その32 狐火 (5)
守護代軍は警戒の態勢をとりながらも「宇佐見」からの情報
「挟み撃ち」にする作戦にのっとって
早くても明後日まではココにはこない「栃尾軍」を待ちかまえるため今まではなかったが「酒」を振る舞っていた
決戦の日取りが決まってしまえば不安はだいぶんと和らぐ
国分も片手に酒の壺を持ちながら
前衛の生き残りたちを励まして回った
国分が関東から連れてきていた自軍兵はもはや二十人にも満たない数だった
「がんばってくれ」
関東時代からの生き残った家臣達の顔にはたくさんの傷があった
新しいもの
古い物
みなが共に生きてくれるための勲章のようだった
苦楽を共にした兵たちに返せる物の少ない国分はせめて酒だけでもとついで回った
そんな
一人一人に酒を振る舞っている国分の陣に「彦五郎」が戻ってきた
「彦五郎殿!」
最初にそれに気がついたのは「室坂」の息子だった
砦の「戦」で父を亡くしたばかりの子「一郎」は室坂の実の子ではなかったがそんな血のつながりばかりでココまでやってこれたわけではなかった
関東の激しい戦いの中
室坂は元より
国分の家族だって無事にココまでこれたものは実の一子「彦五郎」だけだった。。。
妻も他の親族も離散した状態で「越後」まで流れてきていた
家臣の子供
その手代
「戦」の日々をくぐり抜け共にココまでやってきた者たち
そういう者が大きな意味で「一族」だった
一郎は亡くした父の鉢巻きを頭に巻いた姿で彦五郎の元に嬉しそうに走っていった
「先にやっておりました!!どうぞ中に!」
そう言うと彦五郎の持っていた槍を受け取った
一郎にとって彦五郎は「兄」のような存在
「お疲れにございます。。父上」
「若殿の元におらんで良いのか?」
少しこまったように彦五郎は額を搔きながら父に答えた
「他の近習達が集まっております故。。。こちらにお邪魔しました」
「そうか。。。」
「越後」に流れ仕官した「上田長尾家」は国分にはそれなりに良い待遇を与えてくれていた
当主「長尾房長」(政景のお父上)は慎重な「戦」に置いて堪え忍ぶ「心」こそが大切であると国分を優遇していた
その具体的な優遇の一つに「彦五郎」を近習として政景の元に付けた事があった
房長に言わすのならば「越後」において守護代晴景と同じぐらいの武威を持つ家として「上田長尾宗家」はあるのだが
その「虎の威」に乗り「戦」の中身を知らぬ口さがない若造ばかりの中
「彦五郎」は宝のような存在だという
たしかに
争乱うち続いた「越後」
しかし
為景死去以降。。。晴景が治世をついでからは「大きな戦」はなかった
小競り合いの嫌がらせを「戦」と勘違いして「上田家」の威を借り若造どもは増長していた
まるで「戦」を囲碁の棋譜のように語る若造たちの中「彦五郎」は違った
本当の「死」と隣り合わせの現場を走り抜けてきた彦五郎に房長が目をとめたのはもっともな事と言えた
「殿に。。。小突かれたか」
たき火を前に自分の隣に座った息子に国分は杯を渡しながら聞いた
「いいえ。。。。せめて今日は。。心も弾ませていてほしく思い」
渡された杯の濁った酒に雨露を受けながら息子は疲れた声で返事した
国分は彦五郎がココに来た本当の理由がわかっていた
流れ落ちた国分の待遇の上に政景の近習として取り立てられた事
それは「大抜擢」だった
だけど
もともとの政景の近習。。。「勝六」や「与一郎」達にとっては面白い話しではなかった
何かにつけて「真面目」な彦五郎はそれまで仲間を引き連れては放蕩をしていた政景を諫めて回った
時にぶつかり。。。時には共にへこたれ
それまでち「次期守護代になる家,上田の嫡男」と名前の勢いで育った政景には新鮮な「仲間」だった
自分に本気で物事をぶつけてくる彦五郎に一目置くようになっていった
しかしそれは昔からの「仲間」にはまったくもって面白い事ではなかった
近習として政景の屋敷に上がった日から彦五郎は「今に至るまで」常に「嫌がらせ」を受けていた
「殿の。。。様子はどうであったか?」
空にした杯を返しながら彦五郎は答えた
「幾分和らいだ様子です。。。ココまでが大変でしたから」
息子の顔にも多くの傷があった
国分はその頬を触った
「ああっ。。。明後日はもっと大変だ。。だがな主君を守っての傷は。。。誉れぞ。。。」
父の優しい手に
「わかっております」
息子は即答した
「また若殿様にハジかれちゃったんすか?」
親子の固まった会話の中に室坂の息子「一郎」が割って入ってきた
すでにほろ酔いの状態で
ひさしぶりのヒマ。。。兄と慕う彦五郎と話しがしたくてしかたない
