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その30 鼓動 (4)

すいません。。。。。

のっけからすいません

鼓動(3)を投稿する事を忘れて(爆死)いました

一話差し込みしました

鼓動(4)は前回の(3)だったものです。。。。


すいません。。。。

同時進行で数話書いているので話しが前後してしまって申し訳ありません

話しの流れが極端に変だったので今日チェックしたら。。。発覚しました。。。


ひょっとして疲れているのか?ヒボシ。。。


しかし

終わりも近づいています

後少し頑張っていきますので優しい目で見てやってください。。。


頑張ります!!!

綾は晴景はるかげの妻「あさ」殿の元に来ていた


「姉様からもご助力頂きたいのです」


城に残された翌日から必死の思いで「母」虎御前を説得したが。。。ダメ

予想以上に根深い母が持っている「遺恨」はけっして晴景に頭をさげないという言葉で断ち切られ

その後

兄,晴景にも交渉は断ち切られで

綾自信の心の方が病んでしまいそうな結果になっていた


だけど「刻」が安らいで日を延ばしてくれるわけではない


昼の使い番の報告では

政景は坂戸で集兵をすませ「栃尾」に向かっている


政景には口がすっぱくなるほどに「影トラ」の事。。酷く扱わぬようにと頼んだから

多分約束は守ってくれるハズだが


さきほどの事

晴景の方はまるで「氷」の対応で

取り憑く島さえみつけられない状況だったのは。。。危険な事だった


いくら政景が「穏便」に事を運んでくれても「守護代」の地位とういう「餌」の前で影トラの「死」を晴景が求めれば。。。。それを避けて通る事はできない

だからこそ「影トラ」の助命嘆願に力添えできるのはもはや守護代妻の麻しかおらぬと信じての訪問だった



「わたくしでは。。。何の力にもなれません。。。」


萌葱もえぎ色。。深い緑の打掛にすっぽりと覆われてしまうほどに痩せた小さな麻は

悲しそうにつぶやくように答えた

その姿に火鉢の前で付き合わせるように座った綾は少なからず驚いた


かつて

晴景の婚儀で見憶えていた麻はもっとふくよかで柔らかな頬を持つ美しい人だった

なのに

今目の前に座っている麻の姿はまるで生気のない人形のようだ

痩せた手を隠し

頬には窶れが表れていた


「姉様。。。」



隠された手に綾は自分の手を重ねた

骨。。。

それを感じてしまう。。。


「殿(晴景)はわたくしの言葉など耳をお貸しにはなりません。。。もう。。。幾月も会っておりませんし。。。」


重ねられた手から視線をあげ

綾を見つめた目にはうっすらと涙が浮かんでいた


綾も薄々それには気がついていた

例の事件になってしまった「猿楽」の宴の時に麻の姿がなかった事

話しでは

新春の席にも顔を出していないこと


「どうしてですか。。。。どうなさったのですか?」


麻は首を小さく振って涙を隠した

「わたくしは。。。殿にとって今は「不要」な者なのですから」

「そんな事!!」


今にも泣き崩れてしまいそうな麻の手を綾は自分の方に引き寄せた

細い

あれほどに豊かで「女」というみずみずしさを現していた可憐な花だった人は今や枯れて地に落ちてしまわんがばかりに

その花を拾わなければと綾は自分の肩につい引き寄せた



綾に抱きとめられた麻は堪えられなかった涙をこぼして言った

「どうしてですか。。。。」


綾は悲しかった

激しく心を突き刺さす言葉だった「良人つま」(夫)に「不要」などと。。。そんな事もし政景まさかげに言われてしまったら生きてはいけない

麻の中にあった深い悲しみで言葉を失ってしまった


言葉を失った綾の胸に力無くもたれかかったままの麻は小さな声で続けた


猿千代さるちよ。。。あの子がいなくなってしまった時に。。。そうなってしまったのです」


猿千代

それは晴景と麻の「待望」の男子の名だった

麻は思い出話を話すようにゆっくり綾の胸の中でその事を話し始めた


「猿君が産まれたときがわたくしにとっての最後の喜びの時にございました」


細くなってしまった手を伸ばし赤子を抱くようなしぐさをする

「待望のご嫡子にございましたのに。。」

綾は涙ぐみながら麻の顔を見た

まだ幼い時に「猿千代」はこの世を去ってしまっていたのだ


「ええっ。。。。男子を成した私に。。。やっと殿からの「優しさ」を頂けると。。。思うておりましたのに」


「やっと。。。?」


麻の顔は




「どうしてでしょう。。初めてお会いした時から殿の心は何処にあったのか。。わからなかったのです」


深く思い出の闇に。。。。

麻は目を閉じた

婚儀の日から晴景との会話はなかった

それでも初めてあった晴景の姿に心を躍らせた

父,為景のように「武」の気勢を全身で現している猛々しい方だったら。。。どうしようなどと娘心におどおどとしていたのだけど


目の前にあった顔は

