その24 月華 (7)
天地を割る雷鳴がごとく炎の舞台にもう一人の役者が降り立つ
「閻魔」がごとく逆巻く炎の壁から表れた大男
兜を着けず顔もあらわになった姿
髪はそのまま荒れ狂う熱風に動かされ鬼の鬣のように天に向かって揺れる
品に狼藉を始めていた男たちはひるんだ
真っ白な具足に降る火を纏った大男は肩に朱槍を回し笑った
不敵な口元に「牙」が無いのが不思議なぐらいだ
燃え上がる炎に照らし出され浮かび上がる恐ろしい目を持つ者
それは鬼神か?
下郎たちは怯え及び腰になり
逃げだそうとする者さえいたが
大鎧の男はぎらつく目でつがえた矢をそのまま表れし鬼神に向かって放った
目の前に表れた
「兜首」
容赦のいらぬ手柄首
女を殺すことなどなんの手柄にもならぬつまらぬ仕事に下郎をつれて入った館で白糸威の大殊勲を見つけたことに男の魂は燃えて踊った
冴え渡った「武」の心
その意志を伝えるがごとく
凶刃の矢はまっすぐに鬼に向かった。。。
が鬼神は身も軽く槍を踊らす
刃風で火を消してしまうのではないかと思うほどの振りに矢はあえなくたたき落とされた
「ねらいが良すぎたな。。。。」
鬼は顎をあげ満足げな笑みを向けた
大鎧の男は弓を投げ捨てた
怒りではない。。。苛立ちでもない
「喜び」。。。。女の首を持ち帰る仕事などより
ココで相まみえる喜びを見いだせたから
男達は間合いをつめた。。。大鎧の男は槍を構えると声をあげた
「我こそは!!」
しかしその名乗りに続きはなかった
鬼から飛ばされた小太刀は風を切ってみごとに喉を刺し通した
勢いあまったかそのまま下郎達の中に男は目を見開き声を失った「口」と「喉」から血を吹き
あっけなかったこの世の終わりに力を失って崩れた
「ねらいがイイだろう。。。」
小太刀を投げた手を握りかえして余裕の態度で鬼は言った
「オマエの名前など聞いてはおらん。。。。」
自分に感心をもたれなかった無念をこの男は耳にいれる事なく絶命した
そのはき出す血霧の小太刀は品の手に届いた
無念の中。。死した男は品の横に「武器」を届ける最後の仕事をした
品はすぐに喉を貫いた小太刀を抜き取り。。。
吹き出す返り血を物ともせずに自分の身体を押さえつけていた汚らしい腕を斬りつけた
あっけに取られていた下郎たちは急な反撃に次々と倒れ
腰を抜かし
自分たちの立場が一瞬にして「奈落」に落ちた事を確信したが
すでに退路を探すには遅かった
「やれ!!」
手早い指示
鬼の後ろに控えた強者たちが次々と炎の壁から飛び出した
鍛えられた精兵たち
その姿は
最後の時を迎えた下郎たちにとって
地獄の池から溢れ出す「邪鬼」たちにみえたにちがいない
そして分層御な死の中におちてゆく
見苦しい絶叫の果てに
梅の木や炎にゆれる箱庭に
誰も踏み込めなくなった舞台の真ん中。。。鈴姫は
周りで起こっている地獄に感心さえしめさず静かに立っていた
足下まで火で埋め尽くされすでに手の届く位置にはいなかった
「もう舞わぬのか。。。。天女よ。。。」
鈴の目の前
火の輪の真ん前に
お供の声を上げた鬼は向かい合うように立っていた
「為景兄様。。。」
焼けた打掛けを脱ぎ捨て小袖一枚になった痩せた姿は熱の風に揺らめいた
屋敷の全てが灰燼と化してしまうのにもうそれほどの刻はない
鈴姫の姿を見つけた品が血みどろになったまま走ってきた
顔を切られたのか
左頬に深い切り傷。。。。いやいたるところに怪我をしている
着物もはだけボロボロの状態にあったが
「姫様を助けてくださいまし。。。。」
走り寄った為景の足下に土下座をした
周りの男たちが着けている旗が「長尾」の物である事で救いを求めたのだ
それに鈴は首を振って
炎にかき消されぬよう大きな声で言った
「兄様。。。品を連れていってください。。。私はココで果てます故に」
鈴の目には自分を守って死んでしまった香奈の倒れた背中が見えた。。。
品は自分の母にすがって泣くこともせず
その意志を継いで。。。酷い目にあいながらも自分の事を為景に頼む。。。
そこまでの価値など。。。私にあるのか?
