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その31 護摩 (6)

ランキング〜〜〜

なんか。。。よくわからないのですが(藁)

友達が色んなランキングに登録してくれました

(注.ヒボシはパソコン音痴(爆))

怖いです。。。そんな〜〜しらない間にぃぃ何してるの?って感じですが

そういう事も良き協力と信じがんばっていこうとおもっております!!!

苛烈なる火蓋は文字通り

いや

斬って落ちるなどという生やさしいものではなかった



崩落


高井楼たかせいろうはたくさんの油樽を乗せたままその重さも手伝って一気に崩れ落ちた

驚愕の出来事は下敷きになった者たちの断末魔と命

先を走りとりあえずの難を逃れた者たちから声を奪った




くことなく天に捧げられよ」



突然の出来事に茫然自失の状態になりながらも

櫓の下敷きになった「仲間」を助けようと走った者たちの背に「火矢」が刺さる

散乱した櫓に仕掛けられていた油に高井楼の足を引きなぎ倒す仕事をこなしたばかりのやたろー達が火束(藁に火をつけたもの)を手早く放り込んだ


たちまち炎の竜は逆巻き

櫓に塗られていた油をつたい蛇のように走り回る

見る間に

枯れ木と藁で積み立てられていた櫓の骸は護摩の火にその身を赤く染めた



後続の部隊と出しゃばって先を走ってしまった「俗物」どもは遮断され逃げ場は前にしかない



だけど



それまで「欲得」に染まっていた目はもう「怯え」しか映していなかった

とてもそこから走って私の所まで来て名乗りを挙げようとする気力はない様子だ

正面

私は屋形の真ん前に立ったまま

火矢に怯えながらも後ろに燃えさかる炎からも身を隠せなくなった者たちを眺め見回した

百はいるな。。。。



手を開き

あえて優しく手招くが

面前には

並ぶ弓隊たち容赦を知らぬ火の刃を構えている



オマエ達がただの「亡者」ならばその「欲」でココまで駆け上がってこればイイ

そそして

その濁った身体と腐れた心を私が一刀の元に斬ってやろう

そうでないのなら



「捧げられよ」

天のためにこの地のために「礎」となって捧げられよ

それは実に望ましい「死」だ

なんと輝かしい「宝」を。。。。。。


うっとりとしたゆるやかな気分の中

自分の心を引き締め「戦」に赴く心を示すために


小姓に控え持たせていた刀を抜いて吠えた



「潔く死ね!!死に踊り天に逝け!!その汚れた身体が炎に焼かれ煙に変わったのならば「恩寵」も過分に受けられよう!!」



どんな轟音もきっと私の声は引き裂き貫いて聞こえるのであろう

攻防の死に近づく者たちはお互いの顔を見合わせている

ある者は背中に迫る炎の向こうに助けは来ないのか?と

ある者は身構えてはいるが逃げる道を捜し首を忙しく動かしている


愚鈍なる行動

どの者の顔にも「信心」は無い

見捨てられた木々がごとく



「助けてください!!!降参致します!!」


およそ前衛の中でもひときわ目立った具足をつけた男が叫んだ

槍を投げ鉢巻きも投げ捨てると

迫る炎を気にしながら二本指した刀まで投げて土下座した


「わしらもう勝ち目はありません。。。ココで降参致します。。。」



声に「はかりごと

地べたにこすりつけた頭は上目遣いに私の顔色を伺っていた

透けて見えるほどの安い心


おそらくこの男が「集兵」に一仕事した「野武士」なのだろう。。。

金で人手を集めた男はさらに「欲」の火を消すことなくココにやってきて。。。

なのに。。

何に平伏する?


「殺さんでくだっせぇ。。。」

先頭にいたこの男の脱兎な態度に

呼応して

武具を投げ捨てからだを地面に伏す者たち


「ざいご(田舎.里)にけぇたった(帰ったら)おかあと娘がまぁっとりますから。。。ゆるしてくだんせぇ」


年も十分な働き手達は口々に「泣き」始めた


「もうよっぽらでしゃ。。。助けてくだっせぇ」


口ぶりから百姓である事は十分にわかっていたが



だから。。。なんだ?

「戦」に来たのならば「死」はすぐとなりにいる友だ

その死への引く手から逃れたい理由は?

