その23 猿楽 (1)
越後にもどってきてからの人の流れが速い!!!
との
お叱りがありました
で
毎度の事ですが後書きな「人物評」upしました
よろしかったら読んでみてください
政景は綾の入城に合わせ「宴」を計画していた
今日この宴が終わったら
帰り支度をし「打倒」晴景の作戦を練り直すつもりなのだが
その前の一区切りの大芝居をうつための「宴」だった
家臣団を前に「敗北」ではなく
大きな力となって「戻ってくる」事を印象づけるため余裕のある所を見せておかねばならない
と考えたからだ
数十年ぶりに春日山に帰参した綾のためにと称し
珍しい猿楽を呼んだ
あとは
晴景が「宴」に合意を示すかが問題だったが
以外とすんなりと許可はおりた
そのかわり。。。。
晴景ーは大きな客を呼んだ
まさかの守護「上杉定実」公だった
宴の席でどちらが「格上」かを知らしめようとしている?
いやな圧力を感じた
己の考えている事の上をいく予感
知恵者である晴景の「策」には適わないと認めたばかりだが
その口から
「珍しき猿楽ならば是非にお呼びしたい」
という要望に
警戒しながらも応えるしかなかった
思い出すのも苦々しい薄ら笑いを見た時には危うく感情を顔に表してしまいそうになったが
そこは抑えた
震える拳や額に走る青筋を「抑える」事
それが知恵者に対抗する最初の一歩である事学んだからだ
気の短さをぐっと堪えた
「悪い状況を活かす」
それは「戦」と同じ
悪くとらなければイイ
常に健康を害している病気持ちの出し殻ような晴景に比べれば誰の目から見ても
政景の大きな体は「安定」を示すものにもなる
上杉様がいらっしゃるなら「次代守護代」を頂くにふさわしいのは誰であるかを示す良い機会だと思えばいい
これを活かすのが自分の手腕を示すよい機会。。。
という覚悟の大舞台が始まろうとしていた
その席に奥座敷から虎御前はやってきた
「お久しゅうございます。。。母上様」
しずしずと歩を進める中にも未だ「恐れ」を感じさせる「威厳」の母は
すました表情で綾を見て言った
「変わりないようだな」
「はい。。。母上様もお変わりないようで。。。」
ひさしぶりに見た母の顔に
綾は心底安心した様子だった
それは思い出の中にある母の姿のままだったからだ
まったく変わってない
仕草といい物の言い方といい
あの鋭い威圧的な目さえ変わっていなかった事に母が健在である事を知り
むしろ
うれしさがこみ上げた
「衰え」などてしいたら悲しくなったかもしれない
そう心配していたがそんな予想を覆すほど元気な母に安堵した
振り返って夫にも微笑みをこぼし
挨拶を促した
妻の笑みにつられた政景も深く頭をさげ挨拶をのべた
「お初にお目にかかります。。。長尾政景にございます」
大きな体を伏せながら
複雑な思いがまた巡った
実のところ政景はいままで虎御前と「会ったことがなかった」
今回の春日山に来た事にしてもそうなのだが
よほどの事でもなければ
すでに「夫」を亡くし剃髪した「母」という存在には会うことがない
というか
そもそもそんな「未亡人」が相変わらず亡き夫の居城に居続ける事自体聞いたこともない話で
虎御前が未だにココに居座っている事に少なからず驚きがあった
強張った表情を見せる政景に虎御前はつまらなそうに答えた
「よくきたな。。」
耳に入る声は「氷」の印象。。。
どことなく棘のある言葉と冷めた視線
それだけ言うと
まともに顔を合わすことなく晴景の後ろに座った
その後ろ御簾の中に座す守護代理の「実」に一礼して
「いつもああなのか?」
あまりにそっけない挨拶に政景は綾の手をに自分の手を重ねながら顔を寄せて聞いた
娘に対してまで突き飛ばしたような「言葉使い」に
少し気分を害していたが
綾は何事でもなかったかのように答えた
「お変わりなく。。いつもそうです」
返事する妻の目が嬉しそうなのが不思議に思えてしまう
政景はもう一度,目だけで虎御前を見た
見ため。。。。
それほど「美しい」という感じではない
もちろん「醜女」というわけでもなく
凛とした姿は貴婦人らしく美しいのだが。。。。「美女」というふうには思えなかった
痩せた肩に細い身体
それでこぢんまりとしていれば。。「ああっ婆よなぁ」とでも思えるのだが
背筋はぴしゃりと正され
身の丈は侍女たちより少し高い
総じて「優しさ」を感じられないし。。。。母親という「柔らかさ」が見られない
むしろ
「鋭利」な角のある姿
刃物のような。。。印象
顔の比率から見ても。。大きな。。。。「ぎょろり」という音が聞こえるような目
に
きりりと結んだ唇
何か
大蛇を想像してしまいそうな冷たい目
視線を綾に戻し
愛らしい妻の顔をじっくりと見つめて言った
「オマエは御前様に似てないな」
ホッとした物言い
心底そうおもったのだ
綾が御前にそっくりだったらこれほどまで「愛さなかった」だろうと本気で思った
と
同時にいまさらながらだが為景殿が何が良くてあんな女を「後妻」に娶ったのかと余分な事考えてしまった
「影トラは母上によく似ていましてよ」
始まった猿楽の演舞を眺めながら呆けた顔でくだらない事を考えていた政景の袖を綾が小さく引きながら言った
「御前様に。。。。そっくりなのか?」
「はい。。目元など特に。。。来年は十九歳になりますでしょう。。きっと若かりし頃の母上にそっくりですわ」
