その31 護摩 (1)
今日は追儺の鬼の日でございます!!
ヒボシの家の周りは。。。雪でいっぱい。。。鬼もこないのでは?と思うのですが
やはり日本人らしく「恵方巻」も食べつつ豆まきもしようと思っております〜〜
みなさまも厄災を払うために大いに食べ豆まきをしてくださいな〜〜
晴れ晴れしく
言いたいことは全部言えた事で私はすっきりした心持ちで政景に背を向けて砦にむかおうとした
「たわけ!!!影トラ!!オマエのしようとしている事こそが「乱れ」だ!!こんなバカげた事を横柄に言い切ってしまうような「妹」を想うてわしに懇願した綾に悪いと思わぬのか!!」
大声にしては声は割れ
見苦しいほどの嗄れ具合。。。。
息のあがった焦りが背中にむかってかけられた
私は気が抜けた
危うく躓きそうになった
こんな所まで来て説得に「姉上」の名前を出されるなどとおもってもいなかった
それに。。。
「虎姫!!我が殿の温情を無になさるとはなんたる恩知らず!!」
政景がつれている近習達の不作法さ加減にも。。。。呆れた
数歩進んだその場でとまって後ろ姿を政景に向けながら考えた
だいたい。。。
「姉上もおかわいそうだ。。。こんな男に嫁がされて。。。どこか良いところでもあるのか?」
つい小声で私は首を傾げながら
それに気がついた段蔵が耳打ちした
「こういう子供じみたところでは?」
なるほど
段蔵の切り替えに私は両手をポンッと打ちそのまま振り返った
そして
彼の顔をじっくりと見てみた
男らしい大きな体に立派な髭。。顔は色黒だけどつくりは雄々しさを全面にもっているし眉毛も太く意志も強そうに見える。。。たしかに見立ては悪くない
が。。。
その言動は「子供」のようだ
そんな私の目線と交互するように政景もじっくりと私を見ていたのだろう
「オマエは!!全然綾に似ておらん!!少しは可愛げでもあればこんな粗雑な仕事に就いて「女」を忘れずにすんだことであろう。。。哀れじゃ」
よくわからないが
政景も「何か」を言い切った感で少し落ち着きを取り戻した
例の近習達が小声で何かを吹き込んでいる
こんな見え見えの場で「策謀?」
引きつっていた顔を無理矢理柔らかくすると
軽く咳払いをして
「こんなバカバカしい争いはやめよ!!そもそも晴景殿も人が悪い。。年の頃も熟したおぬしを「嫁」にやらず「戦働き」をさせるなど。。」
何か企みを含んだしゃべり方を始めた
厳めしく尖った目を繕うように額に手を当てて隠す。。。。
ずいぶんとわかりやすい「謀」。。。なのか?
努力の割りには相変わらず
怒りで真っ赤になった顔色はそのままで口元は無理に
気持ちの悪い口だけの笑みを浮かべて続けた
「わしに従え。。悪いようにはせん。。そうだ良き嫁ぎ先もみつけてやろう」
。。。。
「嫁?」
私は首を傾げた
傾げたままとなりに立つジンを見た
「嫁ぐのか?」
「オレが?」
目線を向けられたジン「阿形」の獰猛な惣面の下で目を泳がせ素っ頓狂な事を答えたがすぐに持ち直して
「トラがだろ?」
「私が?」
そりゃそうだ。。。。しかし
つい腕組み
困った顔の私を見ながらジンは答えた
「嫁の修行は積んでないんだろ?」
。。。
そうだそんなものは今まで一度だって学んだ事もない
変な質疑の応酬だったのか怪訝な表情を「吽形」の惣面の下にかくしながらも驚いた目でこちらを見ていた段蔵に聞いた
「私は。。。。姉上には似てないのか?」
姉上。。「綾姉様」の事。。
私はやっぱりあまり憶えていないただ噂は十分に聞いていた
「美しい」と
段蔵は警戒を怠らないよう政景の方に顔を戻しながら
「まぁ。。どちらかと聞かれれば。。綾様よりは御前様(虎御前)に似ておられます」
。。。
「だったらなんで可愛くないんだ?母上は十分に美しく可愛らしいお方だ!!失礼ではないか!!」
「この状況でそこが問題ですか?」
私の激した発言に段蔵が溜息混じりで返答した
同じくジンも
「トラ。。ずれてる」と
「とにかく!こんな無駄な事はやめよ!!ココで「戦」になったら今までそなたがしてきたような「小競り合い」ではすまなくなるぞ!!」
政景の不用意な発言で私は「怒りの火」の元に心を戻した
「小競り合い?」
念を押すように聞き返した
「そうだ!今まではそなたが怪我せぬ程度で済んだ「戦」であったであろう。。。本庄や直江に守られて栃尾の衆に祭り上げられた「楽な戦」だ。。。だがわしと事を構えたらそんな「女々しい戦」ではすまんぞ」
「なんだと。。。」
笑う口元の男に
唸るように答えた
顔には怒りの目が宿っているハズだ
キモチワルイ
政景に付く近習の若い男達も声を揃えた
「虎姫様。。。。打掛もよう似合っております。。。「戦ごっこ」など女にとってなんの役にもたちますまい。。我が殿にしたがいなされ!」
有象無象の馬鹿ものどもの真ん中政景は両手をあげて続けた
「戦の中身は男の世界だ今まではオマエのもつ「長尾」という名声を楯にして勝つ事が出来たのであろうが。。いやもちろん本庄殿の助けもあったのは認めようが。。今度はそんな「安直」にはいかないぞ。。。「争う」のは無益な事になるだけだ」
大軍団を自慢げに。。。。声高に。。。。
それはいったいオマエたちの何なのだ?
