その24 月華 (2)
中秋を越えた寒い空の真ん中に輝く月。。。。
あの日も。。。きっと月は「見ていた」。。。。
あの日も
あの時も
夜という世界を絶え間なく「月」は見ていた。。。。
暗闇の夜
満天の星空を見れば思い出されるのは。。。忘れてしまいたい「過去」ばかり
いつから
こんな「苦痛」が続くようになってしまったのだろう
後悔をしながらも
取り返せない日々を悔いるためにも「勤め」を果たしてきた
奥の客間に室を作らせた「実」は山に吹き上げる冷えた風の下
悲しい顔をしていた
「虎御前様。。いらっしゃいました」
女房の声に窓を閉めた
呼びだてしたのだから本来なら「礼」にのっとり暖をとって置かねばならなかったが。。。
実の気持ちはそんなふうには動かなかった
冷えた部屋
それが心模様そのまま
きっと虎御前の心も冷たい情景を写している。。
女房に通された御前はいつもとかわらぬ表情
御簾で仕切られた中で対面に二人は座った
「他の者は下がりなさい」
実のすぐ横に控えていた女房は驚いた
虎御前の「行状」を前から知っていた彼女は首を振った
二人だけにしたら
行動力で勝る虎御前は「何を」しでかすかわからない
目でさがらない事を告げた彼女に実は言った
「大事な話です。。。下がっていなさい」
長く夫「上杉定実」の代理をしてきた彼女の声にもすごみがあった
女房はあきらめたようにひれ伏すと静かに下がっていった
侍女も連れず
一人で回廊を渡ってきた虎御前の目は夜をよく見ている
御簾越しに顔をじっと見る実
二人の間には沈黙が続く
「何故あんな事を言うたのですか?」
沈黙は答えにならない
勤めを果たすために実が最初に声をかけた
「あんな事?」
意外にも虎御前はすぐに答えた
押し黙って何も答えないのかと実は思っていたのだ
「守護代様の事です。。。これから晴景殿と政景殿が力を合わせ「越後」のために働こうという親睦の場でしたでしょうに。。」
晴景は実にそういう場所だから来て欲しいと言っていた
それが
「謀」の一部である事は薄々気がついていたが
実には請われるままに動くことしかできない事だった
それでも「場所」を考えればあんな酷い「罵倒」は許された事ではなかった
だからまっとうな意見を通そうとしたのだ
が
御前はまったく感心がないように言った
「そんな事ですか」
「そんな事?」
ずいぶんな回答だった。。
が
気を荒立てても話しはまだ何も進んでいないし
もとより御前が「ぶっきらぼう」にしゃべる女だという事を思い気持ちを抑えて続けた
「そんな事ではありません。。貴方の発言で各々の殿様方も大変気分を害したでありましょうや」
諭すように静かに言う
今度は御前は答えなかった
答えなかったが
目は
しっかりと実を見ている
まるで「大儀」を持って「国」のためを思って語りかける姿をあざ笑うような沈黙の笑み
それでも実は御簾越しとはいえ
目をそむけず言葉をかけ続けた
虎御前の前で「黙って」しまったら負けてしまう気がした
「貴方発言で「影トラ」までもが立場を危うくしています。。貴方はみなに酷い事をしたのですよ」
目を見開いた御前の表情は実の言葉尻に噛みついたかのように険しくなった
が
すぐにいつもの独特の仕草をした
ゆらゆらと身体をゆらして袖で口を押さえると「笑った」
「あなたが私にした事に比べればたいした事ではございませんでしょう」
顔は笑っている
声には「怒」が混じっている
ゆれる御前はそれでも視線を実から離さなかった
実は返された言葉に震えた
「私が。。。何を。。。」
その「怯え」を見逃さなかった
「貴方は私から全てを奪ったじゃありませんか」
平然とした
微動だにしない顔は「恐ろしい」事を平気で口にした
実は声が出なかった
出そうにも
忘れたい過去が一瞬にして湧き上がるように蘇り
適切な言葉を返すことが出来なくなってしまった
そんな「狼狽」の影は見えたのかもしれない
ゆっくりと
御前は静かに立ち上がると御簾の真ん前まで進んで来た
実は「逃げ出したかった」。。。
でも
身体はすくみ上がり言うことをきかなかった
いや
最後まで「気力」で負けてはいけないと自分を叱咤しているようにも思えたが
