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その22 ゆらぎ (5)

長尾政景ながおまさかげは入城以来思い通りに進まない自分の「策」に苛立っていた



質問や軍議においてはとくに「意義」を唱えず

薄ら笑いを浮かべている「軟弱」守護代晴景はるかげの実は隠し持っていた「強かさ」に翻弄されるままの自分に

憤りさえ憶えていた



「守護代様は「知恵者」です侮ってはなりません」


目の前に座る老臣は若さを持て余し

考えの廻らなくなっている政景を「再度」諫めて言った

「力押し」が通用する相手ではなかった事は

すでに

政景にもわかっていたが。。。。



空回りを続ける現状に頭を掻きむしり拳を床に打ち付けた

こんなハズではなかったと

顔を赤くし「気短」な姿を隠すことができなくなっている



父の代から「晴景」を侮ってきた

父の口癖はこうだ


「為景の息子は「軟弱者」で言葉達者なだけの男。。。いずれ落ちぶれた守護様と同じように操ればイイ」


だから

表だって「戦」までしようとはしなかった

戦うまでもない相手だと親族共々思っていた

時がすぎれば

「力」を持つ巨大な一門である「上田長尾宗家」の嫡男である自分がすんなりと「守護代」になれると

「信じていた」



今年の初め

晴景と会ったとき

もちろん昔から「武」には向かない「細い」男であったが

さらに痩せて「軟弱」を絵に描いたようになり

顔色はいつになく悪く青白く

肩に「武威」を見ることもできない干物のよう姿になり



実妹の「影トラ」に腕をねじり上げられる


そんな失態を諸将の前で晒した男


吹けば飛ぶような「弱腰守護代」

心身共に「弱き男」



確信。。。。。

「今こそその時」

このまま「死ぬまで」待つ事などない

時期尚早では?と止める親族を無視して城に入った


事を早く進めるため会見からすぐに

坂戸城に戻り

気は満ちた事を父につげ「旗本」「直臣」を並べての再入城。。。。



それだけでも

諸将に「次期守護代」が誰であるかという威光を示すことが出来たハズだったのに。。。




「早まった手紙」


悔いても悔やまれる「失態」だった

だが

たかだかその一つだけでこれほどまでに自分が身動きがとれなくなってしまうとまでは思ってもいなかった



「変な噂を聞いた」


晴景の湿った顔から発された「釘」に身がすくんだ

だがその時はたいして気にもとめなかった

怪聞が怪聞を呼ぶ

誤算だった

一度でも早まった親書を出してしまった政景には「乱」を望んでいる者。。。。

という

疑いがかけられてしまった


戦乱にあけくれた「越後」の諸将は事実。。。。疲れていた

「乱を望む者」に希望など見いだせないという

冷たく

無言の回答が。。。。



揺れる灯籠の火にさえも当たり散らしてしまいそうになり

頭を抱える

大男。。。

身の丈ならば晴景をとうにこえ

「武」で後れを取ることは絶対にないと確信した若造政景の思案は脆かった

落ち着かないのが隠すことのできない行動として表れてしまう

何度も額をかき

髪をさわる



自分の「弱い」部分を串刺しにされてしまった


「どうしたらいい。。。」


「戦」であれば

退却も必要

引き返す勇気もまた「策」である



このまま春日山に留まったのでは。。。。。

それこそ

言葉巧みな晴景の思うつぼにしかならない。。。。。そんな気がする

いや

もう一度頭に手をあて考える。。。。静かに揺れ消えてしまいそうな灯籠の火が

それまで燃えさかっていた政景の「野心」炎のように見えてしまう

心は風前の灯火だ。。。。


吹けば飛ぶ

それは己の自尊心



思い浮かぶ最悪の言葉



「敗北」


戦もしなかったのに心を。。。しいては若さを打ちのめされた気分

不安がにじむ


向かいがわに座った

老臣は顔をしかめたまま言った


「今ココで状況が悪いからと言って「ただ」引き返してしまってはもはやどの諸将も政景様の「不安定」な行動に「臣従」を示さなくなる事でしょう」


返す答えは

己の口から発していながらもやはり苦々しい感情を帯びていた

じぃと呼ばれる歳から

自分が手塩に掛けた「政景」の若君が

戦鬼の残した「晴景」の老練さに打ち負けてしまった事が悔しさになっていた


「だが体勢を立て直す事はココではできない」



