理由とかも見え隠れしてますね

ドラマだから自殺はしないのかな?


そんな感じで

小説のイメージモデルになる人はいませんでしたが

なかなか

楽しいですね!!大河!!

これからも見ていきます!!!



それではまた後書きでお会いしましょ〜〜〜

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ネット小説ランキング>歴史部門>「カイビョウヲトラ」に投票 ネット小説の人気投票です。投票していただけると励みになります。 人気サイトランキング
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