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その13 晴と影 (6)

おせんと女の子たちは片端から全部広げることはしないまでも

次々と反物を開けて品定めをしていた




おせんが春日山の府中に戻ってきたのは一年ぶりだ

やはり

栃尾とは違いそこそこ町をもっている春日山付近には

目に楽しい反物が多いのだろうし


城の侍女や

諸将の息女たちに会うのも久しぶりなのだろう

華やかな一角を作る「女の子」たちの声がよく響き耳に聞こえた



私はいつも通り「禅」を組んだ後で

表座敷の前をちょうど通りかかっていた



「おせん!」


黄色い声の主たちはびっくりしたみたいにひれ伏した

手で挨拶して


「いいよ。。一緒に見てもいい?」


座敷に広げられた反物を見ながら言った

こっちに来て

昨日は諸将の家臣団などと飲み明かしてしまった

謹賀の祝も一段階ついたし

心配事もないわけでもないので


松の内には栃尾にもどろうと思っていたから


いち早く

多英たえや,つやの土産を見ておきたかったところだった



私に驚いたのか

侍女や息女の姫たちが下がってしまおうとしたので声をかけた


「気にせず。。土産を見たいと思っていたところだよ。一緒しておくれ」



恥ずかしい話

私はどうも反物の見立てが今ひとつわからない

着物も全部

おせんに仕立ててもらっているのだから

くわしいに違いない

一緒に見て貰った方が失敗しないだろうと思いそう言った



私の言葉に

おせんは嬉しそうだった


「私もそうしようと思っていたのです!多英や,つやにちょうど良いかと。。」



嬉しそう

女の子はこういうのが大好きみたいで

見ているこっちも嬉しくなる


まだ遠巻きになっている「女の子」達にも声を掛けた


「気遣い無用。。。見立てを手伝っておくれ」



緊張しているのかな?

私は背が高いから怖いのかな?

困ったな

目の前で引き続き反物や緞子どんすを広げるおせんと話をしよう

そうすればおのずとみんな和らいでくれるだろう


それにしても



驚くよ



たくさんあるもんだ。。。



栃尾では私の着物を仕立て直してもらうために「馬」で買い物にいかせた

山奥の山城ではなかなか

手に入らないのだ

そういう事もあるのだけど



緞子どんすなんかは高価な物もあるのは

祝賀に諸将たちが持ち寄ってくれた物なのだろう



そういえば母上(虎御前)の着物はキレイだったな

いつもきちんとしてらっしゃるし。。。。おしゃれだ

それでだろうな

諸将が祝いに

反物や帯物をたくさん持ってきてくれるのは

昨日はあまりお話もできなかったから夜に着物の事なんかも聞いてみよう


良い物を土産に見つける事ができるといいな

私はチラミでも迷ってしまうよ


溜息

刀の目利きだったら多少は心得てるけど。。。


。。。

「刀」ばっか眺めてちゃダメだね




「おトラ様。。。」


いつの間にか

おせんの隣に一人の姫様が来ていた

私が会釈すると


「お噂で聞いていたのとは違って驚きました」

とまん丸な目で覗き込んでいる

「噂?。。。」


まさか

また「猫又」の話とか?

あれは春日山まで流れてたのか?

顎に手を当て「噂」って。。。なんて考えていると


おせんが含み笑いをしながら答えた


「昨日,おトラ様の話をしていたのです」


えっ。。。。

「どんな。。。」



ひどい話だった

姫や侍女たちが「噂」に聞いていた私の姿はまるで「鬼」だ

数多の「大鬼」おそらくやたろー衆の事だろうを引き連れ

馬上で刀を振り乱し戦い

相手の耳を劈くような声で「激」をくだす

顔も凶相の主で目を見たら食われる。。。。


いったい誰がそんな風に話をしているのさ




ちょっと。。。落胆。。。


でも

まあ

確かに一度「戦」に出てしまったら

声も荒げるし

自分がどんな顔をしているかなんてのはわからないから。。。。


遠目でみたら。。。そんな感じなの?