思わぬ「返事」に
心は乱れ
細い肩は痺れるように揺れた
外から響く風の音にさえ怯みそうな気持ちになる
あの日は。。。。
「あの日も貴方はそうやって御簾の中に座っていらっしゃいました。。。」
正面に来た御前はその場に座って言った
御簾の目からお互いの姿は十分に確認できた
ギョロリとした目が実の姿を「獲物」を狩るように見捉えている
暗い部屋の中で自分を刺し通す視線に
射殺された心地の実に御前は
目の周りを痙攣させながら。。。。ピクリピクリと動かしながら
隙間に息を吹き込むように言った
「貴方を守る者はいない」
実は姿勢を保つ事が出来なかった
恐怖と。。。。「罪」
あの夜。。。。あの時。。。。
息をのみ
近づく「過去」に怯えつつも答えた
「御前。。貴方は。。。まだあの時の事を。。。。」
小さな返事だった
しかし聞き逃しはしていない首を真右に向け耳を傾ける仕草
そのまま大げさに顔ごと傾げて見せる。。。
それも大げさすぎるほどのな角度から
じっくりと
実の顔を睨みながら
「忘れたことなどございませんわ」
ドスのきいた声は返す刀のようにはっきりと答えた
ついに実は目を反らした
睨むその目はあの日のあの時の目と一緒
正視する事は出来なかった
あの日の御前の目には。。。。「血の涙」が溢れていた篝火に照らされた大きな瞳を縁取るように流れた涙に火はテラテラと赤い輝きを映していた
今
涙のない枯れた刺すような目が自分に牙を向けている
「私は。。。。忘れてしまいたかった。。。。」
床を見つめた実の目には涙があった
悔恨の思いが身体から力を奪い
長い櫛が床に流れた
うちひしがれる思いが口からこぼれた
たった一度の過ち。。。。
消せない「罪」
「自分勝手なおっしゃりようですわ」
怒りは息を近づけ容赦なく責め立てる
顔を御簾に押し付けて光る目は「嫉妬」に燃えて
そこまで言うと御前はのけぞるように立ち上がり実の後ろの窓に向かって歩き出した
御簾に囲まれた彼女を遠巻きにしながら
まるで「囲われ者」を蔑む(さげすむ)ように鼻で笑った
「まだ。。。。泣くことができるなんて。。。あつかましい」
棘の言葉は「無礼」を通り越している
しかし実はそれを叱責はしなかった。。。いや出来ないと諦めていた
ココにいるのは
「女」と「女」
何かを背負ってしまった頃ではない二人
いや
それは嘘だった
あの頃すでに実は「権力」に捧げられた名も無き花だった
その
失墜の一途をたどる力無き権力者に
荒ぶる魂の「男」は遠慮はしなかった
その生き方に。。。。。。
惹かれた事は嘘ではなかった
「ただの女でなど。。。いたくなかった」
ただ枯れていく生き方など。。。
生きている事を「知りたかった」
生きている「証」を持ちたかった。。。。
落ち沈む実の姿をよそに
虎御前は窓を開け放った
「あの日も月の高い夜にございましたな。。。。。」
ユニ〜〜クアクセス(藁)
後書きからコンニチワ〜〜ヒボシです
最近アクセス数を見る方法が変わったようですが(爆)
ちょこちょこ見てみるのですが
日別のユニークアクセスっていうの全然見られません
機械音痴なヒボシは自分ではどうしていいのかワカラナイので。。。。。ただ困ってます
前のはみやすかったなぁ〜〜ショボーン
質問板に一度書き込みをしてみたのですが。。。
とっても丁寧な説明をもらっのですが。。。なんとも
申し訳ない事にさっぱりわかりません
とにかく「日別ユニークアクセス」だけがみられないのです。。。
たまに
ウメさまに上申をさし上げる(藁)のですが
なにせ忙しい方でしょうご返事を頂くのは難しいのやもしれません
しかしそんな事はともかく
ちょっと盛り上がってきました今日この頃(藁)
虎御前は皆様ご存じの「トラ」のおかーさま
そして上杉定実公代理事「実」様との因縁がいよいよあきらかになります
何故虎御前が晴景がキライなのか?
そして実様に怒りを持っているのか?
何故「トラ」を女なのに「守護代」しようとしているのか?
弾みをつけてがんばって書ききろうと思います
これからもよろしくお願いします!!!
それではまた後書きでお会いしましょ〜〜〜