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その9 別れ (2)

晴れていた


一年前のあの日

三条衆を死地滅しちめつにした時

その手をふるったやぐらの先の石垣に一人で座って

まぶしい日差しの中

目を細めながらもずっと続く総構えの向こう

城下の向こうまでを見ていた




遠くに

直江とジン

そしてその一隊が春日山に向けて

この

栃尾を離れていく姿が小さく見える


澄み渡った空の下

遠くに

遠くに

霞んでゆく人影達。。。。







「どうして?」

私は宴を抜けて

ジンの住む三の丸の雑兵長屋まで来ていた


頭の中は疑問で

いっぱいだった

でも

時間だってない

明日にはジンは直江と一緒にココを後にしてしまう



どおしてそんな事になってるの?


昼に会ったときは何も言ってなかった。。

笑ってた

「背が伸びた」

そんな些細な会話をしてたのに




何一つ私には言わなかった





直江の帰参に合わせた慰労の宴は長く続いていた

本当なら父親の代わりまでしてくれた直江に毅然とした態度で「礼」を尽くさなければならない

私の心はそこに留まる事ができなかった

落ち着かない

きっと身体は小刻みに揺れている


心も

そんな中身を

家臣に見破られる訳にはいかない


気持ちはドンドンざらつき

焦りが苦痛の表情になって出てしまいそうで

押さえつけるために

何杯も酒を煽った




早く会いにいかなきゃ




進む宴をよそに

たくさんの酒をおしげなく振る舞った

少しでも他の者の目を反らしたかった

宴が下りになりかかった時

ようやく私は

かわやに行くと言って

部屋を後にした


後にして

とにかく走った

なりふり構わず


そうしてやっと

長屋に

ココにきていた




ジンの部屋には灯籠の火が立っていた

「ジン!!ジン!!」

戸板を叩いた


慌てた物音がして戸は開いたが

私の焦った顔とは違って

落ち着いた表情でジン


「どうしたの?」


「どうしたの?」

普通に切り替えされた私は

そのまま続けて聞き返した


「春日山に帰るって!!」



返事を待った

冗談だ

きっと嘘

じゃなきゃ

あんなとぼけた反応を示すわけがない


ジンは草鞋をはくと私の前にに来てしずかに言った

「ああっ。。帰るよ。。」

静かで

冷たい声


「なんで?どおして?」

私は半分正気でなくなってしまいそうだった

わからない事でいっぱいだよ


だって


だってさ

ジンは

光育こういくから

私の側にいるようにと言われてココまで一緒にきたのでしょ?



「直江殿について兵法を学ぶんだ」

ええ。。。



私は頭を振った

正気だ

酔ってなんていない

でも


なんで



「そんな事ココでだって出来るだろ?」

「出来ないよ」

即答?


いつものジンじゃないの

いつも

もっとふざけてあっけらかんとしゃべってくれるのに


「ジン。。。なんで?」


私から顔を背ける

なんでさ!!

肩を引っ張った

「なんでさ?」

強く引いた




振り返って

「トラの役に立ちたい」

真っ直ぐ顔を見て言うジン

役にって。。。

今だってココにいてくれる事でどれほど助けられてるか

いくさ」の後

あの

軽口を叩いてくれるジンがいるから。。




私は。。。



「コ。。ココにいてくれればそれだけで。。武士になんかならなくたっていいよ!」

「ダメだ!!」

真面目な面持ちでジンは私を見ている

言葉がでない。。息があがる


そんなふうに怒った顔?

初めて見るよ






怒ってるの。。。。

わかんない。。。


「どお。。どぉして。。。」

俯いた

わかんないよ。。。



ジンは私の前にひざまずいて

「トラ。。」

首を振る

「トラ。。」




「泣くなよ。。。」

泣いてる。。。私。。。泣いてる?


「泣くなって城主様がそんなんでどうするんだよ」


前にひざまずくジンの肩を力一杯両手で掴んだ

「近くにいろよ。。。」

手を離したら。。ダメ

首を振るジン


ジンが遠くに行ってしまうなんて。。。

考えた事もなかった

いつも一緒だ


いつだって一緒




たくさん

助けてもらっているよ

春日山から栃尾に来た時

ひょこり着いてきてくれた事


どんなに嬉しかったか



初陣の後

自分のした事に恐怖してしまった私を

安心させてくれただろ?



いてくれるだけでいいんだ。。。

いて欲しいんだ。。。


私のために

ココで僧禅の話をしてくれるだけでも安らげる。。。それだけでいいんだ



「いやだよ。。」



どおしてこんなに「涙」がでてしまうの?

とめられない





「トラ。。。聞いてくれ。。」

困ったように

諭すように

ぐしゃぐしゃの私から目を反らさずジンは続けた

「これからトラはもっと大きな仕事をしていく。。その時オレは今以上にずっと力になってやりたい。。」

頭をかきながら

一言一言を懸命に選ぶように



「ずっとトラの近くにいるために。。今がんばっておきたいんだ」



頭一つ私より大きなジンを見た

下からあおぐように見る目は

もう


決めてしまっている


そういう表情

そんなに真面目に。。。


ただ

僧であってくれればよかったのに

武士もののふになんかならなくたっていいのに

余分な事を考えなくてもいいのに

いろんな言葉が浮かんだ




でも

もうダメ

そんな事いっちゃいけない

「男」がこうすると決めたんだ

武士もののふ加当陣江として行くと言っている



もう


何も言えないよ。。。。




「帰ってくるよな。。ココに帰ってくるよな?」

一生懸命の私の言葉


立ち上がり

今度はジンが私の両肩に手を置いて




「ああっトラのところに絶対に帰ってくる。。」


そういうと手を一度離した

ジンは月を見て

もう一度正面,私の顔に向き直って




「トラのところにしか帰らない。オレは」


そう言って微笑んだ


相変わらず



機械の使い方が今ひとつわかっていない火星です

なので

相変わらず

お返事ができなかったりで

メッセージなどくださる方に返事もままならない感じですいません


どうも画面にでているとおりにはうまくいかないのです(爆死)


気をつかって頂いて

返信は入らないですよ

などと行ってくださる方にも

もうしわけないです


後書きをつかって

ちょこちょこ返事させて頂きますのでご了承くだされ


しかし。。。。

まだ先は長そうです

なかだるみしないようがんばって走って行きます

これからもご意見,感想等々よろしくお願いします

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