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転生勇者と転生魔王の未来目録  作者: Aa_おにぎり
一年生②

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27/33

#27

かつて旧大陸には二つの覇権国家が存在していた。


一つはアルビレオ連合王国。勇者と言う民を導く特殊な血を引き、人族を筆頭に大陸を白く塗り上げてようとしていた

もう一つはリヴァイアン帝国連邦。魔王と呼ばれる勇者と対をなす特殊な血であり、魔族を筆頭に大陸を黒く塗り上げようとしていた。


それぞれの国家は互いに睨み合い長大な国境で散発的な戦闘を起こしていた。

その戦争は二百年続いた事から、二百年戦争と呼ばれていた。


戦争の終結は互いの国の象徴でもあった勇者と魔王の血筋が途絶えた事にあった。


半ばアルビレオ連合王国の部隊の死の行軍にも近い、六代目勇者シャターン率いる部隊がリヴァイアン帝国連邦首都の魔王の住む帝城ヘルムートでの激戦を繰り広げる事となった。


勇者の持つ人々をまとめ上げる能力を活かし、転移魔法によって帝都に侵入した各部隊はそのまま帝城に侵入。それと同時に国境全体でアルビレオ連合王国の全軍が、当時は最新兵器であったマスケット銃を使った攻撃を行って侵攻を行った。だが、肝心のシャターンは七代目魔王ジブリールと相打ち。

挺進部隊はそのまま帝都を散り散りに脱出し、この大攻勢は勇者と魔王を失う大損害を被ったまま終結した。


国の象徴を失ったそれぞれの覇権国家は脆く崩れ始めた。幾つかの地域では長年の戦争による重税などから独立運動が盛んに行われ、徐々に国内の治安が抑えられなくなった。

そして、アルビレオとリヴァイアンはほぼ同時期に革命が勃発。嘗ての覇権国家は細分化され、大陸は無数の色で塗られる事となった。

現在、両国はそれぞれアンサルド連合公国とゲルマン公国連邦と半民主化した国家となっていた。




その中でも一部の人間は当時は未開の地であり、不毛の大地であるとされて来た新大陸に上陸。そこに新たな故郷を築いた。

彼らは二百年戦争から逃げ出した脱走兵やその家族、奴隷などで構成されており、出自は様々であった。彼らは共同のコミュニティーで生活し、そしてさらに西へとその活動圏を伸ばした。そこで生まれた人族と魔族の間に生まれた子は進人類(ニューハーフ)と呼ばれ、合州国発展の源となっていた。

