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その39 喜平次

すいません〜〜

新作の一章が終わるまで掛かりきりでこちらを進める事が出来ませんでした

「カイビョウヲトラ」は長い作品ですから

さらに良い物にしあげられるよう試行錯誤しております

がんばりますのでこれからもよろしくお願いします〜〜

ヒボシ

向かい合う

そういうのには乏し手人影と大軍勢の軍団の間

二つの影が歩み寄り始めた

地表を這う

足音に叩かれた熱の風と

山から下りた,冷たい風の交わる先に。。。



方や。。。越後では最早知らぬ者のおらぬ将となった女「影トラ」


方や。。。「越後様」と呼ばれる守護,上杉定実


暗闇の寄るが終わり

少しずつ開ける幕の向こうに二人の顔が見え始めた

お互い

名前こそ知った者であったが

向かい合うのは初めての事


定実は乱れたほつれ髪を直し

影トラは真っ直ぐを見据えたまま進む




少ない風の中,髪を揺らし微動だにしない影トラの姿には畏怖を覚えながら

定実はつぶやいた


「鬼か?人か?」


未知なる存在

「猛将」一本であれは今まででも対峙した事はある

だが

目の前。。。今ココに姿を現そうとしている者は「女」である

確かに顔は女なのだ

開け始めた夜の月の下に

白い肌に。。。鋭い中にありながらも美麗を感じさせる瞳


だからこそ「畏れ」が伝播したかもしれない

美しいが故の恐怖。。。。


この世に。。。。これほどの軍勢の前をあるく「女」は「夜叉」か。。「女神」か?



一方

停止した「影トラ軍」の中

前線に馬を並べていた物たちの中,本庄実乃は直江の姿と。。。。

その前を歩く「貴人」の姿を確認していた


「越後様。。。。」



実乃は直江の選択

春日山の「賭け」に目をつむった

最早ココまで来てしまった「騒ぎ」を収拾できる者がいるとするならば

名ばかりとはいえ朝廷。。。。幕府より信任された長である「守護」しかあり得ないが

直江を背後に歩かせ前に向かってくる「その人」の姿はあまりに久しぶりだ


誰もが知っていながら

姿に畏敬はなく。。。

名ばかりの主となった者に。。。。この大役はこなせるのかと?


そういう思いで眉間の皺をさすったが

ココで争い

よもや影トラの母「虎御前」が死すなどという事になれば。。。


苛烈な自分の主は自らの手で首を切ってしまう

そう考えてしまうほどココまでの戦いで意識を精錬させた影トラの姿



「誰も不作法に動くでない」


厳しい指示を馬廻りに伝え

前を行く「影トラ」の後ろに駆けると,素直に相手の「名」を伝えた



「馬上の方。。。上杉守護様にあらせられます」


影トラの目はゆっくりと反らすことなく相手を見つめながら答えた

「そうか。。。」


口調は先刻より幾分落ち着いた感じだが

すごみ。。。

というか

纏っている「畏れ」は今まで以上のものだった

それは実乃とともに数歩後に付き従う馬廻りの者たちにも十分伝わるほどだった


二人の間は確実につまり

お互いのも確認できる位置に馬の足をとめた



「控えなされ!!上杉守護様!!越後様にあられますぞ!!」


守護の手前に走ったのは「直江」だった

かつて

自分に「戦」とその中身を教示した男が。。。今,春日山の使者として目の前に座る姿を影トラがどう見ているのか?

馬廻りより遠く

守りの兵としてつく「ジン」は目を離すことが出来なかった


今の

トラの心を見ることができない。。。。

ジンは恐れながらも良い結果だけを願い続けた



向上の元

トラはすぐに馬から下りた

唇は静かに笑い。。。。言う

「来たれ。。。我が運命さだめ


そういうと目の前にそのまま座り伏した



「長尾影トラにございます!!」



定実は馬上から見渡した

台地の上

影トラは座したがその向こうに居並ぶ原野を埋めた軍勢

乱れぬ視線に大きく息を吹いた




「長尾「喜平次」景虎ながおきへいじかげとら。。面あげい!!」




静まりかえった両陣営の中に走った名前に実乃に,直江。。。並ぶ諸氏達は固まった

誰も動けない

ジンは「何が」起こったのかがわからない

というか兵卒達にはコレが「何を意味しているか」がわからない


定実の前に使者として座した直江は思わず主に振り返ってしまった


「越後様。。。」


定実の顔は厳しい表情のまま直江に反論を許さない

愕然とする諸氏の前

顔を上げたトラは平然と聞いた






「それが運命さだめにございますか?」






私は伏したまま

目を閉じたまま

私の前にたった「越後様」に聞き返した


直江や実乃の驚いた声が耳に入る


私は下げた頭の中で少しだけ笑っていた

これが運命。。。。

確かにと。。。。



「そうじゃ。。。そなたの後ろに並ぶもの達のためにも。。。そうであるべきじゃ」



ゆっくりと顔を上げた

この「運命」を私に告げにきた方を見るために

月明かりの下で射越の時間で見た守護様の顔は。。老齢の白い髪を蓄えた方

これほど殺伐とした中にあって

落ち着きのある「優しい瞳」をしているように見えた


怖さは微塵もない

だが

私を見据える視線に覚悟を見る事が出来た



そして私にも覚悟は出来ていた

「喜平次」と告げた

そこまで言うのだ

この「戦」の主である私を認めた上での「責務」を与えて下さったと感じた



そこまでの事を私もしてきたのだから

これは正しき裁定であると目が覚めた


私は高くゆっくりと顔をさらに上にあげた


直江は真っ直ぐ守護様の顔と私の顔を見ていた


「喜平次」。。。。その名は「長尾を継ぐ男子」に有るべき名

今その名がただの「影トラ」だった私に付与された

その意味は


「家督相続者の証」



「貴殿は今日より「長尾晴景」殿の養子となり。。。この地を治める守護代を継ぐ者となった」

「はっ」


私はココに来る間に

どんな裁きが下っても受け入れるつもりでいた

この重き長い道を示す答えが出たことを。。。。


受け入れると


守護様は直江に書状を渡し「読め」と告げた

月明かりと明星の目覚めを彷徨う時の中


兄,長尾晴景の親書が読み上げられた

周りにどんなざわめきが起こったとしても。。。。。


それこそが

驚くほどの「運命」なり



「長尾景虎(ながおかげとら(影トラ))を我が子とし守護代と任ず」



直江の雄々しき声の後

上杉守護定実様も声高く諸氏に命じた


「守護代殿の意向をふまえ,諸氏共々この命(命令)に従う事がそなたらの忠義である!!」



並ぶ全軍に通達された命に

風がとまる

少しの沈黙の後


全ての旗が高く掲げられた



私は立ち上がり

私の後に従った者達を見回した


「命は下った!!今日より「長尾景虎」がこの越後の守護代である!!みな心せよ!!」



胸打つ鼓動に鳴り物の音が同期する

万感の声援と

鬨の声の中



私は守護代となった


それを「運命」と受け入れた

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