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その40 開城 (3)

久しぶりすぎです

なるべく充実した内容を構築するために

長い文体を作ってきましたが,それでは先に進まなくなってしまうので

次回からは1章がさらに少し短くなるかもしれません。。。。


もう書かないのですか?と心配してくださった方

すいません

やめてしまう事は絶対にありません!!!

頑張ります!!!



それでわ

晴景がこの部屋に入った時と同じように。。。

少ない風とともに舞い降りる雪と共に影トラは名乗りをあげたまま静かに歩を進めた


上座に座る晴景にとって,しばらくぶりに相まみえた「妹」は

どの武将よりも雄々しく


そして美々しく映っていた



女であるが故にきつく結んだはずの眼もとを飾る長いまつげが

美しさに拍車をかけていた

姿も

鎧直垂ではなく上に立つ者としてふさわしい着物

あでやかさと落ち着きを兼ねた着物は「ただの男」に君なす事はできない神々しささえ醸し出していた

「女」でありながらも。。。。当主となった姿

今までのわだかまりは

こまかな伝統を吹き飛ばす今の。。。。この乱世に必要な強さを持って生まれた者の持つ「覚悟」を晴景は感じていた


それは名前に現れている

影トラは

迷いのない声で自分の名を「長尾「喜平次」景虎」と言った


次代を継ぐ者として

女である以上に「長尾家」の直流として改められた名

それにともなった姿に今更不安を感じる事はなかった

全てを手の上で踊らせ

全てを制覇した者として認めざる得なかったから

ここまでの動乱であった戦を治めた者。。。。。迎え入れる



晴景は美々しき姿に眼を細め。。。。。父の影を思い出していた

父は

為景は粗暴と言われる容姿を持っていたが,心大きな男だった

治世を行うために手抜きを一切せず

非難という嵐を大きな両の手で受け止めながら越後を支えた


今度は。。。。

乱世という嵐に真っ向立ち向かう者として彼女は来たと確信していた

険しかった瞳をゆるめ良さ優しい言葉で妹を迎え入れた



「ひさしい」


上座である自分の前に座った者,今や全越後羨望まの若武者である妹に晴景の声は明るかった

額に現れていた険はすでになく

憑きものがとれたように優しい顔のまま影トラの姿をよく見つめて席を立った



「前へ。。。貴様が守護代である」(この時代の貴様きさまは謙譲語です)


そういうと静かに

自分の室(奥方)が控えた前に座った

開かれた上座

影トラの目は。。。。。







己に義はあったのか?

眠ると言い部屋にこもっていた時,トラは自問自答をしていた

避けられぬ戦い

守る者

助けを求める者を救え。。。。それは御仏の心に寄り添う事である


だが。。。。

守護代になる事を望んだわけではなかった

できればこのまま「戦」が収束に向かって

みなが一致した心で「越後」をもり立てていければ最善の結末と思ってはいたが


上杉定実が自分の前に現れたときにその願いは絶たれた





抗った分の運命さだめを受け入れる「責任」

力を示した者が負うべき道に自分は突き進んでしまったと理解した


その後の少しの時間に禅を組み

かつて見た「女神」を思い出した

絢爛たる容姿とは別に黒き意志を背負った姿。。。。。


「アレは。。。。私だったのだ」


あの洞窟で見た女神が自分の行くべき道を示した姿だったと確信した


刀八毘沙門天とばつびしゃもんてん


御楯を持ち

民草を守護する者。。。。。それが御仏の意志と今は信じるほかない


眠らない瞳は確信を得て。。。

今ここに兄との対面を果たした


声は震える事なく告げた。。。。自分が次を継ぐ者である事を

それを兄は受け入れ上座から家臣の位置に降りた



ゆっくり歩を進める。。。

もどることのない戦の果てに自分の選んだ道を自分の手の中に入れるように

そのまま敷布美しい上座にトラは座った



おのおの,こたびは苦労であった。。。。これにて我が越後国守護代となった事を皆に告げよ」


震える事のない唇に

兄は感心の笑みを浮かべ自分の治世が終わったことに。。肩の荷が降りた事に頷いた


だが実乃をはじめとする諸将はそれだけを解決と末事はできなかった

それだけではこの騒ぎの結末にはならないからだ

不安色めきに最初に言葉を発したのは晴景であった



「ワシは「戦」の責任をとらねばならぬ。。。」


悲愴

夫の覚悟は揺るぎなかった

言葉の先の覚悟に,麻は眼をつむった

この後にどんな処遇が下されても決して離れずその「死」に添い従うつもりであったからこそ

この調停の間で見苦しく命を乞うようなまねはしなかった

ただ小袖の中の小さな手を,震える手を強く自分でにぎった


「兄上には隠居して頂きます」



静まった間の中で影トラの声は優しかった


「我は正式に兄上の元,養子として入った者である。しかしながら戦ということの大事を鑑みるに兄上をこのまま城に置くことはできませぬ。。。。六百貫の扶持にて蟄居して頂くつもりでありますが。。。。よろしゅうございますか?」



周りをかこんだ将達の顔に困惑

あまりにも寛大な処分

だが

あまりに理にかなった裁可でもあった


先の守護代は「戦」を起こした張本人ではあるが,影トラが次代を継ぐに当たった「父」なった。。。このことにより「死」を処断する事は難しくなっていた


新たに国を統べる者となった守護代の最初の仕事が「父殺し」というのもまた望まれないものである事はよくわかる話でもあったし


「上杉様に。。。。よろしゅう,一本とられましたな」


並ぶ諸将の中,実乃は自分のとなり眉間にしわをよせたまま,眼を閉じた直江に聞いた

直江が晴景の命を守らんがために色々策を巡らしていた事はわかっていたが


この策は美しかった


「上杉様の機転にございます。。。」


実乃にせつかれた言葉に

少しの涙を宿した直江は事が良い方向にへと終わりに向かった事に心の中で喜んだ



「影トラ。。。貴様それで良いのか」


自分の前に座った妹の裁可は誰の目にも寛大なもの

それが良いことなのか?と晴景は聞いた

影トラの目は緩やかに遠くを見つめると


「兄上様にありましては。。。長くこの越後に尽くされました。考えるまでもありません。どうぞ,この先をゆるりと過ごしてくださいませ」


二つの血


正邪など,どこにはかるものがあったか


晴景は自分の後ろ

袖に顔を隠して泣く麻を見て


「室もつれて行く事もゆるしてくれるか」


涙に濡れた袖に手を合わせた


「これがいないとわしの余生を看取ってくれる者がいなくなってしまうのでな」

濡れた頬のまま麻は夫の思わぬ言葉に顔を上げた

「貴方様。。。。」



影トラは静かに頷いた


「どうぞ。。。母上と共にゆるりとお過ごしくださいませ」



養子に入った以上はトラにとって麻はもう一人の母になったとも言えた

全てを許した顔で影トラは周りに詰めた男たちに告げた


「これにて前守護代殿は隠居される,今日より我,長尾影トラが越後国守護代としてみなと共に働く者となる!!よいか!!」


洗浄を駆け巡った諸将達の中にも

少しの優しさ

誰も晴景の処遇を責める者はいなかった



この日「長尾影トラ」は正式に越後国守護代に就任した。。。後少しで年は代わる十一月の事

民事共に公式に国内に発布されるのは一月後の雪の舞う十二月の事であり

その間に前守護代晴景は少しの近習と妻である麻をつれて蟄居の身となった土地へ移っていった


そして

この影トラの守護代就任が新たな戦いの日々の幕開けとなって行くのであった

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