#3
新世界歴
それは、最後の勇者シャターンと、最後の魔王ジブリールの最後の決闘であるヘルムートの戦いを起点に制定された。新たな時代の幕開けを意味する物だ。それ以前の歴史は旧世界歴と言う名で歴史に残されていた。
二百年戦争
俗にそう言われている人族と魔族による戦争は、結果としては引き分けと言った形で終わったと言うのが通説だ。何せ、何方も世継ぎを産まずに死亡した為に内部で混乱が起こり、とても戦争どろこではなくなった事が戦争が終わった大きな要因だろう。基本的に勇者も魔王も、それぞれの国の王が継承する力であった。
勇者はアルビレオ連合王国王室が、魔王はリヴァイアン帝国連邦帝室が、それぞれの国の長の称号として代々受け継いできた物であった。
今では勇者と魔王、何方の直系も断絶し、それぞれの国はその名を変えるほどの大騒動となった。
アルメリア合州国
新大陸を平定する大陸国家であり、巨大な共和制国家。
新世界歴十年に悪魔の大地と言われたこの地に移住した旧大陸の民が建国した国家であり、人族至上主義や魔族至上主義に反対する者達によって開拓・発展し、幾度となく旧大陸より襲来してきた外敵を排除して独立を勝ち得た初の人族と魔族が入り混じった民主主義国家であった。
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新世界歴四五〇年 八月二日
受験が終わり、ひと段落した頃。自宅で寝ていたレオポルトは目を覚ます。夏も半ば、外では陽が照り。庭では散水機が芝生に水を与えていた。
「今何時だ…?」
今日は学校もない。久々に親父が家に帰って来ていることもあり、部屋を出ると下からテレビのアナウンサーの声が聞こえた。
「おはよう」
細目で挨拶をすると俺を見た親父が言う。
「レオポルト」
「ん?」
「魔学院に行く事が決まれば、銃を買いに行くぞ」
「…え?」
この親父は何を言っているんだ?銃を買いに行く?
合州国では銃を買う際に免許を持っていればどんな武器でも購入が可能だ。しかし、犯罪歴がある者は免許を取得することは出来ない。そしてレオポルトも銃の免許は既に取得済みであった。
この国は敵を幾度も退けた歴史上、国民が自分や家族を守る為に戦う手段を手放さない。その象徴が銃器を手に持つ事であった。初めて扱った銃はルガーMkⅣだったのをよく覚えている。
「銃を買いに行くの?」
「ああ、学園都市は何かと揉め事が多いから、銃を持っておいて不足はない」
「(やけに学園都市に詳しいな)」
レオポルトはそんな事を感じながらリビングのテーブルに座る。
「母さんは?」
「ドーラと買い物に出かけた。直に帰ってくる」
テレビを眺めながら答えると、カールはレオポルトに更に言う。
「レオポルト。今、時間はあるか?」
「あるけど…どうしたの?」
「…いや、車の整備を手伝ってもらおうと思ってな」
「ん、分かった」
そう答えると、カールは席を立ちながら言う。
「着替えてから車庫に来い。ついでにお前のバイクも点検する」
つなぎに着替えて車庫に来たレオポルトはそこで既にシャーシの整備を始めているカールの横で工具箱を持ってエンジンの点検を始める。
「…ねえ」
点検中、レオポルトはカールに聞く。
「前々から思っていたんだけどさ。父さん、随分学園都市に詳しいんだね」
その問いにカールは少し間を置いた後に答える。
「…まぁな」
「学園都市にいた事があるの?」
「そんな所だ」
かつて学園都市にいたと言う父にレオポルトは続けて問いかける。
「…何で言わなかったの?」
「人には隠し事が一つや二つはあるものだ」
「何しに行ってたの?」
「それは言えないな」
そう答えると、カールは愛車に工具を差し込んでレンチを回す。意外と父は自分の過去を話さない。だから、少し驚いてしまった。
「学園都市ってどんな所なの?」
「…そうだな」
エンジンの点検を終え、そう聞くと父は少し間を置いた後に答える。
「良い場所である事に間違いない。少なくともここでは味わえない新しい感覚がある」
「そうなんだ…」
