その15 穢血 (2)
「性的描写」に付属するものがあります
苦手な方ご注意ください
どこを
どうやって走ってきたのかわからない
とにかく
栃尾の城の門を
まだ雪が各所に残り
掃き出しをしている城人の間をぬって全速力で馬を駆り
馬を投げ出すと
そのまま自分の屋敷に草鞋のままあがった
具足を投げ捨てながら
仏間をめざした
下は見ないように
仏間の襖を開けて
荒れていた呼吸を整えた
静かに
静かに
と
自分に何度も言い聞かせた
嘘でも武人
見苦しい最後など。。。。あってはいけない
数珠を見直し
仏壇に向かって手を合わせる
「祈ろう」。。。。。
「うっ。。。。ううぅ。。」
なさけない。。。。
膝を降ろすこともできない
冷静さを保とうと静かに行動をしようとしているのに
身体が言うことをきかない
下腹部の鈍痛はまだ続いている
一心に身体を起こす
手を合わせて。。。。
祈るんだ。。。。
ハアハアハアハアハアハアハア。。。。
息ばかりが荒く上がってしまう
めちゃめちゃに震えてうまく手を合わせられない
怖い
やはり
仏神からの「罰」は私に下ってしまった
どれほど
祈ってももはや救われる事などない
あれほどの「人」を事もなく「殺して」しまえる「心」をもっている私の正体は「鬼」だ
きっとそうだ
いつも
私にささやくあれは「鬼」で
私はそれを心に住まわせていて。。。。
今なら
母上が私を林泉寺に入れた理由がわかる
私は殺生を楽しむ「鬼神」だ
この身にそれを巣くわせた「鬼」だ
「あああっ。。。。」
震える
膝がガタガタとまともに座って祈る事などできない
座ってしまったら
腹に何が怒ってしまうのか考えただけでも怖い
私の下腹部からは「血」が。。。
まだ
流れてる?
どうなってる?
もう一度伏せて「傷」と思われる部分を見ようと思ったが
やめた
見てどうなる
あの「穴」から「鬼」が顔を出していたらどおする?
「怖い。。。」
涙が溢れる
身体を保っていられない
中腰のまま浮いていた私は
板間に頭ごと落っこちた
得体の知れない恐怖
今まで
今まで
風邪だってひかなかった
丈夫だけが取り柄の私の身体はとうの昔に「中身」を鬼に蝕まれていた
それは
「戦」のたびに私を狂わし
私の腸を切り刻んでいたんだ。。。。。
それが
ついに「溢れ出した」
きっと
腹は裂け
血の海に沈む
「影トラ様!!」
開け放たれた襖の向こう
身を伏せた侍女がいる
ダメだ!!!
「入るな!!!」
わめいた
ダメだ
ダメだ
こんな見苦しい最後を人に見せるなどできない
打ちつけた頭を起こし怒鳴り散らす
私はまがりなりにも
「長尾守護代家」の将
己の弱さを「鬼」蝕まれ憤死など笑い話にもならん
「どうなさいましたか?」
「入るな!!!」
気遣っているのは襖の影にいることで十分にわかっている
「しかし。。。矢傷でも負われましたか?。。。」
侍女はかなり驚いた様子でおどおどしながら私の様子をうかがう
おちつこう
そうだまだ直江の妻も「おせん」も帰ってきていないのだな。。。
こんな事普段だったら
「おせん」が飛び出してきいて今頃
この腹から飛びださんばかりの「鬼」を見られ大変な事になっていたかもしれない
いなかったのは「幸い」だ
「矢傷ではない。。。」
身体を起こした
鈍痛は続いてはいるが手足をうごかせなくなってしまったわけではない
家人当たり散らすような「最後」はもっともいけない事だ
侍女が話しかけてくれたおかげで
私は少し冷静さを取り戻した
「具足を片付けさせます。。」
私は静かに襖に近寄って
顔を見せた
伏して返事をまつ侍女に「努めて」落ち着いた声で話した
「水を桶にくんできておくれ。。。」
面をあげた侍女が私の顔を見ている
文字通り顔色を見ているのを理解しながら「平然」と続けた