優しく美麗な眉と切れ長の目

まるで「源氏物語」に出てくる光様のような顔。。。。

「戦」という世界から遠い「御伽」のような殿様に

踊る気持ちを彩った

盛大な式

守護上杉様に多くの諸将に囲まれた宴

自分が「幸せな姫」であると心から思った時だった



だけど。。。。その時にはまだわからなかった

女である自分の向こうに晴景が「何を」見ていたのか

その目が

婚儀の時。。。見つめていた先。。。


ずっと

ずっと


晴景が悲しそうであった事に

そして婚儀の後に続いたのは「寡黙」な日々だった

その頃まだ健在であった為景様に顔を合わせるたびに言われた事


「早く和子わこ(男子)を作れ」


営みは。。。まるでそのための「作業」だった

晴景にどうやって自分を知って貰おうと話しをしてみても。。。

言葉の少ない夫婦だった

だけど

大事されていなかったわけでもなかった

何か事があれば晴景は打掛を新しく作らせたり庭に植樹をし花をみせたりとしてくれた


少しの笑顔を見せ

晴景もとまどいながら歩み寄ってくれていた



少しづつ。。。進めばいい

まだ自分に何かたらない所があるならその間に正せば良いと

和子が授かればきっともっと「愛し合える」と。。。。




信じていた




だけど

「待望」であった男子の誕生が。。。。夫婦に亀裂を作ってしまった


「わかりません。。。何故ですか長尾家の待望の男子を成されたのに何故。。」

話しを聞く綾もすでに泣いていた

まだ

政景との間に子を持たぬ綾には。。。あまりに辛い話しだった


「わたくしが。。。猿君の「母」になってしまったからでありましょう」

「何故。。。」


麻は両手で自分からだを抱いた

唇が震え

枯れていく花の目から涙は止まらなかった


「あの人は「母上」をご存じありません。。。だからいつもそれを探そうと見つめていらっしゃった。。。わたくしの中に「母」を探していらっしゃったのでしょう。。なのに。。。和子を成した私はそのお心に気がつく事ができなくなってしまったのです。。殿をないがしろにしてしまった。。。」


両手で顔を隠した

「寡黙」だった日々

それでも自分を。。いつも見つめていた目線の先にあったのは

自分の知らぬ。。。憶えていない母の姿だったと麻はそれに気がついたと泣いた


「そんな事。。。。」

「そういう事なのです。。。。」


「何故あの方の望む気持ちに気がついてあげられなかったのか。。。未熟でした」

綾は首を振った

「姉様が悪いのではありませんでしょうに」


涙の綾に顔を合わせた麻もやはり首を振った


「いいえわたくしが悪いのです。。。何もかもに気がつくのが遅かったのです」


そういうとあの「愛児」猿千代が亡くなった時の事を話した

流行病ではなかった

ただの風邪をこじらせただけだったのに

子の身体から暖かさは見る間に失われていった


麻は寝ずの看病を続け祈祷を捧げ続けたが

ついにその子の手は力無く滑り落ち命は露と消えてしまった


狂ってしまいそうだった

和子誕生以来

晴景との関係は凍りついていた

だからこそ可愛い我が子の事が全てだった


全てが消えてしまった失望から部屋を出たときに晴景と出会った


「何故!!!何故!祈ってくださらなかったのですか!!!」

行き場の無くなった母の心と

寡黙だった日々への憤りを夫の胸に叩きつけた



「辛かったのです。。。」

目をつむり綾の腕の中でとぎれとぎれにも話しを続ける

「辛いです」

綾はただ頷いた


「でもあの方も辛かったのです。。。。」


殴りつけた胸

色々な疲労でその場に座り込んだ麻に晴景は言った



「すまん。。。わしが代わりに死んでやれば。。。母と子が別れる事もなかったであろうに」



少ない涙を流した。。。。と





綾はもはや何も麻に頼むことは出来なかった

麻は綾に話しが出来て良かったと言った

それほどに思い詰めていた事だったのだろう


同じ女として話しを聞いてくれた事にただ感謝された


「それでもわたくしは晴景様を変わらず慕っております。。。殿の行く道を信じる事がこのおろかな妻のできる唯一の事なのです」


そう言い

細くなってしまった面に笑みを浮かべた姿が。。。痛かった

静かな消えてしまいそうな鼓動の麻は。。。。悲しそうに助力は出来ないと綾を送った


「戦」は今日?明日?。。。。始まってしまう

歩く廊下の途中。。。。

綾の目にもとまらぬ涙



「影トラを嫌うのは。。。御前という母がいるから?」

風が白く立ちこめた雲から少しの雪を運んできていた

手のひらに載り消える白


もはや万策が尽きてしまったように雪はまだ地にとどまれず。。。。消えて行く


「私も。。。祈りましょう」

綾は回廊の中で一人つぶやき手を重ねた





戦は明日に迫っていた

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