その17 花の嵐 (5)
お詫び。。。。
昨日upしたこの章を修正しました
この章に限らず
頻繁に書き直しをしているのはlastupの項目を見ていただけばわかるとおもいます
まだまだ自分が未熟でダメな部分がいっぱいなので
読み返しては「修正」「修正」の日々です
しかし快く読んで頂くみなさま
メッセージを下さり励ましてくださるみなさまに報いるためにも
がんばります!!!
がんばります!!
よろしくお願いします!!!
ちょっと暑苦しい挨拶になりました。。。火星でした!!
謀
というのはその名のごとく相対する物を様々な方面から「計る」というところからきている
それは大抵相手の内面を見て取るために「計る」ため
結果
ドロドロしめった巣窟に入り込む事になる
「さっぱりしている」
なんて事は望めない事だ
遠巻きな言葉の中に幾重にも張り巡らせた「棘」と「花」で
惑わし
時には刺し
相手の中身を探っていくのだから
あまり気持ちの良いものでないのは「当然」ともいえる
が
今回にかぎって言えば中条の心中はかなり「穏やか」で
むしろ「爽快」な楽しさえ感じていた
「春日山」から来た使者の一人「芝段蔵」との問答は
そういう「男らしい」清々しさがあった
中条の「口説きに来た」という言葉に
彼は言った
「私もです」と
春日山も影トラを「口説きに」来ているやつがいる
というのが
可笑しかった
そして
それは「深く」読むのならば
直江実綱が「影トラ」を「次期守護代」に擁立させようと動いている
とも考えられた
なるほど
顎をさすり得心する
晴景の様子はいまいちわからないが
直江ほどの男が気をもんでいるのが行状暗闇で頼りなさげな春日山の主ではなく
真新しい17歳の女城主にある事は
女好きを自負する「中条藤資」には
好ましく
そして「興味」に繋がっていった
そしてさきほどまで
表屋敷の間にて「噂」の「主」影トラとの謁見をしていた
それは思い出すのも
楽しい会見だった
最初に部屋に入ってきたとき
頭を伏せていた中条は前をとおる踝,足の白さに惹かれた
つい
好き者の悪い癖が
手をのばしてしまいそうになった心を抑えた
。。。女の足だな。。とほくそ笑んだ
「鳥坂城城主。。中条藤資にあります」
顔をあげ
初めて対面した「噂」の影トラの身体を「舐めるように」下から
じっくりと見回した
市井に溢れる「女」たちに比べて群を抜く「身の丈」だ
大きな女というのは聞いていたが
全体は作りは細く
驚くほど色の白い肌
それに
女らしい豊かな胸元につい見とれた
「17歳か。。よく育っておる。。。」と独り言を不謹慎に浮かべた
「長尾影トラである」
その声で中条はその果てのない興味の世界に引き込まれた
まさしく「女」の声だ
なのに
口調は間違わないほどに。。。。「男」なのだ
聞くだけなら
滑稽な「白拍子」のようだ
不思議な気持ちが逸ってゆくのがわかる
この「不思議」を知りたい
「美しい女城主様。。お名前をどうお呼びすればよろしいでしょうか?虎姫様?影トラ様?」
中条は「優男」らしく
口説き文句をほどよく塩ふった質問でぶつけた
が
上座にすわった影トラは変わらぬ表情のまま
となりに座す本庄実乃に
どちらがいいか?と聞いた
。。。。。
可笑しい
普通
こんな役職に就いてしまった女は「癇癪」持ちだ
男でさえ内乱充ち満ちたこの地を治めるのは大変な辛苦が伴う
それを癒すために中条は女を抱く
だが女は何で癒されたいか?
といえば
一番簡単なのは「褒める」事だ
職務に疲れイライラを募らせたしかみ面でも
「美しい」という言葉には弱い
「美しい」という言葉に顔をほころばせる
たちまち機嫌を良くするものだ。。。
だが
影トラの表情に変化はなくその言葉に興味さえ示さなかった
「影トラでよい」
平然とした顔で
中条の口説き文句を返した
。。。
いままで
数多の「女」を口説き落としてきた中条の目の前にいる女は
「美しい」には感心がないようだ
それにしても
思い出すに似ている
「虎御前」に
そして
堂々たる振る舞いは「為景」に
鬼嫁「おトラ」と
戦鬼「為景」との子か
やはり。。。
そうだな。。そんな両親では
「変わり者」にもなる
しかし
面妖だ
一方では
これほどまでに静かな物腰なのに
「黒滝を殲滅した将」
殲滅の矢面にたって指揮をし
一族を皆殺しにした将
鬼神のごとき戦に城はおろか城下の町まで全てを焼き尽くした
荒々しき将
それに恐れをなして「臣従」しにきた豪族は数多くいた
中郡に守りの要として守護代家の旗を持ってきたこの「小娘」を
侮ってかかった者たちはそのほとんどが今や「この世」にいない
神速の戦
冷徹な戦果
どれをとっても追随を許さない「強さ」だった
なのに
本人が感ずる感じないを別としても「美しく」「穏やか」なのだ
中条の考えは表向き臣下の礼を深く謙るようにとりながらも
いずれはその力を
「揚北」に取り込んでしまおうと考えていた
いくら
強くてもまだ「話術」による戦術に長けているとは思い難かったし
若い女にありがちな「癇癪」を律する「大人の男」が抱いてやれば。。。。
いやうまくすれば。。。
そのために
本気で口説きに来た
そして
運良ければオマケとして
「美しい」と黒田秀忠お墨付きの女将を
「手篭め」にして
自分の「側室」にしてしまえないものか?