救われたい理由はなんだ?


聞こう



「何に救われたい?」


私は刀を持ったまま首傾げて見せた

炎の下

燃える情景の中では

およそそんな言葉はきこえていない

きっと聞こえるように言ったところで彼ら自身が「何に」頭をさげ自分たちの身の安堵を願っているか?など。。。。

わかりもしない。。。



やはり哀願は

「戯れ言」


ゆらりゆらりと身を揺らしながら私は火に炙られる者たちを眺めた


「言いわけはきかない」


私の少ない「説法」の間にも火の勢いは増し熱さが感じられるようになってきていた

きっと彼らの焦りは絶頂に達している

だから見苦しい事を言っている事に気がつかない



私は不愉快になった

護摩の火のためにくべられる栄誉を与えたのに

それに逆らい華々しい死を己で迎え入れる事もせず

泣きごとを告げる者たちに


見たくもない汚さだ



目を背け顔をあげ崩れた櫓の向こう

中軍に構え直しているであろう政景の方を見た

炎と煙を畏れ大きく陣営を後退させているのがよく見えた


「にがさんぞ」


そういうと視線を落とした


「慈悲を請うなら天に祈れオマエたちの「欲」という「信心」に祈れ。。。そして救われてみよ」


そこまでいい背を向けた

次の仕事に入らねばならない

「入れますか?(投降を許しますか?)」

段蔵の声に手を振った



「焼け」


簡潔な指示

後は嘆きと悔やみの言葉が波のようにただ聞こえた







目の前は一瞬にして景色を変えた

崩れた櫓の向こうはただ大きく炎が立ち上がり。。。。

悲鳴が聞こえ



静かになった


静けさの中砦の城壁は炎に姿を変えたまま誘うように揺らいでいた


遮断された前衛はみな脱兎のごとく逃げ元の隊列に戻ることなどできない混乱が始まっていた

慎重に前進していた国分の部隊をのぞき

前衛の部隊は例外なく崩れ「樋口隊」はおそらく半分以上の将兵を失っていた

骨のようになった隊列の中に目を見開いて声を無くした「老将」樋口の姿があった


「なんだ!!あれは!!何をしている!!」


部隊の兵卒と同じく急転した状況に飲み込まれていた政景はいななく馬の背で我を取り戻し

同じく呆然の状態の周りに怒鳴り散らした

みな一応に政景に向き直るのだが

状況を伝える「声」を。。。。いや「言葉」を発せられない



わからないのだ

何が自分たちの前で起こってしまったのかが


「退いて下さい!」


誰もが困惑している中を槍を担ぎ楯を前に持った「彦五郎」が飛び込んだ

「ココは私が立て直しをしますその間にも後ろに下がり指揮をまとめてください!!」

彦五郎は他の諸将にくらべたら毅然としていた

父にはっ倒された唇の痛みに「経験」が残っていたからだ


まだまごついたままの小姓を達を殴った

「殿を守って後退せよ!!」


「だまれ!!!わしは退かんぞ!!ココにて陣形を作り直せ!!」


馬を暴れさせたまま政景はわめいた

驚きで声をココにいる兵卒と同じように無くしてしまっていた事も「恥」であれば

そのうえで逃げるなど受け入れる事のできぬ「恥」だ

拳にこもった熱で己の胸を叩いて大きく告げた


「おそれるなぁぁぁ!!!全軍前進!!!炎を突き破れ!!!」


正気か狂気か?

彦五郎は大きく首を振って否定した

「あり得ません!!!冷静になってください!!」

しかしもはや振り向きもしない


「炎に臆してにげたなどと!!」


政景の顔は全面に渦万炎に照らされて赤くなっているわけではなかった

何もかもが自分の考えを上回った事にあきらかに焦っていた


「誰も行かぬのならわし自らあの炎を。。」


槍を持ち彦五郎を刺すのではというほど頭に血をたぎらせていた政景に

周りはさらに混乱の色を深めていた


「突撃か?後退か?」

緊迫の間割ったのは前衛隊から駆けつけた

樋口兼村ひくちかねむら」だった

兜をまだ腰にくくりつけたまま白髪を振り乱しながら迫る危機を機敏に感じとっていた男は政景の馬の前で告げた


「今ココに留まっても我らに良策は無し。。。打開という意味で「炎」をくぐって前に進むという「策」はあれど。。勝機も無し。。しかしながら「戦」は始まったばかり。。なれば我らがココで退く事で「勝利」を招き入れる事もできましょう」


