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その26 激流 (3)

「お願いです!!どうかお聞き下さい!!」


私が閉じこもった部屋の前で実乃は話しを続けようとした


「嫌だ!!!何故兄上と戦わなくてはいけない?。。。きっと。。まだ。。返事が。。。」


涙を拭いて首を振った

こんな恐ろしい事があっていいわけがない

手が震える祈るように抑える

どこかで。。なにかが

「間違って」伝わってしまっているんだ。。。

私何度も頭を小突いた


どこかに自分の至らなさがあって。。。兄上が勘違いしていらっしゃるのでは。。。と

あんな下世話な風評を

守護代という重職を担っている兄上が鵜呑みになど。。。絶対にしない。。




どうして私が「守護代」の地位を狙うなどと考えるのか




「次に栃尾に送られてくる書状は「全面降伏」しかありません」


苦痛

胸を割らんがばかりの痛みに身を崩し倒れ込みそうな私の背に

戸越しに実乃の声は告げた


「何故!!」

手を床に叩きつけた

ふるえなのか痺れなのか?凍えたように動きを留める事ができないその手を

何度何度も

身体を突き刺した痛みで「闇の意識」が溢れ出し「力」を止められない


でも

こんな事で「闇」に従って言い訳がない



障子の向こう影になって見える実乃に怒鳴った

「何でだ!!!」

目の前に整えておいた文台を蹴飛ばした



「それほどに影トラ様あなたは望まれた「大器」である事を越後に示されたからでありましょう」


「大器?」

実乃は影を近づけて言った

「亡きお屋方様(為景)の正しき血を継ぎ「現すこと」の出来る者として。。。長尾の。。越後の全ての者が貴方の強さに惹かれそれに従い「国」がまとまろうとする事を「大器」と言わずどういいますか?それを「何故」と問われるのならば。。嫉んでおられるのです。。守護代様は自分では成し得なかった偉業をこなした貴方を恐れておいでなのです」


頭を床に打ち付けた

「どうして。。。。越後のために。。。戦ったのに。。。そんなふうに」


私は名誉が欲しくて戦った訳じゃない

名声もいらない

ただこの国がよくなって欲しかった

栃尾に来る時に見たあの痛ましい「死」の姿。。。国が持つ「傷跡」を癒す仕事をしたかっただけ。。。。


兄上もそれを願ってくれていると信じていた

いや

それが守護代様の願いのハズだ

ならばまさに「何故」だ



「だったら。。何故守護代様にその責務を果たせとオマエ達は求めなかったのか?」


唸るように低く渡しの棘が実乃に聞き返した

主君を盛り立てるのも家臣の仕事の一部だ

それが良い関係になかったから「黒滝」は滅びた

どこにあってもその関係はかわらないハズだ


実乃は口ごもった

何かに耐えるように言葉を抑えた影に私はすずりを投げた


「何でだ!!!」


破れた障子の向こう沈黙を守る実乃に顔を近づけた

障子の枠に手をかけ荒々しくへし折った


「何故守護代様に求めなかった?何故私にこんな事をさせた?」


「影トラ様。。。貴方に亡きお屋方様をわしは見たからです。。。。」

私の手が障子を破壊していく

眼前で実乃は続けた



「亡きお屋方様のごとくその偉業を継ぎ越後に平安をもたらす事が出来るのは貴方だと信じたからです」


頭が痺れてきていた

「闇」の力は声を与えはしなかったが私をどっぷりと怒りの淵に連れ込んでいた

首を右に左にゆっくりと振った


「お屋方様だと。。。。。私は全然「知らない」ぞ。。。」

目を開き怒りで震えた


実乃の言葉に苛立ちが身体を熱くし

私はゆっくりと「闇の意識」に染まった声で答えた




「父上を私は知らない」




父上を憶えていない。。。。

いつもどんな時も私は「父上」の話題がでれば聞きたかった事だった

私は父を知らない

私の中ある父上は消えてしまいそうなまぼろしのような「後ろ姿」


顔も

手も

声も


何も知らない。。。。憶えていない


だから

どんな事だって知りたかったのに誰も教えてはくれなかった

みな同じ答え


「戦鬼為景」



そう言うだけだった


そう言うだけなのに

その影を私に見ただと!!!