頭に「闇」が去来する
渦巻く闇の主は私に言う
「許すな」。。。
「許すな」
「許せる訳がない。。。。許さない。。」
長尾の名声?
そんなものがこの「越後」に鳴り響いていて
それを国人衆が恐れていた?
だったら何故争いはやまなかった?
そしてその「名声」に力があるというのなら
何故「長尾政景」が守護代を支え戦ってこなかったのか?
傍観を決め込み続けてきた理由はなんだ?
大きく頭を振って見せた
まったく。。。
なんというバカげた言いようだ
胸の真ん中を手で強く押さえた
熱くこみ上げる想い
私は真っ黒な怒りを自ら纏うことにした
思い返せばわかる
私の「戦」への道程が「安直」だった事など一度だってない
初めて自分の中の恐怖を知った「三条」との「戦」
あの時。。。。「つや」を見た
国の礎となる民,百姓の血を自分たちのおもうままに流してきた者たちとの対峙。。。
黒滝での「戦」
二度の謀反によってその一族はおろか城下に住まう全ての者達を「撫で斬り」にせねばならなかった事
夥しい血
「戦勝」にともなった心の痛みと
「勝つこと」の犠牲になってくれた栃尾衆の男たち
傷つい者たちを癒し城を守ってくれた女たち
安くはないこの戦の日々を
この男は「小競り合い」「女々しい」と。。。。
「罵倒」した
「その言葉そっくり返そう。。。貴方は「戦」を知らない」
ゆっくりと揺れる
これは心を揺らす「怒り」
目の前は暗くなった
政景が私の反論に激怒し吠えているのが見えるがそのくだらない声も「言葉」ももはや耳には入らなかった
まったくくだらない存在に成り下がっていた
大柄でさも「戦」を知ったかのように語る口
端正な雄々しい容姿とは裏腹になんと薄ぺらい男であった事か
「くだらん男だな貴様は。。。実にくだらん。。。」
右手を大きく挙げやつらに背を向けた
政景は相変わらず吠えていたが
私の動きに国分は敏感に反応していた
主の前に楯のように立つ
「影トラ!!後一日考えさせてやる!!だから。。」
笑った
政景のくだらない「交渉」は「命乞い」をしているようにしか聞こえなかった
そんな事は無意味だ
はっきりとわかった事
政景は私を恐れていると。。。。
深く息を吸う
心に新鮮な風を吹き込む
右手を挙げたまま最後の挨拶に振り向き大きな声で
「長尾影トラは容赦はしない!!「今より」存分に戦おうぞ!!!」
と
響き渡る大きな声で高々と宣言した
並ぶ軍勢に波風のように広がるざわめき
全ての目が「恐れ」を宿している事に気がつく
その恐れ。。。。
おいしく頂こう
挙げた右手を力を込めて響かせよう
「戦え!!!」
私の声に砦に潜み構えた「栃尾衆」が答えた
「応!!」
その怒声は大きく響く
「戦え!!!」
目の前響き渡った「鬨の声」にも近い雄叫びに驚愕も露わな政景をあざ笑う
「応!!!」
再び帰る「力強き」男達の声
これが「戦」だ!!「戦」という「炎」を纏う男達の声だ!!!
「戦え!!!」
「応!!!」
満面の笑み。。。。
時は来たり!!今来たり!!!
ついに私は「修羅」となって乱を呼び
この地を乱した「馬鹿者」たちをなぎ倒し。。。。荒れ果てた地に死に体を築く者となる!!!
赤い打掛が一陣の風に大きくなびく
髪は揺れ逆巻く
「放て!!!」
数百の火矢は蒼天の下,流星のごとく空を舞った