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転生勇者と転生魔王の未来目録  作者: Aa_おにぎり
一年生②

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36/37

#36

少女の入院する病院には、明らかに少数ではない警官が集まっていた。

無理もない。いきなり不審者が警官に扮して少女に毒を打ち込んで颯爽と逃げていったのだ。警察に不信感を抱かれては治安の維持もあったものではない。


「厳重な警備ですね」

「いやはや、すごいもんだ」


駐車場に車を停めたレオポルト達はそのまま車の扉を開ける。


「念の為荷物置いてこ」


レオポルトは運転席に掛けられているラックにベリザーナを置くと、横でエイブラハムが聞く。


「それ、元々ショットガンが置いてある場所だよね?」

「ええ、何たって元パトカーですからね。この車」


そう言い、カムチャルに行って融通してもらった車両を少し自慢する。


「よく買えたね」

「ええ、知り合いに警察の人がいるものですから」


そう言うと二人は車を降りて病院に向かうと、入り口で警官に呼び止められた。


「待て、身分証を出せ」

「はいはい」


そこで学生証を手渡すと、その警官は疑っている様子で要件を聞く。


「ここに来た理由は?」

「獣人の少女に会いにきました」


そう話すと警官は即座にレオポルト達に答える。


「だめだ、彼女との面会は原則禁止だ」

「一応、カムチャル刑事から許可はとっているのですが…」

「…ちょっと待ってろ」


カムチャルの名を出したところ、その警官は無線を使って確認をした。そして数分後、


「本物か…」


驚いた様子で警官はレオポルト達を見るとその後に警護のための警官がやって来た。


「念の為、部屋の中まで警護する」

「はいはい、分かっていますよ」


レオポルトはそう答えると二人はそのまま病院を進む。

病院は警官が何処かしらには立っており、騒然としていた。


「厳重な警備だ」

「多分、上の人が派遣させたんでしょう」


すぐにその理由を察すると、そこでエイブラハムはやや目を見開いて聞いてきた。


「もしかして、知り合いに上層部に繋がった警察関係者とかいる?」

「ええ、父の友人で昔から好意にさせて貰っている人がいますよ。まっ、これ以上言うと多分俺が怒られるんですけど」


レオポルトはエイブラハムにそう答えると二人は病室の前に止まる。


「誰だ?」

「警部の知り合いだそうだ。中に入れろとのご命令だ」

「そうか」


了承した部屋の前にいた警官は扉を開けると中にレオポルト達を入れた。

部屋の中にまで警官が入ってくるあたり、よほどの警戒をしているのが伺えた。


「…」


そんな中、レオポルトは左手で軽く指を動かすと古代魔法を使った。すると部屋に入った警官はそのまま前を向いたまま静止していた。


「…何をしたんだい?」


その異変にすぐに気づいたエイブラハムがレオポルトに小声で聞くと、彼は何もないように答える。


「暗示魔法をかけました…ちょっと調べたいことがあるので。今頃は俺たちが少女の容体を遠くから軽くみている程度で終わっているはずです」

「…まあ、君をここに呼んだのもこの少女の情報が欲しかったからだけなんだけど…」


そう言うとベットの上で眠っている少女を見てレオポルトは彼女の額に軽く二本指で触れると他人には見えない魔法陣が浮かび上がった。


「何をしているの?」

「彼女の記憶を見ています」

「え?出来るの?」


通常、他人の記憶を強引に見ると精神が破壊される可能性があるので、対象者が気絶か、若しくは死亡している時にしか使わない。


「古代魔法と併用すれば…ですが彼女はトランス状態なので比較的簡単に記憶が見れますね」

「はぇ〜古代魔法に詳しいのね」

「父の受け売りです」


そう言い、レオポルトは記憶を見ていると様々な表情を見せた。


「…なるほど」

「何か分かったのかい?」

「まあ、所詮トランス状態だとこの程度しか見れませんか…」


魔法を解き、レオポルトはエイブラハムを見る。


「帰りましょう、あとで先輩の聞きたいことは色々と答えられる範囲で教えます」

「ん、分かった」


そう答えると暗示をかけた警官の魔法を解いた後に病院を後にした。


「彼女はエリカと呼ばれていました」

「エリカね……」

「名前からゲルマン系の人間でしょうね。記憶を見た限り、幼少期から身売りされたようですが…」

「おぉ、まじか…」


思わずエイブラハムは顔を顰めてしまう。この時代になって奴隷制度はほぼなくなってはいるが、人攫いが無くなったわけではない。

旧大陸にはその文化がまだ残っており、恐らくそこで攫われた後に不法移民でこの地に送られたのだろう。


「他に聞きたいことはありますか?」

「い、良いや…取り敢えず名前だけで」


今日はありがとうと言ってエイブラハムは途中の道で降りて行った。

そしてレオポルト自身は学校に戻る。まだまだ仕事は残っているし、何より風紀委員会に退部届を出さなければならないのだから。


「…」


そして車を駐車場に戻して、エンジンを切ったレオポルトは意識を少しだけ傾けると、そこには先ほどまでいた病室の景色が映っていた。

実は病室を後にする直前にレオポルトは病室に小鳥の傀儡を放していたのだ。傀儡は古代魔法の一種で動物に似た黒い影を召喚し、それを使役する魔法だ。

