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転生勇者と転生魔王の未来目録  作者: Aa_おにぎり
一年生②

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37/38

#37

その時、カムチャルは学園都市行きの旅客機の中だった。


この旅客機は速度が速く、目的地まで簡単に到着する。科学の推移を集めた技術の結晶だ。ただ、重量制限があり。一人当たりの持てる荷物は限られていた。かつては音速を超えるのは費用対効果が薄かったが、時代は進み。今では当たり前のように超音速機が空を飛んでいた。


反対に飛行客船は元が大型な機体故に重量物にこれと言った制限は無いし、おまけに旅客機より安い。ただし、船と名がつく通り非常に速度は遅い。

合州国の端から端を移動するのに高速性を求める旅客船であれば丸三日、速度を重視しない貨物船であれば二週間かかってしまう。


「はぁ…面倒だな。こりゃ」


その機内でカムチャルは写真を見ながらそう溢す。

彼は緊急で本部から蜻蛉返りで学園都市に飛んでいた。理由は勿論、レオポルト達が発見した不法移民の少女の一件だ。


「まさか襲撃を受けるなんて誰も思わんだろう…」


それはその少女が何者かによって毒物を撃ち込まれたと言うことだった。

元々、病院の医師の診察で彼女の体内から魔石病を誘発させる魔法が確認されており、それが彼女の暗殺を目的とした魔法という事実に彼は警戒をしていた。それと、彼女の体内組織を破壊した魔法は例の魔導技師殺害にも使われていたのも警戒していた理由の一つだ。


「犯人は病院関係者に化けたか」


少なくともカムチャルはそう考えていた。いくら警備が手薄とはいえ、少女に怪しまれることなく毒を打ち込むのは厳しい。

病院から毒物を取った形跡がないので、外部から持ち込んだのだろう。


「(おまけに彼女はドレッドノートが見ていたというしな)」


事件当時は学校に呼び出しを受けて病室から離れていたと聞いていた。

FSS内部でも採用を考えるほどの実力を持っていると噂の生徒だ。実働力に加え、個人の戦闘力も高い。まさに実践部隊向きだ。ただ一つ問題があるとすれば…。


「(確か、二重国籍だったか…)」


彼女が瑞穂国とアルメリア合州国の二重国籍者であるということだ。

父方は彼の国の優秀な銃器メーカーの娘、なんなら瑞穂国にも腹違いの兄がいるはずだ。


「取り敢えず、向こうに着いたら色々と聴取を取る必要があるな」


あの少女は何か情報を持っている可能性があり、重要参考人として移送の可能性も考えなければならなかった。






====






その頃、学園都市の教室ではレオポルトは授業を終えて実習を行なっていた。


「今日の実習はどうだった?」

「なかなかよ。この後なんだっけ?」

「魔法実習、場所はスタジアムだ」

「Oh、魔法実習かよ」


いつもの四人はそんな次の授業の事を話しながら廊下を歩いている。


「しかし、この魔法実習もなかなか酷じゃねえか?」

「そうか?」

「だってよ、実践形式で魔法の授業は体力使うからさ」

「まあ、この四人の中で一番場力低いのはジャックだしな」


そう答えると、アニが言う。


「まあ、魔力は鍛えられますから」

「まあそうなんだがなぁ…」


基本的にこの世界は魔力値と魔導適正値と言うものが存在し、両者の数値は機械の計測で判断する。この国では十歳の時に予防接種と同様、国民全員がこの検査を受ける必要があった。


「魔導適正も今は手術できるがな」

「でもお金かかるじゃない」

「最近は安くできる方法があると言う噂だぞ」

「え?まじ?!」


魔力は魔力切れを何度も起こす事で体が魔力に慣れ、体内に持てる魔力の量は増える。それ故に元々魔力の高い、魔術師の家系などは生まれてくる子供は元々から魔力の高いことが多い。


「ただし、詐欺の可能性もあるからしっかり裏を取る必要があるがな」


そして魔導適正はわかりやすく言うと、魔力がダムや池に溜まる水であれば、魔導適正はそれを外に流すためのパイプもしくはダムゲートだ。

魔導適正値が振り切れていると、今度はすぐに魔力切れを起こしてしまうので一番の理想は魔力値と魔導適正値の数値が全く同じことだ。

まあそんな人間は神話に現れるレベルの存在か、神のご加護を受けた人間しかいないので考えないでおこう。


魔導適正は生まれつきの数値から変わることはないので、改善するには手術を受ける必要があった。内容はまあまあ簡単で脳に微弱な電流を流すだけなのだが…魔導適正値と魔力値の均衡を測るための微調整に金がかかるのだ。


「うわっ、マジかよ」

「よくある詐欺の手段ですね」


ネルがそう答えると、ヴァージニアはなんともいえないような表情を見せてしまっていた。




学院内にあるスタジアムはサッカーやアメフト、ラグビーもできるほど巨大な場所だ。二万人ほどを収容可能な席数を持ち、たまに大学生がここでライブをやっていたりもする。

そしてここは魔法練習のための会場でもあり、高校課程の魔法演習はここで行われている。


主にやるのは中級の現代魔法、具体的には放水魔法、落雷魔法などである。どれも的にしっかりと当てる必要のある物であり、特に後者は加減を間違えると人が死亡する可能性すらあるので慎重に行う必要があり、練習時には必ず教師の監督が必要であった。


「今日の訓練は三十秒以内に的を全て撃ち落としてください。使用するのは放水魔法です」


教師が前に立ってそう話すと、雑多になって見ていた生徒達はデバイスを手に持つ。

現代魔法の特徴でもある魔法を複合的に組み合わせて放つ一発、各チームを組んで指定された範囲から魔法を発動する。


放水魔法は水魔法に圧縮魔法を組み合わせた魔法だ。消防士が使うような強力な放水魔法は基本的に二人一組で行う場合が多く、かく言う自分達も個人で的に放つ放水魔法はホースの散水程度の威力だ。


シャー


そして的に向かって水を撒いていると、遠くで勢いよく吹き出している様子の音が聞こえた。


ドゴーンッ!

