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その14 忠臣 (7)

戦国時代的な残酷な描写があります

ご注意ください

すでに黒滝城は半壊の様相に変わっていた

たった半日前は雪化粧をみせた美しかった姿は無惨なものに変わっていた


それでも

何故だろう

私は「美しい」と思った



各所から立ち上る火を飾り

焼け落ちていく姿は大きな「護摩ごま」だ


秀忠。。。。

それがオマエのしでかした不徳の許しを願う火だ。。。。

最後を美しく飾る死に場所に添えたる

祈祷の「火」



刀を抜き眼前に添えた




容赦は出来ない

ただ最後にオマエの口からこの「戦」の意味を聞きたい

それだけだ


二度の「謀反」の結末はわかっていただろうに。。。


私の手元には柿崎が届けた

上杉定実うえすぎさだざね」公の手紙があった




「府内(春日山)を襲わんとす逆賊黒田一族を皆殺しに」


皆殺し。。。

頭が揺れる

今までこんな事はなかった燃えるように身体が熱い



この手でオマエの血脈を絶たねばならん。。。

沈痛な面持ちとは間逆の「微笑み」


手を挙げた

「迎え!!黒田秀忠を捕縛せよ!!!」

それだけを言うと

私は真っ先に走った


馬を駆り真っ直ぐに城に向かう



この手でオマエを処す



轟音が響く城内に闊歩する

すでいたるところで

「殺戮」は終いに向けて走っている


「にげろ!!」



にげろ。。。

にげろ。。。


城の中は死で溢れ出していた

白い雪だったところをみつけるのが難しだろう

「火」と「血」


手足を亡くした身体に当然

首はない

火矢を顔にうけ絶命した者に言葉はない



芳醇な「死」の香り


揺れる

心も体も

真っ黒な「意識」



まだまだ


口を開く

やらねばならない

死を遣わす者として私はココに来た


悲鳴まじりの脱出の声




にげろ。。


にがして!!

降伏する!!

助けて!!


まるで絵空事のようだ

くだらない戯れ言を吠えるな!


今更なさけない事を言うな。。。

逃げるぐらいならなんでこんな事に荷担した?

我先に逃げる事など許さん


「逃がすな!!追尾しろ!!」





燃えて

激する

不義に走ろうとする君主の心を止める事が出来なかったのは何故だ?

しでかしてしまった事は

全ての「黒滝」の責任だ

家臣一同全てが責務を果たさなかったからこうなった



その結果の「死」を認め受け入れよ




私は城内に入ってからも手際よく指示を出していった

黒滝はすでに

外砦と二の堀とを分断され

砦の側に待機していた兵はバラバラと逃げ出していた


二の堀はまだ変わらず抵抗を続けているが

すでに何刻も保つ事はないだろう

戸板にかかる火と焙烙の攻撃の手をゆるめず

ドンドン

追い立ててゆく「栖吉衆」

外塀まわりは生きた者の姿はもう見あたらなかった

ぶら下がるように

息をしなくなった死体

破片に変わってしまった身体

全身を焦がした肉くれ


地獄もきっとココより空に近いのかもしれない

上に上に続く死の道


尾根を見る

山にそった城郭はそのまま火連ねていく

「美しい。。。」


溜息がでる


自分がおかしくなっている事はわかっている

未だこれほどに「黒い意識」に身を任せ続けた事はなかった

火照る身体が心地よいのだ


いつもなら

キリキリと頭を割らんばかりの「闇」は今日はおとなしい

それより

腹の底深くを打ち続ける「鈍痛」が全身にくまなく

爪も

髪も

全て一つにつなげて「響く」


血の緋色に

身体がムズムズする




恍惚。。。。。

山より上をさらに見回すように顔をあげて。。。






「覚悟!!!」


突然の怒声とともに小槍を手にした足軽が

私の馬前に槍を振りかざす

まだ若い赤ら顔の男

馬廻りの間を縫って突進してくる


槍で足を突かれ片膝になりながら

飛び上がって私の兜を目指し

血まみれの刃を振り下ろす






私の目はうっとりしている


「ダメだな」


小声で誰にもらすでもなく言った

身体がゆらりと動く

相手の刃先が止まって見える


目の前を刃はかすめ

静かに落ちていく





それが「覚悟」か?


「心」は黒い


腹がうずく。。。ずきずきと脈打つように

苛立ちは顔にでなくても十分に相手に伝わるっている


足軽は怯えているようだ

勢い余ったのか,そこで力を使い果たしたのか振り下ろしてそのまま両膝をついた

雪なのか?汗なのか?

ぐしょぐしょに水を滴らせ蒸気した顔は私を見あげる


哀願している?