「顔を洗い,御仏に祈りたい」
常日頃しているように「祈る」
という言葉に侍女は少なからず安堵した様子で
「すぐに用意させます」
と
答えて部屋を出て行った
襖の向こうで脱ぎ散らかした「具足」を小姓たちが片付けしているのが聞こえる
痛みは続いているが
侍女が来てくれたおかげで冷静になれた
「罰」を受け入れよう。。。。
腰に着けた刀を仏壇の前に大小並べて置いた
涙がまたも流れてしまった
「死」はやはり恐ろしい
斬り殺されるわけでなくても「恐ろしい」
でも
私のしてきたことはそれさえ考えられぬまま「死」を迎えた者だっている世界だった
卑屈に少し笑った
自分にそれが巡ってこないなど
おこがましい事だ
目の前で
目の玉を真っ赤に染めて倒れていったあの「少年」
あの目は私を見ていたな。。。。
同じぐらい多くの目が私に「鬼」を見て死んでいったに違いない。。。
せざる得なかったとはいえ
まさに「羅刹」の所業だ
私は手を合わせた
ふるえは止まっていた
霞むように思い出されるのは「林泉寺」の事だった
楽しかった。。。
あの頃が私にとって一番の思い出だ
修練の日々が次々と思い出される
師よ。。。。
私は間違ってしまいました
元服の時
あなたは「悲しい」顔をしてらっしゃった。。。
きっと
こんな結末を迎えてしまう事を知っていたんでしょう
深く頭を下げた
「人の道」を踏み外しました。。。
その結果は心に巣くった己の「鬼」に取り殺される
という惨めなものでした
ジン。。。。
今はどうしてる
私はもうダメだ
私はココで死ぬ
神罰などではなく「鬼」に侵されて
武士の道は人を屠る「悪鬼羅刹」の道だ
ジン
オマエにはそんな風になってほしくないよ
だから
ココで「腹を斬る」
鬼の呪いではなく己の「意志」で
私の死を知って「御仏」の道に戻っていっておくれ
手をつよく合わせ
「お家」の安泰
没した者の祈願
残す者達の事を次々に祈った
「水の支度が出来ました」
襖の向こうで侍女の声がした
すでに思い残す事の無くなった私は穏やかな声で返答した
「ありがとう。。。下がってくれ」
部屋を出て行く音を確認して
桶を受け取った
水面に映る顔。。。。。薄汚れて少し痩せてしまっている自分
引きつった顔を手でほぐした
穏やかな「死」でありたい
顔を洗い
乱れた髪を結い上げた
静かだ。。。。。
私は直垂の上を開いた
胸のふくらみでよく見えなかったと斬る腹の位置を誤っては恥
一度腹を指でなぞり確認した
もうイイ
思い残す事はない
手前においた
脇差しを抜き静かに腹にあてた
物書き。。。。。
後書きからコンニチワ〜〜ヒボシです
最近公私ともに多忙で更新が滞ったりしてますが
といってもだいたい3日に一度ぐらいで更新してたり
中身の改訂をせっせっとしていたりなので
一日2度ぐらいはちゃんとページはみてます!!
最近になって評価の書き込みチョコチョコしていただいたりで嬉しいです!!
もともと
私は物書きというのを一度もやった事がなく
どちらかというと
漫画の原作「原稿」を作ったりしている方がおおかったのでかすが(もちろん素人ですよ!)
素人のやる事など
やはりすぐに行き詰まってしまうものです
それで
こうやって「万人」の目に見ていたける場所をおかりしては始めたのですが
色々な思案はほっておいても
なかなかに楽しいです
とくに歴史のジャンルを選んだ理由は
歴史がスキという単純なものだったのですが
ホントココの作家さんたちの書く者にも色々と勉強させられます!!
いいところだなぁ〜〜〜って思ってます
そんなこんなで
更新のびちやったりする事もありますががんばっていきますので
これからもよろしくおねがいします!!!
それではまた後書きでお会いしましょ〜〜〜