その13 晴と影 (7)
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というものに登録シテ頂きました
自分でも設置を試みたのですが。。。
失敗していたそうで(爆死)
スイマセン。。。パソコン音痴で(泣)
手伝ってくれた友達に感謝しつつ
これからもがんばっていきますのでよろしくおねがいします!!!
少なかった雪をのけた城道を光育は考えを巡らせながら歩いていた
やはり
無駄骨になってしまった
心は焦燥感と喪失感でいっぱいだ
虎御前があれほどまでに晴景殿を嫌悪していたのは
。。。。
少しは理解できていたが
「影トラ」の事に関しては「狂信的」ともとれる対応だった事が
より
心を締め上げていた
あの夜と同じ,まさに変わらなかった「虎御前」。。。。
同じ過ちを犯してしまったのか?
トラ
ジン
子供たちを救った「つもり」でいたという「奢り」が
愛した教えた子供たちの道を謝らせてしまったのか。。。?
およそ十年前
あれは雨の降り続いた寒い日だった
夜が更け
寺のすべての明かりが落ちた時間に城からの使いはやってきた
「住職殿!!すぐに登城くださいませ!!」
静寂を尊ぶ寺の眠りを慌ただしく乱した者に説教が必要ではあったが
事態が尋常な事でないのは,必至の顔の使いを見て理解した
慌てて参内したそこにあったのは
抜き身の「白刃」を向け合う御前と為景の姿だった
「夜叉」の2人
部屋には幼い「綾姫」が侍女に抱えられ泣きわめいている
為景の後ろにはそれを諫めようと「本庄実乃」が立っていた
御前の後ろには小さな影があった
「何をなさっているのですか?」
まるで仏神の像のように白羽を向け合ったまま身動きをとらない夫婦の姿は異様だ
為景にいたっては「具足」まで纏っている
「為景殿!!何をなさっているのですか!!」
声を荒げた
説法会で出すあの声に力を加えた強さで呼びかけた
小寒い雨の日というのに額にびっしりと汗を噴いている為景は横目で光育を見ると言った
「この恐ろしいトラを殺して終わねばならん」
「トラ?」
御前を殺そうとしている?
「為景殿?御前様を斬ると?」
すでに
一度は殴打されたのか御前の唇からは血が流れている
髪は乱れ
それでも薄暗い本丸屋敷の板間に対峙している「目」がらんらんと輝いて見える
朱色の柄をもつ刀を身構え
後ろの「何か」を守っている
「何を恐れている。。。。」
声が響く
幼子の声
ココにいる全ての者の「頭」に届く澄んだ柔らかい声
何だこれは
光育の背筋が凍る
その「柔らかさ」は人の物とは思えない
髪を振り乱した虎御前が笑う
「何を恐れていらっしゃる?」
「どけ!!おトラ!!それは魔物ぞ!!」
刀を振り上げた
おかしい
為景は確かに「何か」に怯えているようだ
同じく上段に構える御前
光育は御前の後ろに子供がいる事に気がついた
「魔物?」
灯の無い城内では近づくしか確かめようがないのだが
その大きさから「子供」である事は間違いではなさそうだ
。。。。
虎千代さま?
「トラ」を殺すとは我が子,虎千代を手にかけるという事か?
