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【6/29書籍発売!】3才児ですが可愛い花嫁がやってきた!と溺愛されてます。しかし私は敵国の最強魔法帝です  作者: 六花きい


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25/48

25. 冷血将軍、懺悔する


 ごろんと大の字で横になり、天井を見つめながら、レティシアは物思いに耽っていた。


 夫婦の私室は部屋続き。

 いつもならロイドの部屋に行く時間なのだが、今日はどうしても行く気になれず、レティシアはベッドの上で物憂げにため息を吐いた。


 アリエッタにああいった手前、考えないように努めていたが、一人になるとどうしても頭を過ぎってしまう。


 それはそうだ。

 あの年で相手がいないほうがおかしい。

 二十三才。戦地にいたとはいえ、惹かれる相手の一人や二人、いて当然だ。


 ベッドからぴょこりと起き上がると、鏡に自分の顔が映る。


「私だって、そう悪くないはずなんだが……」


 最強、社畜、行き遅れ。

 社畜というのは組織に与する傀儡の称号で、レティシアのように私生活を犠牲にして、仕事を優先する者のことを言うらしい。


《思春期の娘のような真似をして、突然どうした》

(ああ、ヴェリアルか。これまで誰一人として私に言い寄る者がいなかったのは、なんでだろうと思ってな)


 見た目は多分、悪くない。

 魔法帝という身分が、出会いの邪魔をしていたのかもしれない。


《ディーンが隣にいたからじゃないか?》

(? なぜディーンがとなりにいると出会いがなくなるんだ?)


 意味が分からなくて首を傾げると、ヴェリアルが盛大に溜息をついた。


《……魔法師団の七不思議を知っているか》

(なんだ? 魔法師団の志願者が少ないことか?)

《なりたい者は数多いる。――だが、なれないのだ》


 初耳である。


《魔法師団に入ろうとした者は吾輩の知る限り、過去十年で百名は下らない》

(そんなに!? 人手不足で困り果てているんじゃなかったのか!?)

《違う。師団長のお眼鏡に叶わなかった者は、どれほど優秀でも決して魔法師団には入れないのだ》


 ヴェリアルが前足を舐めながら、ゆっくりと続ける。


《実はお前に言い寄ろうとした者も、少なからずいた》

(なんだと!? そんな奇特な者がいたなんて……まさかディーンが私の出会いを潰してきたのか?)

《そうだ。すべての者は退職か休職。あるいは国外転勤を命じられ、その後消息を絶っている》


 何それ。同じく初耳なんだが。


《他のも聞くか?》


 聞かなくていいような気もしたが、知らないままでいる方が怖い気もした。


(お願いします……)

《魔法師団の訓練場に、立ち入り禁止の区画がある》

(危険区域だろう? 魔法実験で爆発事故を起こした後、封鎖したと聞いた)

《爆発事故は確かにあった。だがそれ以来、そこは師団長ディーンの管轄になっている。つまりあいつのフリースペースのようなものだ》

(フリースペースといっても、あんな場所。何にも使えないぞ?)

《目撃した者によれば、魔法帝の肖像画が三十枚以上貼られているという》


 魔法帝の肖像画? つまり私の?


(それは、不思議というより……)


 もう出会いとかいう以前の問題じゃないか。


 七不思議はまだあるらしい。

 でももう何だかお腹いっぱいだった。


《それにしてもどうした? お前達二人とも、最近ちょっと変じゃないか》

(……うるさい)


 ロイドの想い人について聞いてから、一週間ほど経過した。

 すっぱり忘れて、残り少ない余暇を楽しみたいところだったが、あれから毎日憂鬱な日々が続いている。


 原因は分かっていた。


「……大切にすると、あれほど心に誓ったのに」


 また今日も隣室から、ロイドの声が聞こえてきた。つまりはこれだ。


「他の女が頭をよぎるなどと……これでは申し訳が立たない」

《嫁の見た目が三才児だからじゃないか?》


 うるさい黙れ。

 ギュムッとヴェリアルの尻尾を踏みつけると、声にならない悲鳴を上げた。


 壁越しの懺悔は、あれから毎日続いている。

 すべて駄々洩れ。大丈夫かと心配になるくらいだ。


《毎晩ご苦労なことだ》


 もう何度目かも分からない懺悔に、ヴェリアルが前足を舐めながら、しみじみと呟いた。


(なぜお前はそんなに楽しそうなんだ)

《吾輩は部外者なので。そもそも二十三才の男なら、色んな娘に目が行くのは当然だ。何も不思議なことじゃない》

(だがそんな男ばかりじゃないだろう)

《そうか? 現にお前だって、前魔法帝の庶子として生まれてきただろう?》


 確かにその通りなのだが、ディーンのようにお見合い話から逃げ続け、脇目も振らず仕事に没頭してきた男だっているじゃないか。


「お前を、必ず幸せにすると誓ったのに」


 やむを得ない状況だったのはよく分かっている。

 ――別に本気にしていない。


 レティシアはベッドの上でぐりんと寝返りを打った。


 このままでは、ダメだな。

 長居すればするほど、ロイドを苦しめることになる。


 壁の向こうでは、まだ懺悔が続いていた。





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