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【連載版】3才児ですが可愛い花嫁がやってきた!と溺愛されてます。しかし私は敵国の最強魔法帝です  作者: 六花きい


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14. 警戒心、解けすぎていた件


 王宮への呼び出しは珍しくもないが、今日はいつもと勝手が違っていた。


「れてぃも、いっしょ?」

「……そうだな、お前も一緒に連れてこいとのことだった」


 ガタゴトと馬車で揺られながら、レティシアは小さな手を握りしめる。

 底を尽きかけていた魔力は一割程度だが戻り、小型の魔獣程度なら問題なく倒せそうだ。


 王宮の応接室に通され、ソファに並んで座りながら、待つことしばし。

 入室してきたのは国王と、見覚えのある召喚魔法師だった。


「お久しぶりです」


 最後に見た時は、とても申し訳なさそうな顔をしていた。

 誤召喚した件を引きずっているかと思ったが、存外元気そうだ。


「レティ様。セシリオ辺境伯と少しお話がしたいのですが、そのままだと暇でしょう?」

「……うん」

「なら、いいものがあるんです」


 手を出してください、と優しく声をかけられる。

 セシリオ辺境伯領で過ごした日々は、長年張り詰めていたレティシアの警戒心を解くには、十分すぎるほど穏やかな時間だった。


 お菓子でも貰えるのかと、――無防備に手を出してしまうほどに。


 すかさず手のひらサイズの袋を取り出す、魔法師。

 銀糸で硬く織られた()()は、魔力を遮断する……防護布?


 差し出されたソレを見た瞬間、レティシアの頭の中で警戒音が盛大に鳴り響いた。


 何かを内包しているような、嫌な感じ。

 顔から血の気が引いていく。

 そして二人のやり取りを、向かいのソファーに座った国王が、まじまじと見据えていた。


「さぁ、どうぞ」


 丸く透明で、淡い光をたたえた水晶玉が、避ける間もなく開いた手の上に乗せられる。


 魔法師団の入団試験でも使う、魔力測定器。

 よりによって今、レティシアの剥き出しの魔力に触れた。


 しまった――。


 外から分からないよう魔力を封じ込めてはいたものの、魔道具の類を誤魔化すには、それなりの魔法式が必要になる。

 勿論レティシアであれば苦も無くできるが、魔法師の目の前で使えば、さすがにバレてしまう。


 次の瞬間、眩い光が室内を埋め尽くした。




 ***




「結論は、こうだ。魔法陣には、ヴェリアル様を転移させるだけの魔力が足りなかった。不足分を補うため、近くにいた者の魔力を強制的に充填し、召喚対象が切り替わったのだろう」

 

 興奮冷めやらぬ魔法師の代わりに、国王が噛み砕いて説明してくれる。


「普通の人間なら、通過する際に千々に引き裂かれていた。生き残れるだけの魔力を持っていたのは僥倖だったな」


 国王の視線が、レティシアの上で静止する。

 敵意はない。だが油断もできない。


「ぜひとも現在の魔力量を測ってみたいと、魔法師から要望が上がったのだが、この魔道具は王宮にしかない。ゆえに、わざわざ来てもらった次第だ」


 測定結果は、王宮の魔法師に匹敵するほどの魔力量。

 強いながらも、ひとまずは経過観察という形になった。


「それで、だ。ロイド、このあと騎士を連れて討伐に行くから、お前達も来い。レティも一緒にだ」

「……レティもですか。さすがに怯えるのでは」

「何かあればお前もいる。大丈夫だ」


 国王は立ち上がり、それ以上の問答を許さない。


「討伐が簡単な小型魔獣だ。護衛も付けるし、王太子も連れていく。子ども二人は離れた場所で見ていればいい……何事も経験だ」


 魔力量が多いことはバレた。

 だがレティシアが魔法帝だとは、まさか夢にも思わないだろう。


 大丈夫。――そう結論付けたところで、レティシアはふとロイドを見上げた。


「ろいど、どうした」

「あの魔力量といい……お前は一体、どこからきたのだろうな」


 珍しく、眉間に深い皺が刻まれていた。




 ***



 魔獣が出たという山沿いの街では、町起こしがてら屋台を開き、見物客を呼び込むためのお祭りが開かれていた。


 数匹出たとのことだが、確かにキマイラ程度なら、各街に常駐している兵士でも討伐できる。

 経験がてら王太子に見学させるには、ピッタリの魔獣だった。


「……なんでお前みたいな子どもが、ここにいるんだ」


 落ちていた小石が気になり、拾い上げようとして屈んだところで、突然声が降ってくる。


 見上げると、レティシアより一回り大きい背丈の男の子がいた。

 まだ五歳くらいだろうか。

 金の髪に、金の瞳。小さいくせに妙に威圧感がある。


 トルティア王国の王太子。ええと確か名前は……。


「シリウス、その子がレティだ。仲良くしてやれ」


 国王の声掛けに、王太子シリウスはまるで下々の者を見るかのように、小馬鹿にした態度で鼻を鳴らす。


 そう、王太子シリウスだ。

 魔法帝時代に小耳に挟んだ名前を、レティシアは思い出した。


 何がお前みたいな子ども、だ。

 オモチャみたいな短い剣を得意げに差してはいるが、自分だって十分幼いではないか。


「……じぶんも、こどものくせに」


 ちょっぴり大人げなかったかもしれない。

 言い返すと、シリウスの目がつり上がった。


「俺はここに用がある! お前こそなんで来てるんだ!?」

「わたしも、ようがある」

「嘘を吐くな。どんな用だか言ってみろ」

「……ひみつ」

「なんだと!? 生意気な奴め!」


 カッとなってシリウスが何か言いかけたその時、ロイドが寄り添うようにしてレティシアの隣に立った。


「シリウス殿下。彼女は我がセシリオ辺境伯家の大切な方です。まだ幼い。粗略に扱わないでいただきたい」

「……ッ、ロイド……」

「それに、万が一があってはいけません。レティと一緒に奥へ避難してください」


 が、避難後も気になるのか相変わらずジロジロと不躾な視線を送られ、レティシアは若干キレそうである。


 体力が三歳児なら、忍耐力も三歳児。

 腹が立つことこの上なく、レティシアは、ぷいっと顔を横向けた。


 大人げないが、こっちだって今は子どもだ。

 王太子だからといって話を合わせる気は微塵もない。


「こ、こいつ……ッ」

「んあ?」


 じ―っと至近距離でガンを飛ばし、シリウスも負けじと目線を返してきた。

 一触即発。ちびっこ二人が、無言のまま見つめあう。


「……陛下、あれは」

「見なかったことにしよう」


 国王が目を逸らし、……そして、ギャア、と複数の音が混じったような、不気味な声が聞こえた。





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