政景はなんとなく影トラが哀れになった
綾に似ているのならば。。。。
いや
姉妹なのだから綾の愛らしさを少しでも持ってさえいれば今時分「戦」などという仕事に狩り出されたりせず「嫁」に行けた事だろうと
そして一人納得した
何故「影トラ」が守護代家の旗を持って栃尾に「戦」に出向いていたかを
要は
嫁のもらい手がつかなかったのだろう。。。と
そうでなくても「影トラ」はずいぶん身の丈の高い「女」で晴景よりも大きいとも聞いている
その上
あんな怖い顔の母親に似ていれば。。。。
諸将も「綾」なら欲しかったが「影トラ」には指さえ動かなかったのだろう。。と
「そうか。。。似ているのか。。。」
夫の感慨深げな返答に綾は不思議そうに思ったのか
「あら。。影トラまで「嫁」に欲しくなりましたの?」
と
少しふくれた顔で聞いた
政景は思わず大笑いをしてまった
演舞は盛り上がりを見せていたとはいえ場違いなほどに大きな笑い声に綾がびっくりしてしまって
必死に袖を引いた
並ぶ諸将も豪快な笑い声に唖然とした顔を並べている事に政景は手ですまぬと合図して口元を抑えた
「どうなさったんですか。。。私変な事いいました?」
綾は顔を摺り合わせんばかりに近づけ
その上で小さな声で聞いた
「いや。。。いやいや。。。綾。。「嫁」はオマエだけ!!オマエだけで十分じゃ!!」
と肩を軽く叩いた
内心はもっと大笑いしたかったがこれも「忍耐」と忍んだ
もし
綾が御前にそっくりだったら
その時に晴景と「戦」をしていたなとまで思ってしまったからだ
そんな含み笑いの顔の政景を晴景がチラリと見た
その怪訝な表情に
政景はもう一つの事を思い浮かべた
「虎御前は晴景を嫌っている」
あれは
ひょっとしてお互い様の事か。。。と
晴景も御前がキライなのだ「確信」した
噂はかねがね聞いていたがどちらもが「犬猿の仲」だった事に明確に気がついた
だからだ
一人得心して膝を叩いた
だから「影トラ」の事もキライなのだ
武功もあるだろう
人心もあるだろう
だが
最大の理由は虎御前にそっくりな「影トラ」は気に入らないと言う事だろう
母親は自分を嫌い
娘は懐こうとするが。。。。
いやになるほど「戦運」が強いときている
確かに「イヤな」人のつながりの図だと得心した
「どうしましたの?」
一人にやける夫の顔を綾が覗き込んだ
政景は笑って答えた
「いや。。綾は美しい。。ホントに良き妻だとな!」
綾は少しばかり面食らったが
手を引く夫に寄り添った
この日の「嵐」が訪れるほんの少し前の出来事
晴景にとっても政景にとっても最後の「宴」は山場にかかろうとしていた
越後「人物評」
後書きからコンニチワ〜〜ヒボシです
急展開する越後編
急にいろんな人がでてきて話しの流れがつかめない。。。。
という
まっこと申し訳ないと思うお叱りを頂きました
本来なら小説内でそれぞれの人物をわかっていただけるように書くことが私の勤めですが
まだ
書ききれていないという事の指摘とも言えます
すいません(陳謝)
で
まあ
付録みたいなものとしてココに越後編の人物評を書いておきます
話しの流れをわかりやすくするための付録と思って読んで頂けたら幸いです
長尾影トラ。。言わずと知れた主人公
現在栃尾に引きこもり中の「女城主様」
誰からともなく「守護代の地位を狙っている」と噂され落胆。。。
騒ぎが大きくなって「戦」になる事をキライ引きこもってます
長尾晴景
現守護代様。。。
最近ちょっと元気になって知謀を使った戦を展開中
影トラの失脚とついでに生意気だった宗家の政景をコテンパンにしてやろうと
どす黒く計画中
長尾政景
現在21歳の血気盛んな男
トラの姉綾と結婚している
次期守護代の地位をかなり大胆に狙っているが。。。知力で晴景に惨敗中
めっちゃ綾ね〜を愛している
虎御前
トラと綾のおかーさま
風貌は今章で政景が思い浮かべているとおりの細い人
目つきが怖い
トラは御前にそっくりだけどそこまでとがってない
政景はアル意味失礼過ぎ
晴景の事を心底嫌っているが。。。。その理由は。。。
武田編の御北様とはまったく正反対な母親像
宇佐見定満
枇杷島の城主
「長尾影トラは守護代の地位を狙って候」という怪聞を流した張本人
かつて為景に「戦」で負け
軍門に下ったときその「軍師」となるのが彼の野望だったが
戦鬼為景には必要とされなかった。。。という辛い過去あり
今度は自らの手で「守護代戦」を演出してやろうと怪聞をながしたが。。。。
栃尾衆
本庄実乃や
やたろー達
現在引きこもり中の影トラに困っている
上杉定実
越後守護
本来ならこの人が越後で一番偉い人ですが今は名前だけの守護様
定実様本人は病弱で執務がとれないため
普段は妻の「実」様が代わって執務についている
今回の「宴」に呼ばれたのもこの方
虎御前の事がかなり苦手のようだが。。。。
直江実綱
栃尾と連携をとりながら実は「影トラ」の守護代擁立を計画している
が。。。
現在引きこもり中の影トラに困惑中
しかし
迷っている時間はなくなっている事に焦ってもいる
今回はかなりの人がぶつかり合う事になります
がんばって書いていこうと思っております!!
よろしくおねがいします!!
ではまた後書きでお会いしましょ〜〜〜