言葉なくしちゃうよ



「だからそれは違うって話をしてたんです!!」


肩を落としてしまった私に気がついたおせんが努めて明るく言う

「そうです!!お顔も全然おキレイで。。。普通の人でした」

「噂なんて当てにならないって。。」

「肌もとってもお白いです」


こんな事でも

話が盛り上がって姫様たちも口々に色々答えてくれた



「でも大きな方ってのはホントでした」


ひときはこぢんまりと座っていた可愛らしい姫様が私を仰ぎ見るように言った



確かに。。。

ココに集まっているどんな「女」より私は身の丈は高かった


「でも殿方のようにゴツゴツしてらっしゃるわけではないのですね」

と私の手をしげしげと見ながら

「そうだね」


それはよくわかっている事だ

どんなに鍛えても

男のゴツゴツした身体にはなれなそうにない

なれれば

もっと「戦」働きも楽になるのかもしれないけど

それは

寺にいたころには無理な事というのがわかっていた



私にとって

戦働きをする「女」と言ってすぐに頭に浮かぶのは「母上」だ


私自身は

そのお姿を目にした事はないのだけど

家臣。。。直江や実乃に聞くと

よく知っていた金糸の「大鎧」姿の母上

背も私ほどじゃないにしろココにいる姫様たちよりは若干高い

でもかなり細い


でも「戦」に出ていたとしても

母上の姿はやっぱり女らしくて「美しい」かっただろう

今もそうだ

ゴツゴツしている部分なんてない

ちょっと無口だけど

お顔も綺麗だ




「そうだ!!」


おせんが鮮やかな反物を開きながら私に言った


「今度,小袖を作ってみませんか?影トラ様の」


私に小袖?

考えてみれば私は「女」の着物は今まで着た覚えがない

ちょっとドキドキする


「きっと似合いますわ!!」

姫様たちが騒ぎ立てるのもあるのだけど

小袖。。。


着たら母上みたいに見えるかな。。。。

なんて思い浮かべてしまった



「そうだなぁ。。。」


照れる。。。参った。。。

顔がにやけてしまう


いかんいかん!!


「かっ考えておくよ!!」

むず痒い感覚だ

返事とともに席を立ってしまった


「これから林泉寺に挨拶に行くんだ。。。土産の事は任すよ」


手を振っておせんに言った

すると

姫様の一人が

「住職様は先ほど門を出て行かれましたよ」

二の丸への通用門を指さした



。。。。。




城に来ていらっしゃったんだ



なんだ

それなら

呼んで下さればいいのに


走って行っても追いつけそうだ


私はそのまま走って

途中止まっておせんに叫んだ

「多英とつやの分を忘れないでね!!」


おせんと姫様達は手を振って答えてくれた



城を下る道ぐらいで会えそうだ


ひさしぶりに師,光育と禅問答をしよう

心が躍った


楽しみだ

私も大きくなったんだ

他の門弟たちにも会いたい


きっと驚くぞ


きっとジンにも会えるさ

ジンも光育に会いにくるハズだから




ウキウキした気持ちで私は門をくぐっり走った


その時門前に小姓が立っていたのには気がついたが「水丸」と知るのは翌日「上杉」様を迎えた宴の時だった

影トラ様の着物。。。。


後書きからこんにちわ!!


いろんな文献とか資料を探すと

とっても「艶やかな」着物がでてきたりもしているそうです

真っ赤でした派手ですね

どんな時にきてらっしゃったのでしょう


着物もそうなのですが

陣羽織もなかなかに派手な物が多いようですし

西陣のホームページの中で生地紹介なんかでは

ビロードのマントも着用なさったりもしたそう

という記事もありました(藁)


おしゃれじゃん(爆)


今回まだまだ戦の事で手一杯の「トラ」がちょっとおしゃれに目覚めてみたり〜〜なくだりを書いてみました


それにしても

影トラ様。。。現在この小説で17歳

めっちゃ酒飲んでます(爆)

もちろん

お酒は成人してから!!なんて決まりのなかった時代だし

むしろ

「祝いだ!!呑め飲め」の世界だった気もします


ヒボシ的には。。。

虎御前も相当お酒つよいのではなかったのか?

とか思ってます

しかも。。。。目は据わったまんまで

ええっ常に目は据わってる人だから

怖いんですけどね(爆)


この小説の中で

長尾家の女で優しい人はいません(爆死)

いろんな意味で


綾ね〜もごたぶんにもれず。。。

というのもおいおい出てきます(藁)

でもってきっと酒も強いです


まだ

暖の取り方が甘かった時代の越後ですから

寒さをしのぐためにも「お酒」は必需品だったのかもしれませなんね!!


そんな火星はそれほど酒に強くないので。。。

馬上杯(謙信公のお酒の杯,馬の上で飲んだりもしてたらしいです)で飲んだらすぐに

眠りにつけそうです(藁)


酒豪豪傑女の三代記(爆笑)

そういうのも書いてみようか(イラン!)



それではまた後書きでお会いしましょ〜〜〜

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