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その27 つや (1)

何に祈ったら。。。。この願いは届けられるのだろう。。。

冷たい板間

身体から熱を。。。「信心」という熱と心を奪っていく



これほどに私の心は脆かったのか。。。



観音菩薩に祈り続けていたが

今その手を下ろした

すでに力無く。。。数珠も手から流れ落ちてしまった


どれほど祈っても。。。聞き入れては貰えなかった。。

何か足りなかったのか?

まだ。。否

何かが必要だった?



夕暮れが近づく

屋敷の中の音が聞こえる

どこもかしこもの音が今までとかわる事がないのに


何故




「戦」なのか

それも血を分けし「兄」と

それは正しいのか?

正しいわけがない


父を同じくにする兄がどうして私を討とうとしているのか?



あの噂に。。。


どうしたら。。そんな事があり得ない事だとわかっていただけるのか?

きっと

母上もこのことで私を「愚か」と深い悲しみの中におられる事だろう



今。。私は


何を願って「祈れ」ばいいのか?

涙がこぼれた

祈りは遠くにいってしまったのに

「闇」の声だけは。。。時々聞こえる私を「淵」に落とそうとする




「あなたならできる」


そんな事を私に告げないでくれ。。。

何故私にそんな事を。。。。

それほどまでの「念」を持っていたのならば何故守護代にその事を告げなかったのか?

死した者の夢に私は追われているか?


悲しみで背中を丸め

両手で顔を覆った声を出して泣いてしまう。。。耐えられない





「おトラ様。。。おトラ様。。。」


あやうく泣き言を大声でわめきそうになったその時

新調されたばかりの障子張りの向こうに聞き慣れた声が私を呼んだ


外は夕暮れの日差し

小さな影が茜色の光をあびて


「おトラ様。。。」

乱れた息が私の名を呼ぶ

幼い声は

「つや。。?」


私は腰をあげ戸を少し開けた

久しぶりの顔は涙で濡れ肩で息をしなくてはいけないほど身体を震わしていた


「身なりはきちんとしなさい」

私は自分を落ち着けるためかのように

つやの着物の乱れを正そうと手招いた

フラフラとてた足取りではあったがつやは真っ直ぐ私に向かって


「おトラ様。。。。」


縁側から石段を登って泣きながら言った


「戦しないの?」

懐かしい。。とおもうほどしばらく会っていなかったつやの口から出た言葉に私の身体は硬く強張り

伸ばした手が宙を彷徨ってしまった


背筋が震えた

軽く首を振ってみる

つやに言うべき言葉が見あたらない

唇がただ声もなく動くだけ


ダメだ

自分を。。。


目もあわせずに足を戻した。。部屋に戻ろうとした時


そのまま

つやは私の襟首を抱きつくように掴んだ


「戦しないの!!おトラ様!!」


ああっやはり


急に心に火が走った

何故。。。

こんな事をつやにまで言われなくてはならないのか!!

私の心に溜まった怒りはすぐに顔にまで登っていたが

その形相にきっと。。つやは気がついていたハズなのに


より強く私の襟を引いて叫んだ




「戦して!!!」



手を引き離そうとした私に。。。。

放そうと掴んだ手にさらに絡めるよにしがみついて。。。つやは続けた


「戦して!!戦してよ!!じゃないとみんな死んじゃう!!死んじまうよぉ!!!」


必死の手

小さなつやの考えられないような力が私の身体を揺さぶる

流れる涙が弾け

私の頬に当たる


「戦。。。。何で。。。。」


引きはがそうとした手でつやの肩を掴んで首を振った

出来るわけがない

なんでそんな事を。。。。必死に言う?


「戦はしない。。。。出来ない。。。。」


私の答えにつやは顔をくしゃくしゃにして泣いた

泣いて

続けた


「いやぁ!!!戦して!!戦してよ!!戦してよ!!」



目眩

揺れる。。。。あの闇の声たち

「戦え」と私を誘う闇の声


それはいったいなんだ!!!


割れそうな頭。。私は身体に掴みかかり強く襟を引くつやを力任せに引きはがした


「出来るわけないだろ!!!戦なんて!!!絶対にできない!!」


おどろき言葉を無くしてしまった

小さなつやの顔を両手で捕まえてゆっくりと顔を近づけると唸るように言った



「兄を殺せと?その口が言うのか?」


涙をたたえた小さな泉の瞳は。。。。

負けなかった

睨む私をにらみ返す


「守護代様あっての越後ぞ!!」


つやは

頭を掴む私の両手から勢いよく逃れようと跳ねた

跳ねて叫んだ



「守護代様は。。。。守護代様はかか様を助けてくれなかったよ!!」

私の手から離れたつやは

にげなかった

そのままさらに身体を前に進め怯まず言った


「守護代様は何もしなかったのに。。。何が偉いの?オラたちのために何してくれたの?。。。何もしてくれなかったよ!!何も!!!」



伸ばされる手を払った


それでも怯まず

それでも涙で続ける


「オラたちを助けてくれたのはおトラ様だけだよ!!おトラ様が戦してくれないとオラたち。。。死んじゃうんだよ!!!」


耐えられない

私の心に亀裂が入る

「助けて」という声が闇とかさなる。。。そうだ。。「あなたなら」と


私を誘いに来たのか!!

