その16 使者 (3)
あの日はどのぐらい寝ていたのだろう
天井の板の目を見ながら呆けていた
「身体も元服されました」
その言葉は妙に耳に残っていた
元服という物が二度くるとは思ってもいなかったが
私の「切腹」を止めてくれた侍女(実乃の奥方と知ったのは最近だ)の話では「女」には切っても切れないもの
「月の障り」
という。。。。
月に一度「何故か」やってくる
何というかめんどくさいものなのだそうだ
とにかく。。。「血」がでるのがイヤだ
今日はひさしぶりに
つやが私の所に来てくれていた
二度目の「障り」の日
私は寝床で丸くなったままでいた
身体の調子はいまいちだし
怠い感じも少し
腰も重い
ただ
血は少なくなった
「下血」日から4日
「月の障り」がくると私は眠ってしまう
ほぼ1日を丸々眠りにつく
前日ぐらいになると
イライラしてくる
で
頭がふわっとした感じになって。。。。
眠ってゆく
なんともったいない日になってしまうのだ
「大事」が起こったらどうしたらいい?
そう思いながらも
事を過ぎるのを待つしかない身が。。。恨めしい
それにしても。。
思い出すのも。。。恥ずかしいのは
宴の事も何もかもほっぽりだしてしまった事はもとより
「腹を斬る」などと
大慌ての
。。。
「大立振る舞い」
をした私
目覚めたとき
実乃が部屋に来て
何事も「問題なし」と言ってくれた事がホントに救いだ
最初の「障り」の時は「戦」の疲労も大きかったのか
春日山に戦況報告に行く事もできない状態になってしまったが
報告は「柿崎」が
残党および
郎党の「討伐」は「金津」が引き続き行ってくれて助かった
私は
書状をまとめる仕事だけを行う
出来上がりを「柿崎」に送る日々が続いていた
「つやは。。。。知ってるの?」
私の横で手習いの本を見ているつやに突然だが聞いてみた
「何を?」
まだ寒い日々が続いている
火桶を手で引っ張りながら
よじよじと私に近寄って聞き返した
「月の障りの事?」
「まだだよ。。」
「だってオラ。。。あっ」
つやは最近になって手習いと一緒に言葉遣いを,多英やおせんに習っていた
とっさに出た「オラ」というのを直せとこっぴどく言われてるらしく
口を押さえて
「いまのなし!」
と
私に手を振った
笑ってしまう
「オラでもいいよ」
引き続き手を振って
「ダメダメ!!」
可愛い
つやは素直な子だから屋敷の侍女たちにも可愛がられていた
最近は礼儀,作法なども習い
侍女たちにまざって仕事もしている
その姿を
よくやたろーが見に来ている
あの大男が
襖の向こうのつやを心配そうに
首を伸ばして見ている姿はおもしろい
それにしても
旧年の内は全然出し惜しみをしていたのか
今年に入ってからの「雪」はすごい
何より風が強くよく戸板を飛ばしてしまっては「男衆」が走り回って修繕をしているが
いかんせん止まない吹雪の中での修理で
戸の締まりが悪いのか
冷たい隙間風がそこかしこで入ってしまって
息が白い
火桶があってもなかな暖を取るのは難しい
深々と滲みてくる寒さを感じ身体が震えた
「風呂。。。入らない?」
私は咄嗟に思い浮かべて言った
栃尾には風呂がある
ちょっとした「温泉」なのだ
岩殿を降りたところにこじんまりと作られたあの風呂に「戦」の後はいつも入っていたが
今回はまだ入ってなかった
「風呂?」
私は目を光らせた
風呂は贅沢なものだし「女」は桶にそれを組み身体を拭くだけの方が多かった
私は
入っていたけどね
「そうか。。つやは知らないんだね」
せっかくだから一緒にと
私は侍女に頼んで支度をさせた
「あ〜〜〜〜」
「あ〜〜〜〜」
声が響くのが楽しいのかつやは何度か壁に向かってしゃべったりしていた
「つや!!入りなよ!身体冷やすよ」
はしゃいで
裸のまま岩に座っているつやを呼んだ
湯に身体を沈める
肩まで入ったところですっかり脱力していた
ホント
これは「戦」から戻ってきたらかかせない「馳走」だ