「違うよ」
足下をふらつかせている一郎を座らせて彦五郎は腰に着けていた壺をだした
「殿からです「国分隊」。。。ごくろうであった。。。労ってくれと渡されました」
それは本陣に用意されていた「柳」(酒)だった
「殿からか?」
「はい。。。わしに。。気を遣ってくださったのでありましょう」
本陣を占める近習たちの間では居心地を悪くしている彦五郎の事を政景も気がついていた
お互いが分かり合い
ぶつかりあっても
もともと仕える者たちをないがしろにしてまでは近くに置けない
政景の心遣いだった
「ありがたい。。。」
本心では「優しい部分」をたくさん持っている若殿に国分も目を細めて感謝した
風と雨は止まることはなかった
夜を過ぎ暗くなった陣営の中を彦五郎は見回りも兼ねて歩いていた
陣を構えた台地から見える石川は信濃川とは比べる事もできない小さな川だった
酔い覚ましのために一郎が水を汲みに走る姿が見えた
「一郎!!足下に気をつけろよ!!戦以外で怪我などしたらつまらんぞ!!」
「大丈夫だよ!兄貴!」
酒を飲んだといっても「泥酔」するわけじゃない
冬の近い野営に体を温めるための必需品だ
一郎もその歳にしては多くの戦場を駆け回ってきた子だ節度はわきまえている
その一郎が桶を投げ捨てて彦五郎のところに走ってきた
「なんだ?お化けでもでたか?」
弟分の異変にふざけて見せた彦五郎だったが一郎は真剣だった
「何か。。。いる」
彦五郎の襟首を引き小声で言う
引かれたまま「些末」な事を聞き逃さぬようにと膝を折り顔近づけて聞いた
「何が見えた?。。。獣か?」
息を整えながら一郎は首を振った
「人。。。だと思う」
「火や!!狐火や!!」
二人が川岸の異変に気がついたとき他の物見たちが騒ぎ出した
「父上に知らせろ。。。何かがいる」
一郎は返事はせず頷くとそのまま国分の陣営に走っていった
彦五郎は他の見張りを槍でこづいて起こして回った
その間も川岸から目を離す事はなかったが。。。。
「狐火。。。」
最初一つ二つと揺れた灯は瞬く間に目の前多数現れた
台地という上から見る火は一本の線を引いたように美しく並んで揺れた
「彦五郎!!」
前衛隊大方の見張りをたたき起こした彦五郎のとなりに国分が並んだ
「近い。。。」
狐火は今まで見た距離ではなかった前は二里は離れて燃えた火が川岸に並んでいる
「これは?」
父に疑問を投げかけた息子の頬を張った
「本陣を起こせ!!!「敵」だ!!!」
国分の判断は速かった
声を聞いただけで
一郎はまたも何も告げづまっしぐらに本陣に入っていったがまわり物見は目を凝らしながらも
「宇佐見殿の部隊では?」
などと
とぼけた事を言っている
「父上!!「影トラ」ですか?」
彦五郎の言葉は太鼓に遮られた
未だ朝を迎えられない「闇」に鬼の慟哭が響き渡った
闇の緞帳の退場を叫ぶ気勢が続く
同時に空に「何か」が飛んだ
目の前に地獄の篝火が近づき「戦」という大地が開かれたことに彦五郎は敏感だったが彼らの予想していた時間ではなかった
「父上。。。」
何度も相手を確かめようとしていた彦五郎は父の目の前で急に崩れた
同時に前衛を守っていた者たちの何人かが闇に倒れた
崩れた息子を抱いて国分は気がついた
「石礫か!!」
彦五郎の顔は真っ赤に染まっていた
無言の炎は揺れ
大地を揺らし朝を待たずに「戦」は怒号をあげた
なるか「漫画」(藁)
後書きからコンニチワ〜〜〜ヒボシです
東京は櫻が咲いたそうで。。。。なんか凄い
ヒボシも花が咲いたらひっそりこっそり夜桜をビール片手に見に行きたいとおもってます(藁)
ところで
以前「挿絵解禁」という報がなろうに流れていて
ヒボシも「絵師」さんにたのんで書いて頂きたいなどと色々と回ったのですが(爆)
断られた(撃沈)
というのを後書きで書いた気がしますが
なんとなく(果てしなく希望的憶測)
書いてくれそうな人が見つかりました(藁)
絵にしてもらったらもっと世界が広がるかも
もちろん素人同士の口約束みたいなものですから
過大に押し付けたりなんかはできませんが
で
この人時間さえあったら漫画を書いてくれそうで(それこそ希望的大憶測)
そうなったら嬉しいな〜〜〜〜プハ〜〜〜
そんなこんな
希望の春を迎えつつ物語も終盤に迫ってきてます
まだまだ問題も山積み
後二山はがんばらないと終わりにもってけないですね
でも
がんばります
がんばって最後まで走っていきますからよろしくお願いします!!
それではまた後書きでお会いしましょ〜〜〜