その31 護摩 (7)
久しぶりに後書きに人物評書きました
「戦」に入ってから慌ただしく人が出入りしているので人物のご確認に役立てば幸いであります!!
「信濃川を渡らざるえません」
片腕に二つの矢を受けたため具足をはずし野戦治療という荒療治を受けながらも
樋口兼村は地図の駒を指ではじいた
すでに夕刻も近づく今
砦から後退した守護代軍は念覚寺には戻らなかった
「栖吉」は寺から一里南にて陣を展開している
報告が入っていたからだ
後退しながらも周囲の状況を状況に知るために樋口は残った騎馬を頻繁に走らせていた
「栃尾は十分に「戦」の支度をしておりましたな」
無口で通った男だが
未だ殿から国分佐渡守が戻らぬ以上は政景との作戦のために苦しくとも話しせねばならなかった
顔色を悪くした樋口は
治療。。。とはいえただ鏃を引き抜き止血の木綿をまいただけの腕をさすりながら
それでも消して声を震えさせずゆっくりと続けた
「栃尾の構えから見て寺より南に戻る事はできません。。。坂戸との道筋には栖吉が必ず陣を構えておる事でありましょう」
「坂戸と挟み打てばよいではないか?」
後退した守護代軍の陣形が改まったところで床机に疲労とともに重く腰掛けた政景が樋口のはじいた駒を寺に向けて置き直した
「それでは我らが挟み打たれます」
政景の暗い顔の前
樋口は動く右腕で栃尾の駒を守護代軍の駒のケツにぶつけた
「距離から言っても坂戸と挟み打つ前に。。。。栃尾に尻を炙られてしまいます」
政景にもそれはわかっていた事だった
栃尾は奥まった峠の向こうに城を持っているが面前には「陸の道」を持っている
それ故に中郡での重要な要になっておりひいては「揚北衆」への牽制の場所にもなっていたが
もとの役目は「栃尾城」自体が「栖吉長尾家」の出城という所にあった
そのため
信濃川にそって奥山の峰伝いに守りの領土を持っている事になる
坂戸への帰る道に栖吉は「城」を構えている。。。という非常においしくない状況になっていた
もちろんそんな事はいまさら言われなくてもわかっていた事だ
坂戸からの行軍の道筋にいたからこそ「兵糧」の供出をさせていたのだから。。。。
政景には色んな思いが巡っていたそのせいで頭は下げたままになっていた
若殿の姿に樋口も重い口調で告げた
「枇杷島に早馬を飛ばしております」
「枇杷島に?」
汗にまみれた顔をあげ聞き返した
そもそも上田長尾に。。。政景の家に「軍師」としての知識をひけらかしていたのは宇佐見だった
樋口もその胡散臭さと見えぬ人物像に警戒はしていたが今はそうも言っていられない
「挟撃するならば栃尾勢に我らを追わせた方がようございます。。。」
つまり
湿地帯ギリギリの霧の中を隠れ進み
枇杷島からの後詰めと向かってくる栃尾軍を挟み打つという策だ。。。。が
「宇佐見は我らに従うのか?。。。。それに栃尾は追ってくるかもわからんのに」
政景は率直な疑問をあげた
その疑問に樋口は少しずつ自分の頭の中にある「図」を整理するように話した
「宇佐見は未だ守護代にも良い顔をみせぬ不忠義者なれど「仕官」を。。。いや「軍師」になる事をねがっております。。もともと先代の時に関東から被官してきた者です。。地に足の着く職務を約束すれば我らにつきます。。。でなければあんな根無し草を使う者などだれもおりません」
古くから上田長尾宗家に仕えてきた樋口は流れ者であり「関東の上杉」の名で飯を食う宇佐見を見下していたが
利用する方法はないと言い切った
「越後の変革に付き合い「軍師」の座を与えれば従いましょう。。。今この時ほどの好機を宇佐見も見過ごしはしないでありましょう」
政景も宇佐見の事ではあまり良い話しは聞いていなかったが
何故か「軍学」に秀でた者である事だけは知っていた
それに「関東の上杉」は上田長尾の「山内拝領」とも少なからず「縁」はあったため手紙を送ってはいた事を思い出した
「わかったその事は任せよう。。。しかし栃尾が我らを追うという保証はない」
政景の了承に続き献策しようとした樋口は少し躊躇したように
「前に出すための策は。。。。。」
口が重いが。。。。迫る闇の時には行動を起こしたいという考えから「策」をつげた
「まず春日山とつなぎをとる事です」
「なんだと!!」
「春日山」
その言葉に
いまだ疲れから床机を飛ばし立ち上がる事はできなかったが上半身を真っ直ぐに起こして政景は怒鳴った
「この「負け」を晴景殿に知らせたいのか!!」
怒りの政景を樋口もまだ床机から立ち上がる事のできぬまま右手で制止して言った
「「策」にあります。。。この「戦」は守護代様の命(命令)により影トラ様に懸かった嫌疑を晴らすための「仕置き」にございましょう。。。なのに「反抗」されましたなれば春日山に折られる「虎御前」を質に。。」
「やめろ!!!」
樋口の前
政景は両の手を地図を広げた台に叩きつけた
「負けているから「人質」をよこせと。。。。そう言うことをしろと」