ダメだ


ダメだ


そんな目は私には通用しない



うなり声とともに

もう一度


槍を挙げようとしたが



背を

首を

胸を


多数の槍にいっせいに突かれ動きがとまる

痙攣し空を仰ぐ

赤く染まった目玉


吹き出す血の散華



「まったくダメだ」




この程度で覚悟とは


血反吐を溢れさせ絶命していく男に笑ってやった

せめて最後は笑ってやらんとな。。。。

雪を真っ赤に染め沈んでいく


ああっ

最後は熱くなっただろう

ゆっくり冷めてくれ。。。


私は身震いした

身体は焼けんばかりに。。。。ただ熱い

ふぅと

息をつきながら


「秀忠はどうした?」


私は長秀に聞いた


「先ほどまで柿崎和泉守かきざきいずみのかみと打ち合っていたようですが後退して二の堀に。。。」


そこか

二の堀に目を向ける



「黒い意識」がとぐろを巻いて跋扈する

熱い

熱い






痛い。。。。。

血をみるとうずく。。。。


最後は処してやらねば!!

私の手で「黒田秀忠」を屠らねば








二の堀の城門まえは最後の抵抗を試みる「黒滝軍」が殺到していた

門以外の外曲輪は「栖吉衆」の攻撃にあい

すでに逃げ場を失っている


最後の足掻きか。。。



柿崎率いる「猛者」たちも押して来て「乱戦」になり始めているが

ひときわ目立つのは


終始押されてはいるものの

正面をきって柿崎と槍合戦をしている「黒田秀忠くろだひでただ」だ



「まだまだぁぁ!!」



すでに

兜はなく

何度もの殴打や槍による打撃のせいか具足の部品が飛び散っている


それでも

身体のキレは鈍らず

どの将兵に劣ることのない動きは

目をみはるものがある




秀忠は目線を城下の方にちらりと向けた

騒がしい



そうか

下は落ちたか。。。。。もうもうと立ち上る煙

数多くの城下の家屋が燃えているのが見える

目を遠くに走らせれば

幾人かの「兵」と「町人むが逃げていく姿が見えた


「逃げられたか。。。」

それでいい

落ち延びよ。。。。生きてくれ



自分たちがココで「影トラ」を引きつけている間に少しでも逃げられればいい

もう

あらかたの「己」に課された「仕事」は終わった


後一踏ん張りだ


二の門は閉じられたとしても

逃げる場所はない

搦手はすでに「栖吉衆」によって破られ名だたる将は「金津」に討ち取られた


黒滝の大半は「殲滅」された。。。。

男も女も城人も町人も区別なく

ことごとく殺され,犯され,奪われていった


城を統べる任の者が起こした「謀反」の代償は大きい

女子供までを滅びに導いてしまった

しかし

それでも。。。




いきなり身体が浮いた

秀忠は

とっさに槍を体に入れたがそのまま土塀に投げ飛ばされた

しばし

目を離したのが悪かった


目の前の男が柿崎だとわかっていたのに


「終わりか!!」


怒する声に

打ち付けられた衝撃で折れたあばらを抑えながら立ち上がる

口から

血が噴き出す


目が回る。。。。

すぐに立ち上がる事もできなくなった自分の身体に「喝」を入れる気力はなかったが




血反吐の唇をぺろりと舐めて

笑った



「ああっ。。。。もう終わりだ。。。。」

そこまで言って

前のめりに倒れた





その後

一刻もしないうちに「黒滝城」は落城した

秀忠が再び目を開けたとき一族,同門で生き残っている者は一人もいなかった

妻も子も落ちる城と共に「自害」した

雪の大地はなくなり

血がただひたすら流れ城の景色を変えていた



そして

目の前には整然とした姿の影が座っていた

それは



雪原で会見した時と変わらぬ「大らか」にして「獰猛」なトラの姿だった

愛刀「備前兼光」



後書きからこんにちわ〜〜〜ヒボシです


以前

後書きで「具足」それも「当代具足」が欲しいと書きましたが

それは相方さんの「不許可」(部屋かたせ命令)によって

いまのところ実現していません


というか

「当代具足」は現在でも日本の一級品の工芸です

ヒボシもね

好きだから色々調べたのですが。。。。。


絶対に買えません(爆)

でも

それだけの価値があるから欲しいのですが。。。

ヒボシの汚い部屋には。。。買っても鎮座されるスペースがないので大変「具足」に失礼です



で。。。


資料として

影トラ様の愛刀「備前兼光」の模造刀をこのたび購入

できるだげ「本物」に近い「重量」の物を捜し買いました

身長の事もありましたが

当時の女性としたら(注.カイビョウヲトラにおいての影トラ様は「女」です)

かなり長身だった方が手に持った刀


ちなみにヒボシの相方さんは「影トラ様」と身長が同じぐらいです

今度持たせてみようとおもいますが


。。。。

ぶっちゃけ刀。。。重いです

戦国時代の刀は江戸時代の物にくらべると重いそうです(若干)

でもって実践ではあまり使われなかったそうですが。。。


かなりの刀マニアだった影トラ様

「重い」なんて事は考えた事なかったんでしょうか?(藁)




でわまた後書きでお会いしましょう〜〜〜

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