思うほどに
悲しくて悲しくて。。。
こんな事になってしまった後にどうして自分だけが「生きて」いけるものかと
為景は品を連れる事を自分の近習に告げた
品は悲鳴を上げたが
すでに抗う力もなくそのまま引きずられるように屋敷の外に連れて行かれた
「ココで死ぬのか?」
火の勢いは増すばかりの庭に立つ為景は鈴姫に
念を押すかのように聞いた
「はい」
どのみち火の輪に囲まれた舞台には誰も近寄れない
それに
いや
いまさら生き残って。。。どうしたらいい
上杉にも長尾にも。。。どこにも身を置く場所が無くなってしまったし
また
同じように嫁がされるなど。。。考えたくもない
辛い思いに顔を曇らせた鈴
やっとココまで来た「死」を選ぶことに代わりはなかった
むしろ
最後は晴れ晴れとしていたい
滑らかに。。細やかな指使いで
扇を舞わした
「この火の中で私は夜の世界に舞い上がります。。。。さらばです兄様!!」
そういうと楽しげに舞った
羽根を開く鳥がごとく
艶やかに羽ばたく蝶がごとく
足取りに濁りはなく女御の教えた「舞」の名家に恥じることのないように
その答えに為景は笑った
「美しき天女よ。。。。死ぬなど惜しい事を言うな!!紅蓮の炎を物ともせぬ「武運」を我に与えよ!!!」
そういうと槍をふり武芸舞をする仕草で鈴の足下の炎に踏み入った
十分に燃え上がった炎は為景の具足を焼いたが微動だにしなかった
驚きの行動だった
しかし為景は何にも怯まぬ笑みで炎の大舞台に上がった
鈴姫には信じられない光景だった
その力強い手が鈴の腰に回された
「死ぬのなら。。。この美しき天女の魂はわしのものだ!!わしにオマエの全てをくれ!!」
そのまま軽々鈴姫の身体はまるで綿のようにと拾い上げられた
為景の顔を間近に。。。。
強い男の胸の中に
なによりも自分を「欲しい」とこれほどまで強く言われた事はなかった
「私は。。。。」
うわずる声の姫の顔をじっくりと見た鬼は言った
「オマエの持つ武運。。。。その美しさと気高さをわしにくれ。。。オマエの舞はその全てをよく表していた。。。。それを余すことなくわしに捧げよ!!!」
捧げよ!!!
鈴姫の目にはいっぱいの涙が浮かんだ
自分は捧げられた。。。謀の闇に捨てられた花だった。。。。
その孤独な身に
その最後を彩った「舞」に為景は
「武運」を見いだし自分にそれを捧げてくれと懇願している
必要とされる事
枯れ始めていた花の心に甘美な言葉が注がれ輝きは溢れる涙となって流れ出た
どうして拒む事など。。。そんな事出来るはずがなかった
強い腕
厚い胸板に抱き上げられた細い華奢な花は答えた
「私の全てを。。。。」
「オマエの全てを。。。。」
赤銅の肌は白い花の肌をやさしく舐めた
止まらぬ愉悦
絡み合う手で相手の全てをむさぼり
絹を散らした裸を
その隅々までを月明かりの下に花はさらした
濡れた花心に蜜をたたえ
奥深くに今まではただの痛みでしかなかった宮は「初めて」喜びとともに男をを迎え入れた
為景の胸の中
鈴姫は「女」である喜びを謳歌した夜を迎えた
ただ一度の夜に鈴姫は自らを捧げた
ブロク。。。。
後書きからコンニチワ〜〜ヒボシです
ココ何日か友達のHPに。。。。間借りして「カイビョウヲトラ」の秘密基地みたいまものを作ってました
間借り。。。
そもそもヒボシは機械音痴なので自分でHPなんて絶対につくれないのです
だから
友達一号にたのんでちょっと間借りしたのです
。。。
秘密基地。。。
といってもとくに何があるわけでなく
人物評がバラバラあるだけなんですけど。。。
もっちょっと形になったらココにもアドレスを載っけようか?
どうしようか?
考えてます
あった方が良いでしょうか?(いまさら)
そんな感じの多忙な日々でした
それではまた後書きでお会いしましょ〜〜〜