政景は春日山での晴景との「戦」に負けた事を認めた



認めなければ進めない事だと

ゆっくりと手をのばし人差し指で自分の中にある「図」を忘れぬように

身振りを交えて正確に伝えようとする


「綾をココに呼ぶのは二つの理由がある」


老臣は返した


「一つは若殿(政景)との入れ替わりで春日山に「上田長尾」の力を示し続ける。。。事ですな?」


薄暗い部屋の中

顔の半面を照らされた政景は大きく頷いた


入れ替わりに「正室」である綾が登城すれば

「敗北」で春日山を去ったと思われることはないそれどころか

自分の妻を守護代の居城に呼び寄せたことで

後にこの山に居座る者が誰であるかを示す事もできる



「もう一つの理由は?」


手振りを交え

「武力」ではなく「知恵」に対抗する策を懸命に絞り出す政景に老臣は問いかけた

政景の顔には少なからず自信が戻り

重要である事を座ったままにじりよると耳打ちした



虎御前とらごぜんを抑える」



老臣の目が開かれた

「虎御前。。。。なるほど。。。」

政景にも良くわかっていた事だった


「虎御前は晴景殿を「かなり」嫌っておられるそうだ」


それは少なからず「噂」になっていた事だし

事実

虎御前の実家「栖吉すよし」はついに守護代に頭を下げる事はしなかった

従わせなかった。。。。

それほどに晴景を嫌っている


しかし

だからと言って政景の事も虎御前は「好ましい」と思っているわけでない事もわかっていた


為景の仇敵の息子

為景に仇なし続けた一族の嫡子


良い感情を見つける事のほうが難しい


だが。。。。


「綾」ならどうだろう

実の娘

およそ十年ぶりの対面にもなる

その愛娘から夫に「力添え」をして欲しい。。。。と。。頼まれれば。。どちらかといえば「毛嫌い」も甚だしかった晴景に比べれば旗色は幾分もよくなるにちがいない



「イヤとはいわないだろう。。。」


誠実な妻の姿を思えば心苦しい選択ではあるが

将来的にみても「武」に長ける自分の方が「守護代」にふさわしいと見てくれる事だろう



それにそれほど「影トラ」に恨みはない

虎御前を取り込めば

母に忠実な「影トラ」は自分に「臣従」を示す事だろう


手をあわせ「策」の中身に自信を見せた

表情で老臣に続けた


春日山の内部で切り崩せる最大の一角があるとするなら

間違いなく「そこ」だ

拳を固めこの「策」のためにココに居残る老臣に意志を伝えた


「綾にはわしからも「越後」のため。。。とよく伝えておく。。頼むぞ」


そう言うと彼の肩を大きく叩き

己の身にも「気合い」をたたき込んだ



「負けんぞ。。。晴景」


折れかかった自分の若さを奮わせ負けない事を誓って手を合わせた

「かならず勝つ。。。」


水丸君〜〜〜


後書きからコンニチワ〜〜〜ヒボシです

ひさしぶりです


さて

武田編が終わって暗雲渦巻く越後にもどってきましたが。。。

「水丸」が結構人気があってびっくりしました

でも

あまりいい意味ではなさそうです


えっと

水丸君は晴景様と。。。。「衆道」の関係を持っているわけですが。。

そこのところをもっと詳しく書いて欲しい。。。

という要望があったりなのですが。。


すいません

「衆道」がメインの小説ではないので必要がなければあのぐらいまでしか描写はするつもりはありません。。。


それも衆道での「恋愛」を書くつもりもないので悪しからずです


ちなみに

今回も水丸君は晴景様とベッドを共にしていますが

アル意味正しくその関係を書いたとも思っています


自分の尊敬する主に「閨」の共をせよと言われる

という事は

「腹の内」までを知り合う最大の授業とも言える事と思います

隠すことのできない裸の付き合いで

水丸君はきっと「知謀」にたけた若武者になっていく事でしょう

だから

そこんには「恋慕」はあってお慕いしていても

妻という存在でも恋人という存在でもないもっと人と人の関係があると捉えています


なのでぇぇぇぇ(涙)


水丸君(受け)でもっとベッドシーンプリーズってのは勘弁してやってください(号泣)




ちょっと腐女子(藁)な会話になってしまいましたが

これからもよろしくお願いします!!



それではまた後書きでお会いしましょ〜〜〜

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