身体の「芯」まであたたまって良い気持ちだ
湯に溶けてしまいそうな気持ちで
同じように
何もかもを溶かして忘れてしまいたい
湯殿の上
少し開けられた「窓」から雪の姿を見た
ハラハラと舞い降りては消える雪を見ていて
悲しい気持ちになった
あの城の骸たちはどうなった事だろう。。。
きっと
この風吹く雪の下にいる事だろう。。。。
春になったら「供養」しなくては。。。
目をつむり祈った
「こんなところがあったの初めて知りました!!」
私のすぐ横に入ったつやが
黄色い声を響かせて
好奇心いっぱいに周り眺めながら言った
山奥には時として「温かい水」の湧き出るところがある
栃尾は城を造ったときにこの「風呂」を掘り当てた
栃尾の「宝」だ
「たまに入るといいよ」
温かな水は身体を潤わせてくれる
空を見て思い出した
初めて栃尾に来たときジンと一緒にココに入った事を
「栃尾に来た日にジンと一緒に入ったなぁ〜」
伸び伸びと身体を広げて言った
懐かしい
「陣江さんと?」
不思議そうな顔でうなづく,つや
「今頃どうしているのかな。。。」
きっと雪かきをしている事だろう
「越後」の冬はどこも大変なハズだ
「おトラ様は。。。その頃からそんなに乳が大きかったの?」
「えっ?」
つやの目がマジマジとて私の乳を見ていることに気がついた
「いや。。ジンと入ったときは。。。。こんなんじゃなかったよ」
と両手で触ってみた
「もっと平らだった」
「ふぅん〜〜〜」
溜息まじりの返事の後
自分のまだ「平ら」な胸のあたりを撫でているつやに
「今ジンと一緒に入ったら笑うだろうね!!何ソレって!!」
と
私は笑った
つやは向き直って
「喜ぶんじゃないの?」
と
怪訝?
「なんでさ?」
真顔の
私の返答につやは真っ赤な顔で湯船に沈んでいった
「何?」
と肩を引っ張ったが
「何でもない。。。よ。。」
と
奇妙な会話をしてしまった
乳が大きくなると「喜ぶ」?今度ジンに聞いてみよう
話題は多い方がいい
そんな事をのんびり〜と湯に浸かりながら考えた
平穏で静かな日々が
この風呂につかっていられるような日々が続く事がのぞみだった
私のささやかな日々
しかし
嵐はいまにもやってこようとしていた
穏やかな日などまだ「越後」にはない事を
知らせる者は
春とともにやってくる
使者。。。。
後書きからこんにちわ〜ヒボシです
最近めっちり暑くなってきたので半裸でパソコンをうっているという無様なさまですが
今年は
着物を着てみようとおもい
あれこれと探しています
ところが色々と探してはいるのですが
影トラ様時代の(戦国時代)の男物の着物は。。。。
なかなか
見あたりません
あれも「和服」なので
どこかで販売していないものか?
とネットでさがすのですが。。。。見あたりません
たまに
みつかったりするのですが。。。
あきらかに「新撰組」の衣装だったりで
戦国初期とか
安土桃山の頃のものは。。。みあたらないのです
誰か
販売してらっしゃるところを知ってらっしゃったら
情報下さい
今年はどっぷり「歴史」に浸かってしまいたいヒボシです
ところで。。。
今回で
カイビョウヲトラの4分の1ぐらいを書き終わりました
もっと短くてもいいのですが
多分
重複している箇所もある事なので
全部を書き終わったらだいぶん「削除」してしまう感じでしょう(悲)
使者がやってきて
運命は急激に動き出し始めます
もっともっと「トラ」には泣いてもらう事になるとおもいます
ジンも再び登場します(意外とファンの多いジン(爆)ご期待を!!
できるだけ
史実どおりの時間割でうごいて
出来るだけ
人間として描いて行きたいと思っていますが
たま〜〜に「超」とかになったりしますが
それはご愛嬌という事で許してやってください
これからもがんばって走っていきます!!
がんばります!!!
最後までよろしくお願いします!!!
それではまた後書きでお会いしましょ〜〜〜