その6 初陣(3)
かがり火に照らされながら
私は静かに状況を見ていた
夜
草木も静まった中
闇の帳の色を纏った男達
音は無い
「栃尾衆」は静かに行動を起こしていた
ほんの少し前
やたろーが城外で「迂闊」にも馬鹿騒ぎをする「輩」を数人捕まえてきた
予想通りの「迂闊」な者たち
私は気がついていた
「試そう」なんてする奴らは絶対に近くにいる
この城と
「私」の様子を絶対に見ていると
「長尾」があわてふためく姿を肴に酒でものんびりと食らっていたのだろう
軍議の後すぐにやたろーが私の前に来た
このとき
やたろーは素直な男だと痛感した
「オレも前にあんな事をしてたからわかる。。。あいつら近くにいる。」
自分が「盗賊」になっていた事で
相手のする事を理解できると語った
邂逅し反芻する
それが過ちであった事をこれからは「力」に変えていける素直さが
彼に
経験から即座に対応する「柔軟さ」を与えている
好ましい
私はやたろーの顔をしっかりと見据えた
目をあわせ心を繋ぐ
「戦」の全てを自分に繋ぐためにも
「では捕まえられるな。。」
やたろーが経験を活かしきれば造作もない事と思考は一致した
「何を知っているか?何と繋がっているか?。。。。何が望みかを知りたい」
私の目が鋭利に研ぎ澄まされていくのが自分でもわかる
頭は鮮明に動いている
寺で習った忍従の心はへ兵法の「冷静」と合致する
基本を守り「敵」の中身を知りたい
やたろーは素直だ
私の心に描かれているものを「感じて」くれていた
「まかせてください。。」
イイ顔だ
戦人小嶋弥太郎は即座に答えると
数人をつれて「槍」を担いで出て行き
今その捕まった下郎たちは
城内に引き連れられていた
中庭に連れてこられた下郎を囲むように兵と
実乃,直江たちが立った
「オレたちは。。。」
捕縛され数名の様子から
大半は斬り殺された事を用意に想像できた
まともな面持ちの者は一人もいなかった
殴り倒され歯をうしなった者も多く見受けられた
浴びるような「血」をかぶり惨憺たる状態になり怯えた表情で引きずられてきた
私は前に座った
篝火は揺れる
私の心の「怒り」を反映するかのように少しの風に揺れ
天を撃つかのように弾ける
この無頼の輩たちは
昨日の
あの子たちの母を殺し略奪をした
しかも
それを楽しんだ連中だ
顔をしかめ嫌悪感を表に
無様な下郎たちを見回した
おおかたの尋問はすませてあった
明日
三条の兵がどこからくるのか?
どう動くのか
金で雇われた
はぐれ者立ちは命惜しさにベラベラとしゃべった
「もういいだろぉ!!全部しゃべったぜ!!」
沈黙の間にたえきれなかった男が叫んだ
灯籠の火が風に揺れる
私の顔はどんな風になっているの?
。。。。
盗賊はおとなしくしているが
逃げ出したい
という態度はありありだ
「一つ。。。聞きたい事がある」
縄にかかった男たちの前に私は努めて静かに聞いた
下郎たちは
私の姿を見て気の抜けた表情になった
そうか
まだ私は笑っていないのだな。。。と思った
「なんだよ!」
大男や直江たちに詰問されるよりは「容易く」感じたのだろう
粋がった大声で質問に答えた
「焼き討ちはもとより。。。どうして罪なき百姓を斬ったのだ?」
それが私の一番聞きたかった事
男たちは顔を見合わせて
悪びれる様子もなく
さも「当たり前」だったといわんばかりに答えた
「そうしろって言われたから」
身体が
ざわつく
「いわれたままに命乞いも聞なかったという事だな?」
私は自分の口から「命乞い」などとは言ったが内心は吐き気のする質疑だった
そもそも
何故百姓が命乞いしなくちゃならない
そこに
暮らしていたのに
当たり前に生きてきた土地に「侵略」してきた者たち
命を「乞わねば」ならん。。。
他人の土地なら何をやっても良いのか?
私は睨んだ顔に
へでもないと言う態度で答える
「おれたちだって全部殺したわけじゃね〜よ」
間の抜けた返答
悪態。。。。
「子供や年寄りは助けてやったし」
助けて。。。やっただと。。。。
心が尖る
すでに周りを囲んでいる武士たちにも怒りが蔓延し始めている
「言うことさえ聞けば殺さずにすんだ「女」だっていた」
それが良心か?
悪態を。。。。
薄ら笑いを浮かべながら
よくも平気で
「残された子供たちの事は考えなかったのか!!」
肩が震えた
「侵略してきたオマエたちの言うことを聞いて生きろだと!!!」
「正常に」動く心が怒りを溢れさせて怒鳴った
「何いってんだよ姫さん」
馬鹿にした顔
私の激さえも
おふざけだとおもっているのか?