「「「「っ?!」」」」


その方を見ると、そこでは主席のロバート・E・スコットがおおよそ普通の現代魔法とは思えない威力の放水魔法を出していた。


「うわぁ…」

「威力やば」

「あれは確かに主席レベルだ」

「凄いですね…」


思わずそう感心してしまうほどの高い実力。


「(凄いのは頭だけじゃねえって事か…)」


頭も良い、家も良い、顔も良い、こんな欲張り三点セットを備えている男、ロバート。自分は正直に言うと苦手なタイプの人間だ。なぜか、なんとなくなく彼を見ていると前世の自分を見ているようで気分が悪いからだ。あと唾を吐きたくなるぐらい恵まれやがって…。


彼の近くには彼の書いた論文のおこぼれをもらおうと常にゴマスリ状態の取り巻き達。しかもいやらしいことにそこには数名の女生徒がいた。

ただでさえ、大学に飛び級しようとして失敗した生徒だ。もし来年も受験を狙っているのであれば、彼らは相当な邪魔者だろう。


「(下手に有名人になるのも辛いものだな…)」


デバイスで放水魔法の課題をクリアしながらレオポルトはそう感じていた。




放課後、今日は風紀委員の仕事も設計局の仕事もないレオポルトは珍しくアニ達と帰る約束をしていた。


「んで、今日は何処に寄り道する気だ?」

「うーん、いい店なんかない?ついでに夜も食べようよ」


モノレールで中心街に出た四人はそこでそう話す。


「何の料理にするんだ?」

「私中華がいい」

「俺、和食」

「私は何でもいいですよ?」

「全員バラバラじゃねえか…」


そこでレオポルトはふとネル達と共に行ったあの店が浮かんだ。


「…いい食堂があるな」

「お、マジ?」

「色々なジャンルの料理があるから、今の俺たちにはいいかもな」

「じゃあ、案内よろー」


そんなわけで四人はレオポルトの案内で例の店に向かった。




そしていつもの店に入った四人はそこで各々好きなものを注文する。


「それでさ、今度の定期テスト。試験担当はスチュアート先生だって」

「おっ、マジか」

「先生は優しいからレポートが楽だな」

「期間を長めに設定してくれますからね」


ヴァージニアがラーメン、ジャクソンはトンカツ定食、レオポルトはピザ、アニはハンバーガーを食べながら話す。


「今度のレポート、資料が少ないから書きづらいんだよな」

「今度実験室借りてやるか?」

「ええ、でも厳しくない?高純度粉塵魔石って何処に余ってたっけ?」

「準備室になかったか?」


話をしていて思わずレオポルトは聞くと、ヴァージニアが答える。


「それがさ、なんかごっそり消えちゃったんだってさ」

「え?」

「それで慌てて先生が注文してたよ。来るのは明後日だってさ」

「えぇ、マジかよ…」


その話に思わずジャクソンは面倒そうな様子で文句をこぼす。


「あの試料、結構高いやつだやろ?」

「ああ、高純度粉塵魔石は魔力爆弾の原料にもなる取り扱いに注意が必要な試料だな」

「魔石病の原因になるやつですね」


魔石病は胆石のように体内に魔石が出来てしまう病だ。放っておくと鋭利化した魔石が体内組織を破壊する危険な病だ。


「何で大量に消えたんだよ」

「さあ?どっかの部活が大量に使ったんじゃない?」


ヴァージニアは愚痴るように答えると、ネルが完食した特盛ラーメンを彼女よりも早い速度で完食する。

雑種の血で多分オークか巨人の血が入っているアイツもよく食べる子だ。あそこは家族も大きいしな、あと兄姉も多い。


「「速っ!?」」

「?」


おい、注文してからまだ数分しか経ってないぞ?


「どんな胃袋してんだよ…」

「あら、このくらい普通じゃない?」


代わりに突っ込んでくれたジャクソンに彼女はそう答えると、二人は堪らずに叫んでしまった。


「「普通じゃねえよ!!」」

「凄いですね、私そんな量は流石に食べれないです」


うん、君が普通なんだ。よかった、まだ常識ある子がいてありがたいよ。


「まあ、足りないからまだ注文するんだけどね」

「おいおい、食べ残すなよ」

「私の胃袋、舐めんじゃないよ。パスタ十キロ何て余裕なんだから」

「お前の胃袋は竜かよ」


ジャクソンは思わず呆れていると、ほんの一瞬だけヴァージニアの動きが止まった。


「…俺の周りは大喰らいしかいないのか?」


大喰らいな事を言われてやっと自覚したかと思ってレオポルトも呆れた様子で小さくそう呟いていた。

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