この前の半グレ集団の襲撃の時には狼の傀儡を大量に召喚して喰わせていた。


今のレオポルトの体質的に古代魔法はよく合っていた。吸血鬼と魔族の混血は膨大な魔力を中に秘め、高度な古代魔法も簡単に打ち出すことができた。


「まさかそれが功を奏すことになるとはな…」


前世では魔法とはあまり無縁だった為にレオポルトの精神的な気合いの入り方もまた違った。

前世勇者の時は自分には魔法の才は無く、それらは腹違いの弟が持っていた。

本来の王族の血族であり、高貴な血を持つ弟は次期勇者としての教育を施されていたが、いかんせん病弱で城から滅多に外に出られなかった。

最も、そんな弟が居る事すら知らなかった自分はそのまま城の離れの一室で時々見に来ていた先々代の勇者だった爺さんとチェスに興じていたわけだが…。


「望まれない子供を作るんじゃないってんだ」


これも王室が正妻の家に借りがなかったらこうはならなかったのだろう。

確か公爵家の娘で、我儘な性格をしていた。俺が城に行って弟の見舞いをするたびに『カビの匂いがするわね』と言って来たのは忘れない。

子作りよりも豪華絢爛な王妃を優先した為に弟以外に子が生まれることもなく、王室は次期勇者の後継者争いに大騒動となっていた。


そんな母親とは反対にその弟はトンビが鷹を産んだかと思うほどに純粋で無垢な少年だった。

何でも、病弱で勇者でないと分かってから一度も会っていなかったそうだ。何で薄情な母親だ。


ちなみにその薄情な王妃は革命の際に斬殺の公開処刑にされたそうで、それはそれは大盛り上がりだったそうだ。


学校に戻ったレオポルトは時間を見ると午後七時、辺りは暗くなっていた。駐車場から荷物を取りに一旦校舎に入ると、そこで声をかけられた。


「あれ?レオくん?」

「ん?」


振り向くと、そこにはアニが立ってやや首を傾げていた。ああ、そう言えば今日はゼミで遅れるとか言ってたな。


「もう帰ったと思ってたよ」

「いやぁ、こっちもいきなり呼び出し受けて今帰ってきたきたところさ」

「そうなんだ」

「そっちは?」

「ゼミの帰り」


二人はそう答えるとレオポルトはそんなアニに提案する。


「俺も荷物を持ったら帰りだ。よかったら送ろうか?」

「うーん、お願いしようかな」

「んじゃあ、ちょっと待っててくれ」


彼はそう言うと校舎に急いで戻っていき、荷物を持って戻ってきた。


「場所はいつもの所でいいか?」

「うん、お願い」


女子寮と男子寮は別の場所にあり、棟から違う。そもそも寮だけで一駅分ある広大な土地の我が校は移動だけで大忙しだ。


アニは自分達でも珍しく免許を持っていない生徒だ。まあ、無理もない。入学した理由が元は犯罪組織に利用されていた身だ。目的が済めば奴隷として退学されていたのだからそんな奴らが彼女に免許を取らせようとは思わないわけで…。


「最近のゼミはどうだ?」

「基礎学は終わって、今度光系統の魔法の講座が始まるよ。今度発掘調査にもついて行くんだ」


発掘調査と聞き、レオポルトは発掘現場のあの空気を思い出す。


「ほぉ〜、それは良いな。発掘現場は楽しいぞ」

「レオくんは行ったことあるの?」


そんなアニの問いにレオポルトは答える。


「ああ、親父の仕事について行ったことがある。その時は旧大陸にも渡ったな」

「へぇ〜、やっぱり凄いね」


父親が古代魔法の研究者と言う点でアニは羨望の目を向けていた。


「たまに昔の生活の跡が見つかったりして、なかなかに面白い」

「何処の発掘現場に行ったの?」

「えっとな…確かシャクロブ古戦場跡だったかな」

「わぁ、結構大きな場所に行ったんだね」

「ああ、発掘の国際チームだったからな」


そんな事を話しているとあっという間に目的地に到着してしまった。


「もしよかったら、レオくんの知ってる古代魔法とか教えてもらってもいいかな?」

「教えられる範囲ならいいぞ」

「ありがどう。じゃあ、おやすみ」

「ああ、また明日な」


そう言い窓を閉めるとレオポルトはそのまま自分の部屋に戻る。




駐車場に車を停め、部屋に戻ったレオポルトは置いてある自作パソコンを開けると、そこに書かれた論文を見る。


「ほぉ、新しい論文か」


片手にカップ麺を食べながらパソコンの画面を見て新しい古代魔法に関する論文を読む。


「古代魔法の闇系統に新種の魔法ですか…」


論文を読み漁りながら彼は思う。


「(そもそも古代魔法が廃れたのは何故だ?)」


幾ら戦後の混乱があったとはいえ、古代魔法は現代魔法に比べて有利な点もある。おまけに誰かが魔導書を複写して残しているものではないのかとも思ってしまう。そう言った痕跡すら残されていないのだからその点に関しては疑問が残るところだった。


「(誰かが意図的に情報を消したのか?)」


レオポルトはしばし考えるも、その思考を放棄した。


「ともあれ、目下の問題はあのエリカと言う少女だな…」


毒を打たれたという事実からカムチャルは違法魔道技師を殺害した犯人と少女に殺人未遂を起こした人物は同一犯と考えていた。

少女が発見された時の状況然り色々と臭う部分はレオポルトも感じ取っていた。


「やれやれ、どうしてこうも問題ばかり起こるのか…」


彼は問題が山積みになっていく現状に頭を抱えていた。

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