「まぁ、お前の実力なら魔学院に行けると思っているがな」
そう言うと、父は愛車の点検を終え。そのまま足元を蹴って体をスライドさせた。
「合格したら何を送ろうか…」
「サイドカーで十分だよ」
「いやいや、あそこはデカいからな。一年生が終わるまでに最低でも普通車の免許は取っておかないと行けないぞ」
「へぇ〜」
「まぁ、学校で免許も取れるから問題ないがな」
そう言うと、外から知っている声が聞こえ。車庫をドーラが覗くと言った。
「パパ、お兄ちゃん。そろそろお昼にするって」
「ん、分かった」
「今から行く」
短く答えた二人は続服を着て、工具箱に道具を片付けるとそのまま車庫を出て行った。
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数日後、自分はノートパソコンを起動して受験票の番号を確認していた。
「番号…番号は…」
ホームページに並べられている合格者の受験番号を確認する。流石、一学年に三千人の新入生を受け入れ、尚且つそれを三学年。大学院まで含めると最大九学年保有する国内最大級の学校だ。受験票の番号を打ち込むだけで合格か不合格かの確認ができる。単純だが、ある意味で残酷だなと感じながらレオポルトは番号をキーボードに打ち込む。
「…」
緊張する場面。レオポルトはエンターキーを押す指の力がやや強くなる。
「(ええい、ままだ!!)」
勢いよくキーを押し、そこに映し出された結果を確認する。
『合格』
画面に映った文字にレオポルトは安心と喜びで飛び上がりそうになるが、その気持ちを抑え込んで階段を降りる。
一回では結果が気になる様子の家族が待っており、降りて来たレオポルトを見た。
「…受かったよ」
「「「っ!!」」」
すると家族は一斉に合格を喜んでくれた。その事に嬉しく思ってしまう。
「おめでとう。お兄ちゃん」
「ああ、ありがとう」
妹にそう言われ、嬉しく思うレオポルトの携帯に電話が入る。画面を見ると、それはネルからだった。
「もしもし?」
『あっ!もしもし、レオ?結果は如何だった?』
「受かったよ。合格通知が来た」
すると電話越しで分かるくらい喜んだ声が耳に轟く。
『本当!私も受かったんだ!!さっきヘンリーからも連絡があって、受かったって聞いたから。…あぁ、ホッとした。これでみんな同じ所に行けるね!!』
相変わらず元気な幼馴染だ。だけど、こうして喜んでくれる素直な所が好きだ。改めていい友人が持てたと思っていると、早速母は祝いの食事を作り始め、父は父で嬉しそうに表情を浮かべながらパソコンで何か調べ始めていた。絶対車調べてんだろ…。
「ネルもおめでとう」
『ありがとう!』
「一旦ヘンリーにも連絡するから。切るな」
『うん、夜にまた電話しよう。これから色々と忙しくなるし』
「分かった」
そう言い、電話を切るとレオポルトは次にヘンリーに電話をかけると互いに合格を祝い合っていた。
その日の夜、レオポルト、ネル、ヘンリーの三人はテレビ電話をしていた。
『いやぁ、合格した事にウチの親も大盛り上がりでさ』
『分かるよ。うちもそんな感じだったし』
「こっちも。母さんが張り切っていたよ」
だいぶ盛り上がったのだろう。そう窺える話がボロボロと出てくる。無理もない、国内最高峰の高校に入学できるのだ。将来の就職にも有利になる上により深い知識を得る事ができる。
「父さんから聞いたんだが、学園都市はでかいから車の免許とかが学校で取れるらしいよ?」
『へぇ、そうなんだ』
『それだけ大きいんだね』
合州国では、自動車の免許は十六歳から取得が可能だ。十月には十六になるレオポルトも免許の取得が可能だ。
「なんか、俺のサイドカーも持ってても良いけど車のほうが楽なんだってさ」
『そうなんだ!!』
「あと、学園都市はなんか色々と揉め事が多いらしいから銃を持って行ったほうが良いって…」
『『はっ?』』
いや、そうなるよね。その気持ちはよく分かる。だって俺も困惑しているもん。
「よく分からないけど、今度ガンショップに行って銃を買ってくるよ」
『どんな無法地帯なの?』