脳裏に昨日の幼女が写る
。。。。
「かか様が。。来ないの」
あの目を
あの姿を。。。。
頼りなさげなあの声を。。。
どうしてあげる事もできなかった
あんな小さな子供達が親を祖父母を目の前で失ってしまった事が
奪い取った事が。。。。。
それほどに。。。。
頭の中から痺れが走った
「それで?」
まるで悪びれる事のない者たち
怒りは絶頂からさらなる高みに向かって闇を呼んできた
姿勢を正した
怒鳴り散らして自分を乱れさせる事が無駄とわかったから
こんな事に。。。。理由などなかったのだ
反省も
思いやりも。。。。
あるはずなどなかった
ただこいつらは己の欲を満たしたかっただけだ
少しでも何かしらの理由を求めた私がおろかだった事に。。。。。笑いがこみ上げた
わざわざ下郎どもと問答する必要などなかったのだ
息をついた
そして聞いた
「最後の質問だ。。。オマエの信心する仏はいるのか?」
私は刀を抜いた
その刃を下郎の鼻先に突きつけて言葉を失っている歯抜けにもう一度聞いた
「オマエを「加護」する仏はいるのかと聞いている」
闇の帳から光を求め
篝火の炎に身を晒した「蛾」はあっけなく燃え落ちた
怯えた瞳が見える
私は笑っていた声はなくただ静かに笑みを浮かべて
この小汚い男たちの命などに価値を見いだせなかったことに「喜び」を感じた
「わ。。。わしの仏は」
汚らしい歯並びから歯がこぼれ落ちるのではないか?
それほどに男は震えている
刀を振りかぶった
「祈れ。。。。早く。。。」
「ひっひっ!!命は助けるから「目的」を言った!!約束を守って。。。」
汚らわしい。。。。
見苦しく縛り上げられた手足をばたつかせる
心と体に熱くどす黒い感情が渦巻く
闇の意識が私を覆う
なのに
顔は穏やかに笑っている
「だから祈れ。。。オマエの仏が私の剣をへし折ってくれるように!!」
しなやかに刃は滑り降り下郎の首は爆ぜ飛んだ
やっとこの汚らしい男の声が消えたことに安らぎを感じながら手を挙げた
「漆黒」の感情が濁流のように心を満たす
目を見開いた
口元を震わし
呆然と首無しになった仲間を見る
卑下たる者たちの前静かに笑って言った
「私が長尾影トラだ」
静かに冷ややかに見下して
名乗った
その言葉に男たちはたじろいた
すでに
実乃や兵たちの刀は抜かれている
みな落ち着きはつゆほどにもなくなっていた
「影トラ?。。」
顔を見合わせる
「子供でもわかる人の道理を介さないオマエたちに生きる道はいらないだろう」
私は「冷静」に
そして湧き上がる「怒り」で淡々と命を下した
「斬れ」
下郎たちは品のない「命乞い」をしながら
みな斬られた
事の次第をおえた
実乃はすぐに死体を片付けさせた
「明日に備えましょう」
私はただうなずいた
燃える怒り
静かに
このまま明日を戦う
十分に怒りは暖められたと満足した
屋敷に戻る道の途中
門の外でやたろーとジンがしゃがみ込んで何かをしていた
「どうした」
大きな手で何かを仕分けてボロ布で拭いている
「あいつらが持って行ったの。。。取り返した。。」
それは
略奪品だった
「キレイにしてかえしてやる。。」
木で作った小さな「櫛」
返す。。。「何を返す?」
心が唸る
それで
あの子たちの母が帰ってくるわけではない
憎悪は棚にあげ
ただ答えた
「そうしてやってくれ」
こみ上げるもの
見え隠れする「黒い」感情で
共にそれをしてあげられる余裕はなかった
私は戻って自室にこもった
「御仏よ。。。」
「御仏よ。。。」
何度も祈った
目を閉じる
脳裏に「影」が写る。。。
「御仏よ。。。。。。」
これが迷い?
いや迷わない!!
敵を討ち滅ぼす強さを
私は戦う
私は戦う
「戦う」
理不尽な侵略をする者を絶対に許さない!!
残酷と聞いてでいくるのは「シグルイ」(爆)
む〜〜ざん!む〜〜ざん!
イイ表現だなぁ(藁)
でもやっぱり真理であったりもする
好きこのんで
そんな描写をしたいわけではないけど
小説という産物の中で。。。
背中に哀愁とか
目で落とす
とか。。。
なかなか若輩な私にはできないような。。。
でも
次回から
戦になります
残酷な描写もあります事でしょう
そのあたりはみなさまもご理解ください
明日はがんばって書きます
ライブ執筆(藁)