「私のどこに父上が見えた?。。。。答えろ。。。。」

片側の障子戸を完全にバラバラに壊して実乃の前に座り顔をよせて聞いた


「目か?鼻か?口か?。。。それともこの心にある「怒り」か?殺したいと思う「欲」か?逆らう者を許さぬ「鬼」である事か?」


視界が歪む

答えようとしない実乃を。。。。斬ってしまいたい

いつもと一緒

父上の事を誰も教えてはくれないのに?


「何も教えぬのに。。。。父の影をいったい!!どこに!!私のどこに見た!!!答えろ!!!」



涙の目

実乃は耐えた答えを言った


「貴方がこの世に生をえた時から「越後」を制する者と信じておのました。。。その志を見ておりました」


「それと父上となんの関係がある」

もう片方の障子戸を蹴破った

もう一度そのまま蹴り倒そうとした足を実乃が掴んだ


「その志こそが。。。お父上様。。。為景様の影にございます!!!」



つかんだ足を放し実乃は顔を伏せて

ひれ伏して続けた


「だからこそ!!!戦わねばならんのです!!!強き男の意志を継げるのは貴方しかおられないのです!!」


懸命な説得をする実乃の背中

その向こう側

本当の「心」を見ようとした私の視界は真っ黒に変わった


闇の声

耳元に聞いた声がする



「あなたならできる」



炎の中燃え落ちる城の影

憮然とした態度で立っている男

黒田は生々しい傷のまま私の「問い」に答えた


「力無き守護代。。長尾晴景ながおはるかげさまに私は従えない」


黒田の後ろに従う者たちは声を合わせて言う

それはこれまで打ち滅ばした者たちの影

この争いはどうしてつづいた?

この争いがなければ死ぬことなく過ごすことのできた者たちがどれほどいた事か


声が大きく近づく



「時には笑って人を殺し泣いて従わせるほどの「器量」を持ち合わせた強き「守護代」が「越後」には必要なのです」



闇の影たちは

私に手をのばし助けを乞うように声をあげた


「強き守護代を!!!」


迫る手

血に濡れた手

その手たちが折り重なる



意識が。。。。。



「あなたなら出来る」

目の前

私の目を反らすことなく見ていた実乃の声で世界は元にの色に戻った


「正しきを示さねばなりません」


「戦う事が正しいと?」


目から涙

戦いたくない

血など見たくもないのに


「正しきの元に血は流れる」


自分に向かって

胸を押さえるようにつぶやく



兄と戦う事が正しいとは。。。。思えない

そんなことを望んで今まで戦ってきたわけでもない

その末に

私が「守護代」になる事を正しいだなどと思わせたのならば。。。

それが私の過ちだ



静かに立ち上がった


「ダメだ。。。。。戦えない」

引き下がらない実乃に背を向けて言った



「兄上に手をあげてまで得た物に。。。。そんな者に何が従うものか。。。」

「影トラ様!!」


必死の声を静かにかわした

「私には出来ないそんな恐ろしい事が出来てしまうのなら。。。。私は。。。」


奥の間に足を進めて言った




「許してくれ。。。戦えない。。。。」

挿絵解禁。。。。


後書きからコンバンワ〜〜ヒボシです


何やら

近々小説になろうで挿絵が解禁されるのでは?

などというニュースを小耳にはさみました

お〜〜

凄いなぁ


誰かトラとか書いてくれないかなぁ〜〜

実は前に「絵師」さんに打診していたのですが。。。。

断られまして(爆)


自分で書いた者が何枚かあったりするのですが。。。

緒戦トーシロー(藁)のやる事ですから。。。ダメダメでした

いや

ダメでしょうねぇ

絵。。。。うまい人はバンバン張るんだろうなぁ。。。いいなぁ〜〜〜




そんな午後でした(藁)


それではまた後書きでお会いしましょ〜〜〜

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