光育は走り2人の間に身を入れた
両人に手をかざし
「刀をお引きください。。。」
たったこれだけり事なのに。。。
いや
「恐れ」だ
上段に大きく身構える
荒々しき鬼神の夫婦の前に汗をかかぬなど「嘘」だ
僧職にある者は「死」を恐れはしないというが
そこに至る道に「恐怖」がないなど。。。あり得ぬのが「人」だ
「お引き下さい。。。」
「我を恐れよ」
またも声が響く
せきをを切ったかのように為景は光育をはね除け突進した
両脇を実乃が抑えようとするが止まらない
「キエェェエエエエエエ!!!」
「なりません!!!」
光育は為景の足にしがみついた
勢い膝を落としたがそのまま引きずるように前に進む
さすがに巨漢,為景
光育ごときでは止められない
そのまま刀を振り下ろしたが
御前が見事にそれを受け止める
鉢合わせる顔と顔
「おトラ!!!」
対峙する2人の間を抜け
虎千代の所に光育は走った「守らぬば!!」
かまわずその子を抱きしめ,その場からさらに下がった
「光育!!それは。。。。それは魔物ぞ!!!」
背後に逃げる姿を見つけた為景はわめいた
しかし
振り向かなかったそのまま
「ダメです子供を斬るなど断じて許されません」
魔物と称されている虎千代を見た
。。。。。。
この喧噪の中にあり得ないほど平然とした顔
となりの部屋で泣いている「綾姫」の事を考えると不思議な感じだ
むしろ
微笑んでいる?
その微笑みはまるで「観音」様
幼女の笑みとは言い難い落ち着いた目
「虎千代様?」
フフ
笑っている
小さな手が光育の顔にふれる
「お前は我を恐れないのか?」
なんと?
これは。。。むしろ神々しい
「その子に宿りしは「神」なり!!」
刀をまだ合わせたまま為景を睨み御前は吠えた
「いいや!!魔物だ!!」
虎千代様
「噂」はかねがね聞いていた
産まれ出でてから向こう
笑わず,泣かず,声を発さず
軒下に産まれた子犬を殺した
置いていった母犬を殺した
綾姫が飼っていた「小鳥」,屋根からおちて飛べなくなってしまっていた
小鳥をやはり殺した
難産を苦しむ母馬を殺し
腹から出られなかった子馬も殺した
奇行の主
灯で蛾や蝶を炙り殺し
夜を眠らず
城の中をひたひたと歩き回る
しかし
何故にそれほどの奇行を重ねながらも曇ることのない「眼」を持っているのか?
鬼の子供
そんな言葉で表する事のできない「神々しさ」を持っている
人を知らないのか?
人の生きる道を知らないのか?
それが「神」を宿した故の事なのか?
刮目せねば成らん
「為景殿。。。虎千代様の事は私にお任せ下さい」
まだ幼子だった「トラ」の身体をつよく抱きしめた
斬るのなら私も一緒にという強い意思表示をした
為景殿は
得たいの知れない「中身」をもつ「トラ」を恐れている
いわくつきだ
もともと
御前懐妊の時に
「御仏に選ばれし子」
とまで言われていた子
この小さな身体の「中身」が今は何であれ助け
それを確かめなければならない
「もしこのお身体の中に「神」を宿しているのなら「人の世」の理をまだ知りません。。知っておられません。。それを私がお教えしましょう。。また身体に宿りし者が「鬼」ならば必ずや退治いたしましょうや!!どうかこの愚僧にお任せ下さい。。私のもてる全てで虎千代さまを知り育ててみせます!!」
そうして身を挺し「トラ」を救ったのだ
「光育さま!!!光育さま!!!」
頭を下げうなだれ考えこんでいたところに聞き慣れた声が名を呼んだ
「おおっ影トラ様」
満面の笑顔で城道を走りおりてくる「トラ」が見えた
あの夜から十年たった
寺での修行を積みじょじょに人らしい顔を見せ
ほんとうによく笑うようになった「トラ」
息を切らせて目の前についたトラは深くお辞儀した
「おひさしぶりです!!光育さま!!」
大きな声
立派になられた
光育の目には涙が浮かんだ
これほどまでに優しい子に育った「トラ」に戦の道しかなかったのか?
そう思うと悲しくて仕方なく
涙を堪える事が出来なかった
「どうされました?」
目頭を押さえた光育を心配して肩を支えるトラ
手を振り答えた
「本当に立派に成られました。。。ただ嬉しくてつい」
そのの手を取った
トラは照れ笑いをしながら
「まだまだですよ。。。今日はいっぱいお話聞かせてください!!」
そう言うと
林泉寺までの道を話しながら歩いていった