「なんでだ!!」


いまだ退くことが「敗北」という考えにしか結びつかない政景は怒鳴ったが

老将は冷静だった

若殿の気性にあわせて踊っていた馬の手綱をしっかりと掴むと

老骨が知る「戦」を語るために視線をあげた

谷間から向こう自分たちを囲んでいる森をぐるりと指さして


「残念な事に現状では前には進めません!!百姓どもに「炎」をくぐる気概はありません!無理強いすれば部隊を崩してしまうのがオチなだけ。。。ですが敵もまた「炎」を越えてはやっこないハズ。。しかしだからと言って「影トラ」が「戦」を中断するような者にはみえません。。。必ず仕掛けてくる。。。我らを囲む森から。。」


経験深き老将の言葉に彦五郎も目が覚めた


大軍という威を借り「おそらく」敵は「降伏」するだろうという読みで

軍勢が立ちゆきままならぬ領域に踏み込んだ事もまた「誤り」だったが

女に「戦」などと見くびってしまった事も

そもそも


「栃尾は戦など出来ない」


そう思ってココまで来てしまった事に「過信」があったと

その「過信」に今だに自分たちが引きずられていた事に気がついた

だから

確信を持って逸る政景を引き留められなかった自分の若さに樋口の言葉で気がつかされた




空前の「戦」は今まで見たことのない方法で始まってしまった

もう今更「これは無い」などと考えるのは甘甘なのだ


「おトラ姫は本当に「戦」に強かったのだ」


彦五郎は噛みしめるように自分の胸を叩きながらこぼした

ココは正真正銘の「戦」の舞台なのだ

舞台から落ちてしまったら「死」しかないのだ


彦五郎は自分頭を音高く殴った

殴って政景の足下に控えて告げた



「我らココで討ち死にしますか?それとも勝つために一度退くか?どちらかを命じてくだされ!!どちらの指示にも命を惜しまず働いてみせましよう」


覚悟を

ただ闇雲ではなく生きるために


樋口の的確な諫言かんげん

彦五郎の覚悟に政景は置かれている立場を少なからず理解した


「退けば勝てるのか?」

「勝つためにココにきたのです。。。どうやってでも勝ちの流れをこちらに向けます」


そういうと樋口は前線に一陣を張るために移動している国分隊を指さした

「殿の後退を信じ国分隊は「殿しんがり」の準備に入っております。。炎の壁があるうちに後退を」

彦五郎も指された先を見た

父.佐渡守は大きな声をあげ激しながらもまだ諦めず時をかせぐ準備をしている

若さで力押しの意見はとおらなかったが樋口の言葉添えでかなり冷静さを取り戻した政景に彦五郎は告げた


「退路の確保は出来ております。。。お下知を」


政景はうつむき敗北の苦さに頭を振ったが

すぐに顔をあげ砦を睨みながら答えた


「全軍後退峠まで下がれ」



しかし

守護代軍の後退の判断は遅かった

前衛が備える位置とは別の方向から一斉に矢が飛んだのが彦五郎の目には映っていた

高き法螺の音ともに

それは「容赦」なく降り注いだ


指揮系統の混乱が長引いた守護代軍中軍の兵が凶器の雨になぎ倒された

政景の前を守った樋口の腕にも矢は刺さっていた


「なんたる早さ!!言ってる先から。。。」


片腕に矢を受けてしまった事で二陣の「殿しんがり」に覚悟を決めた樋口は彦五郎の背を押した

「殿を守って後退しろ!!速やかに!!」



滞っていた守護代軍は一丸となって後退を開始した

混迷色濃い「戦」苦渋の選択をした政景は矢の飛ぶ根本を睨んだが目に映った旗に「怒り」は絶頂となった

それはかつて上田長尾が見放した「同族」栖吉すよしのものだった


「おのれ!!栖吉!!!」


悔しさに歯がみすれど。。。

激烈なる後退戦は始まったばかりだった

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