唾を散らしながらも政景は。。。。
「まだ。。。負けておらん!!負けておらんのに。。。そんな事は出来ん!!」
「しかし」
「だまれ!!「退いて勝つと」言ったではないか!!それがそんな卑怯な手でしか「勝ち」を得られないとわかっていたなら!!炎なんぞ恐れず。。」
「負け」
それは政景にはあってはならない事だった
「次期守護代」を約束された自分が「質(人質)」を獲って国をまとめたなど。。。。
そんな手管ででしか勝利を得られなかったとなれば
嫌悪してきた晴景と同じように「虎御前」を質に栖吉を抑えたのと何もかわらなくなってしまう
額に流れた汗を払った
目指していた「勝利」は
どんな「戦」に勝つ事
勝って勝ってその戦績によって頂点に
「力」でもってその座についた「戦鬼為景」の再来と言われるほどの栄誉が。。。
そうだ
奇しくも「影トラ」が使ったような「炎」を纏うような「戦」で「勝利」を手に入れたい
あの「護摩」が目に焼き付いて離れなかった
思い出しても震えるほどの。。。悔しいが猛々しい「戦」
それがどうしても政景は欲しかった
一度は落ち着けていた
息を荒げ
叩きつけた両の拳をふるわせる若殿の姿に樋口は口を塞いだ
「ではすぐにでも信濃川を渡りましょう」
怒りで硬直してしまった陣幕に手を割って入った男は傷だらけに焦げた肌の匂い
「国分。。。。」
顔を起こした政景と樋口の前に入ってきた国分の姿は最後尾を守った「戦」の凄まじさを十分に語っていた
兜はなく
籠手も各所がはじき飛ばされたように千切れている
草摺の裾板も右足の方がなくなっていた
「先に申しあげておきます。。。我が部隊は。。。もはや動くことできませぬ」
父の後に続いて入った彦五郎の手には「室坂」の鉢巻きがあった
震える手でそれをたたみながら
「現在の我が軍の総数は三千五百ほどです」
戦目付とともに全軍の数を改めていた彦五郎はこたえた
樋口はただ
国分と顔を合わせて頷いた
「身は軽くなりましたすぐに信濃川を渡りましょう」
総数が減ったことに対する「落胆」を国分ははね除ける強きで続けた
こんな切迫した事態の中で「脱走者」だの「集兵逃れ」などの「処罰」の話しなど言い出してもきりがない
そのうえ
国分も樋口も己の部隊の大半を失ってしまっている
家族のように過ごした直臣であった「室坂」の事を思えば「身軽」などと簡単に言える言葉ではなかったが
悔やんでもはじまらない
むしろその事を気にせず進む事で「勝たねば」ならなかったからこそ強い口調で続けた
「坂戸との連携を取るためにも栖吉を避けねばなりませぬ。。このままココに留まっていれば栃尾からの挟撃にもあいます。。日(翌日)を待たず夜のうちに渡河しましょう。。。渡河して栃尾を誘い込む情報を流しましょう」
「情報を。。。。流す?」
政景はすでに自分では考えが着いていけなくなっている事を「恥」と重いながらも聞き返した
国分は今し方戦ってきた峠の方を見ながら言った
「川を挟んでの対陣のために「後退」しながら近隣の国人衆を集めている。。。。と。。目の前で「後退」してゆく我らをみれば栃尾も川を渡りましょう。。。大部隊になる前に。。必ず追ってきます」
「宇佐見もろとも信濃川にひしめく豪族どもを従わせる。。「次期守護代様」の名において」
政景は反対はしなかった
どちらにしても川を背に陣は張れないし。。。逃げた兵の補充もしなければならない
「反抗者」に対する見せしめの「戦」を声高く宣言して戦う。。。
それは政景には好ましい策にとれた
「戦の乗法」に従った
大きく一息ふくと
この状態の中帰陣してくれた国分の肩を叩いた
「勝つぞ」
介したすべてに命がいきわたった時
彦五郎と共に陣幕に入ってきていた大男が大きく手を挙げて言った
「雲行きから朝方は雨が降るやもしれませんな」
陣幕に揃った「上田長尾」の面々の前にたった柿崎は鼻をならし
外の匂いを嗅いでみせた
「雨がくるのなら尚のこと。。。」
「柿崎殿よ」
急いた彦五郎の言葉を割って政景は末席にて意見した柿崎に声を掛けた
「戦はまだこれからだ。。。。」
「わかっております」
「貴殿にも存分に働いてもらわねばならん」
政景は戦目付である柿崎に「余分な」報告をされたくはなかった
だからすごんだ声で「釘」を刺した
「期待しております。。。。ワシも手ぶらで帰るのはイヤにございますから」
柿崎は不敵に笑うと腰に着けた小太刀に手を添えて見せた
「報告は「勝ったとき」にさせて頂きます」
「それだけで十分だ」
柿崎の返答に政景は「未だに」戦が自分の手の中にあるものと安堵していた
この夜守護代軍は全軍にて信濃川を渡った
しかし
翌日政景達の前にあった守護代軍の現状はもっと深刻なものに変わっていた
「護摩編」人物評
昨日。。。。頑張って色々書いたのに。。。何か触っては逝けないボタンを押してしまったらしく
真っ白になってしまい。。。涙にくれたヒボシでした
しかし!!