大きく手を回し着物を引っ張っていた手を投げた

危険だ。。。

こんな思いを近づけてはいけない



。。。。

なのにつやの目は真っ直ぐだ

信心な目で涙の懇願を。。。


その目は

真っ直ぐな目は見られない


「知らん!!!」


ただ夢中に繰り返し手を振った「これ」を自分の中に近づけてはいけないと何度も心を叱咤し

つやから身体を離した



そんな懇願はやめろ。。。

その願いの先にあるのは「兄上」の死。。。

叶えていいわけのない願い


襟を正し低く言った



「下がれ。。。。」


「助けてよ。。。おトラ様ぁ。。。。」

縁側でつやは倒れるように泣き伏せた

小さな身体はずっとずっと震えていた

「守護代様は何も。。。しなかった。。。」

私は胸を押さえて自分に問うたが。。。。それを理解はしたくなかった

「ダメだよ。。。出来ない。。。」

俯いた




「おトラ様ぁ!!」

それでも叫ぶ声に首を振った

「つや!!」


いつの間にか

いや

ココのところほぼ毎朝大騒ぎだったのだから誰もが気がついて当たり前だった

いの」を頭とする侍女たちが部屋の周りに集まっている


すわったまま泣くつやの肩を多英たえが抱き寄せた

私はきつくと尖ってまった声を抑えて多英に言った


「つやと共にみな下がれ」


「下がりません。。。。お聞き下さい」

私の命(命令)に答えたのは実乃だった

三日前にも言い争いになったばかりだが

あの日

私の前に座した時以上に厳しい表情のまま重い口は告げた


「守護代様の命(命令)により長尾政景軍。。。二日前より栃尾に向けて進軍しております」


逃げるように奥の襖に手を掛けていた私は振り返った

「なんだと?。。。何で進軍している?」


絵空事

動揺を呼ぶための悪質な。。。。


なのに。。。。「真実」がやってきた事に心は素直に反応し

息が詰まらせ

身体を崩し前に膝をついた


「どうして。。。。」


頭を抑えた

どこかで

まだ心のどこかで「兄上」と信じていたものが。。。


「おトラ様!!」


膝をついた私の前に泣いていたつやが目の前に走って両手を広げた

手の中に転がる二つの「黒い飾り石」


「戦して。。。。つやの宝あげるから。。。。みんな助けて。。。」


小さな手。。。。

それは話しに聞いていた「形見」。。。。

つやのかか様の宝

つやの耳に光る石とおそろいの。。。。。「宝」




「戦して。。。お願い。。。。」


両手を高くあげ伏して泣く

懇願の言葉にみなはしずまりかえり

肩を助ける多英も泣いていた




泣いた





「嫌だ」

そんな事を私に。。。。言わないでくれと

米山合戦。。。。


後書きからコンニチワ〜〜ヒボシです

年末って事もあって忙しく過ごしておりますぅぅぅ


さて

新章に入りましてこれからいよいよ「米山合戦よねやまがっせん」に入って行くのですが

あ〜〜

ネタバレはないですけど

純粋に物語りを楽しんで下さっているのなら読まない方がいいかもしれません〜〜(藁)






米山合戦は。。。。実は史実的には無かったのではないか?

最近の研究では言われています

米山合戦の資料としては件の「北越軍記」が大きいのですが

これは武田の歴史をつづった「甲陽軍鑑」が江戸時代武家の中で流行った頃に「宇佐見」の曾孫と称する「宇佐見定行うさみさだゆき」が軍記物として書いた

という経緯があり「史書」としての信憑性に偏りがあるからです

北越軍記は前半は何かにつけ「軍師,宇佐見」と相談して国の行く末をきめる景虎様が書かれています

ところが実際の宇佐見は景虎様からは疎まれ「要注意人物」とされあまり大事な仕事をさせてもらえませんでした

そのことは彼の書いた手紙に「不満」として残っていたりもするそうで。。。

先祖の名誉回復のために書かれた軍記物。。。。という部分が見え隠れしています



じゃあ戦はなかったのか?

というとかならずしもなかった。。。。というわけでもないようで

やっぱり「お家争い」はあったようです

大なり小なり


なので。。。。カイビョウヲトラでは米山合戦をやろう!!(藁)と

いろいろな逸話を織り交ぜながら物語を作って行こうと



なのであまり「史実に一致しない!!」などと虐めないで下さい(爆)

その胸は0章にも書いてありますのでご了承下さい



そんなこんなで

デッドヒート!!!年末もがんばって書いて行きます!!!頑張ります!!!




それではまた後書きでお会いしましょ〜〜

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