『銃を常に携帯していないと行けないの?』
そう言い、困惑するネル達もついでにと言う事で週末にガンショップに行く事となった。
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学校の準備やら制服の調達を済ませている中。父曰く学園都市では必需品であると言う銃器の購入の為にレオポルト達三人は近くのガンショップに訪れていた。
「何の銃を買うか決めた?」
「いいや、全然」
「特に考えていなかったな…」
何せ、いきなり言われた必需品だ。何を買うのかすらも対して決まっておらず、店内を眺めていると…。
「君達。新しい武器をお探しかい?」
店の店主が話しかけて来た。
「今日は何の御用で?」
「実は…」
そんな店主の問いにレオポルトが答えると、店主は納得した様子で頷いた。
「なるほど、学園都市に…合格おめでとう」
「あ、ありがとうございます」
まさか見知らぬ人にもこう言われるとは…流石は名門校。
「学園都市に行くなら銃は必須だねぇ」
「「「え?」」」
おいおいマジかよ。ここの店主も親父と同じこと言ってやがる。…どんだけ危ない街なんだよ。
「あそこは国家機密も多くあるからね。危ない人たちとかがよく狙うんだよ」
あぁ、なんか納得…じゃなくて!!そんな所に国家機密置くなよ!!馬鹿じゃないの?!通りで銃が必需品な訳だ。
「まぁ、あそこの学生になるなら最低限の自衛能力も必要だね。あそこの生徒になったら最低限の安全確保もされるけれど」
「最低限…ねぇ…」
「死ぬような事は滅多にないから安心しな」
そう言われてもね。銃が必需品の時点でもはやそれは安全なのかどうか…。
「自由に見ていくといいよ。ここにある商品は学園都市でも売っているものだし、必要とあらば試射もしていいよ」
そう言い残すと店主はレジ台に戻って行った。
「…どうする?」
「どうするって言ってもねぇ…」
「まぁ、自由に見てまわればいいでしょ」
ってか、飛行機に銃って持ち込めんの?あ、飛行客船なら問題ないか?いや、どちらにしてもおかしな話だ。大体銃が必需品の都市だなんてそれこそ世紀末状態やないか。
「如何しようっかな〜」
「これとか良さそうだなぁ…」
早速ネルとヘンリーは銃を選んでいるし…。
「まぁ、良いやつを探してみますか」
そう呟き、レオポルトは店の中の商品を吟味して行った。
「どれが良いかなぁ…」
店の中を眺めながら見て回っている。幾つか試射をさせて貰ったがいまいちしっくりと来なかった。すると、ふとあるものが目に入った。
「お?これは…」
視界に入った一丁の銃に興味がそそられた。
「これは良さそう…」
そう呟き、さっきの店主に試射を頼んだ。店の射撃場でワンマガジンを装填し、安全装置を外してそのまま引き金を引く。
ダダダダダッ!!
一瞬撃ったが…気に入った。これで行こう。しかし、自動火器がOKな場所とは…。
《B&T MP9ーN》
今手に握っている銃の名称だ。連射速度も申し分無し、携帯性も抜群だ。ピカティニー・レールもあるので拡張性もある。
「お、レオはもう決めたか」
すると射撃場にヘンリーとネルが入ってくる。それぞれ片手に銃器を持っており、多分試射の為だろう。
そして、数発試射をした後。二人とも銃を選んだようだ。
「僕はこれかな」
そう言いヘンリーが選んだのは《ヴェープル12モロト》、12ゲージ散弾を使用するセミオート式散弾銃だ。ピカティニー・レールを装備しているのでスコープも付けやすいだろう。
「私も決めた」
そして最も決めるまで時間がかかったネルは傍に一丁の狙撃銃を置いた。
《M110 SASS》
それが彼女の選んだ狙撃銃だ。高精度の狙撃性能を誇るセミオート式狙撃銃だ。軍にも採用されるレベルの逸品であり、正直お値段が怖い所だ。
「そっか、ネルはよく害獣を撃っていたもんね」
「そうそう。狙撃はお手のものよん!」
そう言えば子供から22口径小銃で良く害獣のコヨーテとか撃っていたかと思い返しながら、三人はそれぞれ選んだ武器を持って会計に向かった。