気を取り直してせっせっと書きました
長尾影トラ
言わずと知れた主人公
兄から懸かった疑いにプラスαの家臣達からの「戦」に出ろコールでしばらくグレて(藁)ましたが
つやのお願いから「祈る者を助けろ!!」という陣の言葉で目を覚ます
諸悪の根元は越後にある「争い」を野放しにしている守護代,兄.晴景と認め
アラシとなってこの地を平定するために現在奮闘中
迫り来る政景達に櫓を崩落させ炎の壁を作るという前代見物の荒技で守護代軍に先制パンチ!
「容赦のない心」は完全復活で戦の駒を進める
加当陣江
フルネームで書くのが久しぶりすぎて作者さえ忘れそうだったよ(藁)
引きこもりになったトラを「戦」に引っ張り出す事に成功したジンは
とりあえずトラの近くについて「お守」兼「護衛」として働く事ができるようになったよ!!
おめでとう!!
しかし目の前で見た初めての戦に「恐怖」しているところもあるが?
トラの苛烈な戦ぶりはジンの目にはどう写っているのか?
この先の二人の関係にどう響いていくのか。。。。難しいところである
芝段蔵
得意の諜報活動と奇策(トラに女装(藁)させるなど)でまんまと守護代軍を砦の真ん前まで引き寄せる事に成功した段蔵
とりあえず面目は立ったね(藁)
「忍仲間」の中西を使いもう一仕事守護代軍に罠を張っている様子だが。。。。
本庄実乃(ほんじょうじつの。。。またはさねより(藁))
ひたすら苦労人の実乃さん。。。。
引きこもりのトラのためにあの手この手と苦労したが
秋明院様に口伝でどやされたり。。。金津に殴られたりと。。。結果はさんざん。。。
ホント苦労人(藁)
この先も苦労は続きそう
高梨政頼
ちょっぴり登場(藁)これからはもっと出てきます
妻は長尾為景の妹でトラにとっては叔母
とりあえずトラの味方
秋明院
虎御前の母にしてトラのおばあちゃん
一子相伝がごとく女の強い家系になってしまった「栖吉長尾家」に現在も君臨する女王(藁)
守護代軍を挟み打つために栖吉城にて蜂起!!
彼女のこの行動で
栃尾VS春日山。。。影トラVS晴景の図式が越後じゅうに広まってしまったのはいうまでもないが
彼女はその事をよろこんでいる。。。血の気の多い困ったおばあちゃんだが歳は実様と同じぐらい。。。
長尾政景
餌としてふられた守護代の地位に本気で食いついてしまった政景
逸る心を抑えられず
収穫期に大軍を率いて栃尾に出陣
当初は影トラが逆らうことがないと軽く見ていたが砦の合戦で「櫓落とし」をくらい炎の壁に阻まれ後退を余儀なくされる
根っからの熱血漢らしく
人質をとってまでの「勝利」を嫌悪しているようだが。。。。
はっきり言ってそれでは「戦」の素人
また皮肉な事に目指す守護代像はかつての「戦鬼」為景。。。。だから姑息な手段での勝利ではなく
戦での絶対の勝利を願っているが。。。。現在はその心意気が裏目にでまくっている(藁)
上田長尾家臣団
国分佐渡守
砦の合戦で後退戦の最後尾を守った豪傑
命令は身体にたたき込むが心情か?息子の彦五郎をバンバン殴る(藁)
自分の反省の時も自分の頭を殴っていたりもする
別にSadeでもmasochistでもない(藁)
かなりの体育会系な老将
樋口兼村
後の上杉家家臣団の筆頭家老にもなる「直江兼継」のおじいちゃんにあたる人
老体にすでに矢を受けかなり痛々しい状態ながらも「策士」らしい策を進言するが。。
室坂
国分配下の足軽大将だっがどうやら砦の戦にて討ち死にしたもよう
柿崎景家
守護代軍の戦目付として現在政景側に姿あり
しかし。。。。不敵な態度。。。4熊はどちらの味方なのか?
宇佐見定満
関東の上杉代からの被官の彼の願いは地に足の着いた職務として「軍師」になる事らしいが。。。願いは簡単にはかなわなそうな予感だ
とりあえずこんな感じで書き込んでみました!!
あ〜〜よかった途中で消えなくて(爆死)
ではまた後書きでお会いしましょ〜〜〜