とまで考えていたが
そういう尺で計れる「人」ではないようだ
というか
「女」なのか?
と「不可思議」な感覚を覚えていた
鎮座した姿形は「女」なのだが
感じる「気」や纏う「気」は女のもつ独特の「色」が無いのだ
だからといって
中身が「男」というわけでもない
だが
男も恐れる「殺戮」を行い「鬼」ではないかと噂された影トラの所業と
今目の前にいる姿は。。。。
一致しがたい
抱いた女は千以上の中条
なのに
一概に「女」という括りに入れられない影トラは
「不思議」な存在でしかなかった
これほどに「不可思議」な存在をどう取り込むのか
どう口説くなどという言葉は簡単に出てこなかった
というか
不可思議すぎて中条の考えていた枠を越えていた
不思議だ
まったく
不思議な方だ
だがありがたい確信もあった
頭を下げることに「抵抗」感じなかった
「嘘」であっても晴景には頭は下げられない
思い返すにも許し難い晴景の「謀」
あのドロドロした感覚を陰鬱な顔に表した姿を今でも覚えている
今もそうであるなら
どれほど疎ましい「男」なのだろう
自分はああは成りたくない
むしろ
不思議でも
いやその底知れぬものに惹かれてやまない影トラを知りたくなった
個人的にはそれが「臣従」の理由であってもかまわないと思うほどに引きつけられた
夜の宴を約束し
退出した部屋で現八に中条は言った
「今はまだわからない。。。だが「たいくつ」はしなそうだ」
と
そして続けて聞いた
「あれは本当に「女」なのか?」
中条の質問に現八は困惑の表情で返答した
「男のような面でしたか?」
「いや。。。秀忠の言ったとおり「美しかった」。。。ただ」
「ただ?」
解らなかった
あの「気」はいったい何だ?
何故
あれほどに「美しい」のに「色気」が無いのだ?
。。。
まだ時間はある
下がった部屋で着物の前をゆるめ足を崩して
少し冗談めいた返事を現八にした
「生娘(処女)なのかな?」
呆れたという感じに現八は首を振った
中条も自分に呆れた
たとえそうだとしても「色気」のない年ではないハズの影トラ。。。
「まったく不思議な方だった。。。。」
と感心なさげになっていた現八をよそにつぶやいた
不思議だから知りたい。。。
いつになく心は浮かれている
底知れない「女」に惹かれるのは「男」の性だ。。。
楽しい夜の宴を待とう
と
遠路の旅に疲れたのか目をとじた
中条たちの謁見の間
段蔵とジンは別室で待たされていた
城内の台所では
おせんと
直江の妻が珍しく声をあげて話をしていた
「名前を加当陣江様とおっしゃって。。。これ!!」
「イヤです」
配膳の支度で忙しく歩き回るおせんは唇をかみながら即答した
来客で夜の宴の準備を手伝いに来ていた「つや」は懐かしい名前に耳をそばだてながらも手を動かした
「イヤではありません。。。父上が選んだ婿様にご挨拶を。。」
「イヤです!!」
立ち止まって
向き直ったおせんは目尻をつり上げて母の言葉に反抗した
つやはよじよじと近寄って耳を立てている
「座りなさい。。。」
直江の妻は努めて冷静にと
娘の肩を抱くとその場に座らせた
「お会いする前からそのように駄々を。。。」
「会ったこともない方だからイヤなのです!!」
直江の妻は溜息をついた
「だいたい。。父上はいつも身勝手です!府内から栃尾に行けと言われた時もなんの相談もなく。。私は身支度もままならない状態でココにきて。。それを今度は。。」
おせんは言葉に詰まった
栃尾は嫌いじゃない
でも。。
たくさんの女友達たちと別れて田舎の支城に来いと呼ばれた時には本当は泣きそうになった事を思い出した
家長である父の命は絶対だけど
年若いおせんには辛い決断も多かったのだ
「とにかく!!私は絶対「嫁」になど行きませんから!!」
「いいえ!とにかく!!お会いするのです!!」
「イヤです!!!小嶋殿みたいな大男だったらどうするのですか!!」
そこまで言い切るとおせんは母の手から逃げるように支度に走っていってしまい
その後を直江の妻も慌ててその後を追っていった
。。。。。
話に耳を立てていた
つやは一人
口をとがらせながらつぶやいた
「やたろーは可愛いぞ。。。」