そして彼らは自らをアルメリア合州国と名乗り、新大陸を平定する覇権国家を作り上げた。


旧大陸と新大陸の間には『東大洋』と呼称する荒れ狂う海があり、海中にはクラーケンなどの怪物が住まう海域が存在していた。

そして新天地を求めて西に大移動を重ねた合州国市民は新たに西に海を見つけ、そこを『西大洋』と名付けた。


そして巨大な西大洋の先には旧大陸では極東の地であると呼ばれた『瑞穂国』と繋がっており、合州国初の盟友国となった。

瑞穂国は二百年戦争のどちらの勢力にも加わらなかった俗に言う第三国家群と呼ばれる国家であった。

アルビレオとリヴァイアンの和平協議が行われた地であったこの国で、新世界歴は始まった。


そして瑞穂国を経由して合州国と言う国家の情報を得た旧大陸の国家は新たな国土、植民地を得る為に軍隊を派遣して侵略を行おうと考えた。

しかし、進人類のその圧倒的なまでの強さ。そして何より東西を大洋に囲まれた国土はその尽くを壊滅に追いやった。それがおよそ、三百年近く前の話。


現在、旧大陸にも多くの国家が存在し、その中でも有力な国家はアンサルド連合公国、ゲルマン公国連邦、オロシャ共和国連邦、フランク共和国と言った所だろう。

さらに合州国の新大陸の上には北方大陸と呼ばれる雪で覆われた永久凍土の大地がある事も知られている。

実に数多くの国家が存在しているこの時代で、今日も人々は生きていた。






====






深夜の繁華街、街の電光掲示板や街灯が明るく照らされ歩道には多くの人間が闊歩していた。

前日に降った雪で路面は白く塗装され、今でも雪は降り続いていた。


「はぁ…はぁ…!!」


その歩道を人を押し除けて走る影が一つ。身長は子供であり、そのボロ布で顔を隠しながら走るその人物の跡を笛を鳴らしながら警官数人が追いかけていた。


「…」


建物を縫うように走り、その人影は建物の影に隠れる。


「何処だ?」

「くそっ!見失った!」

「本部へ、対象を見失った」

『本部より現場一帯の警察官に告げるーーー』


複数の警官が無線で報告を入れて迷路のような街の通路を走っていた。

建物の影で顔を隠すその人物は手に布に包まれた細長い物を持っていた。


「…」


遠ざかって行く足音を自分の耳で確認していると、反対の真っ黒な空間から小さな鳴き声が聞こえた。


「?」


足音では無いその声に首を傾げると、その影は建物の間からぬっと顔を出した。

その姿を見てその人物はホッとした。


「子猫か…」


現れた黒猫を見て胸を撫で下ろしているとその子猫は近づいて来てその人物の持っていた細長い物の匂いを嗅ぐと、手を出していた。


「こらこら」


子猫を軽く払いのけ、その子供は大事に腕に抱えたそれを持ったままビルの影で隠れていると、遠くからライトの光が目の前を通過した。


「っ!!」


その明かりに驚いた子供はそのまま固まってしまうと、その歩いて来た影が遠目で警察であると分かった。


「…」


見つからぬ様に祈りながらその灯りが近づいてくる度に心音が増す。すると、その子供を見ていた子猫が短く鳴いた。


「ミャウ!」


その声に子供は驚き、近づいて来た警官も声を上げた。


「何だ?今の音?」


その子供は見つかると思い、咄嗟に逃げ出そうとした矢先。


「わっーー」


無数に現れた猫がその子供を覆う様に伸し掛かり、山の様に集まった猫は現れた警官が灯を照らすと、蜘蛛の子を蹴散らす様に消えて行った。


「何だ猫か…」


そう呟くと警官は去って行き、その子供は消えてしまっていた。






====






新世界歴四五一年 四月十日


春、野花が咲き乱れるこの季節。一年を通して最も魔力が溢れる季節でもある。地面の生命力が花の開花と共に活性化し、魔力も草木を通して待機中に放出されていた。

ちなみに最も待機中の魔力が枯渇するのは冬であり、太古より軍事行動は冬には滅多に行われなかった。


魔力は生きている。そんな風に捉える学者も多い。遥か昔から変わらぬ法則。四季折々の様相を見せるのが魔力であり、生物だ。

現代魔法でも古代魔法でも魔力を消費して魔法を発動させることに変わりはない。一部、霊力と呼ばれる体内に溜まっている自身の体力を使用した陰陽師や錬丹術と呼ばれる瑞穂国を中心とした極東地域にある魔法は例外であるが…。


「えぇ…この様に、現代魔法の欠点としては…」


机のホログラムで映される映像を眺めながらレオポルトは出てしまいそうな欠伸を押し殺す。正直、魔法学の授業は親父から叩き込まれているから授業を聞いていなくても問題ないんだよなぁ…この前の考査も満点とったし。


暇で退屈なので教師にバレない様に携帯を取り出してニュースを見る。

いつもは通学中にニュースを見ているのだが、今日は学校で一夜を過ごしていたのでニュースを見ていなかったのだ。すると、今日のニュースはとある記事で埋め尽くされていた。


「(へぇ…盗難ね…)」


盗まれたのは旧大陸のアンサルド連合公国の王宮に保管されていた『魔王の杖』と言われる物だ。




そう、魔王の杖。前世ではそれが腹に突き刺さって決定打となったあの杖だ。


現在、二百年戦争は一般的には引き分けと言う形だが、極一部の人間は互いに戦争を続けたままであると言う。

その証拠としてよく扱われるのがこの『魔王の杖』と『勇者の大剣』であった。前世では自分の愛剣として常日頃背中に背負っていた剣だ。

それは今、旧ヘルムート城に置かれ互いの国の友好の証であると共にガチ勢の戦争未終結の証として叫ばれていた。


何でも俺の遺体はその後業火の中に落っこちた様で、残った中から唯一血でべっとりだった杖だけを回収して本国に持ち帰ったそうだ。因みにその血は今でも付いているそうで、その勇者の血を元に勇者の血を復活させようと試みている者もいるとか何とか…。


「(良くやるよ。あそこの警備は恐ろしいだろうに…)」


そんな二大国を怒らせそうな物の盗難を良くやると思ったが、よく見るとレプリカの方が盗まれたらしい。


「(馬鹿な泥棒だな)」


そう思っていると、横でクラスメイトのアニ・シコルスキーがチョンチョンと腕を突いて来た。


「何を読んでいるんです?」

「今日の盗難のニュース」


そう答えるとアニも納得した表情を浮かべた。


「あぁ、例の魔王の杖が盗まれた一件ですか?」

「そう、レプリカを盗んだらしいよ」

「へぇ…」


アニは短く頷くと、続報を聞いてやや驚いていた。

無理も無い、伝説の武器と化している魔王の杖と勇者の大剣。それぞれ友好の証であるとされているが、二百年戦争の和平を認めていない連中はそれぞれの長を討ち取った証であると叫んでいる。


今思うとあの大剣を良くもまあ戦場で振り回したもんだと思う。本当に…。


「(実際鎧込みでどんだけの重さだったんだ?)」


ただ、一般的な矢とか剣撃はそれで防げたんだから頑丈なもんだ。おまけにあれは確かオリハルコンとミスリルで作ってたから魔法攻撃にも耐えられる訳で…。


「よっぽど頑丈だったんだな…」

「?」


レオポルトの呟きにアニは首を傾げていた。






====






放課後、レオポルト達は例のカフェに入る。


「聞いた?」

「何がだ?順序立てて言え」


初っ端から顔をやや前に乗り出してヴァージニア・パーシングが聞いてくる。


「盗難事件よ。アンサルドの王宮美術館から盗まれたやつ。偽物だったんだって?」

「間抜けな泥棒もいるんだな」


そう語るのはジャクソン・クライスラー。入学式で知り合ったアニを含めた四人はこうして何も無い時はカフェに寄り道をしている事が多かった。


「だとしても、盗まれた事実は変わりないから大変だろうな」

「そうですね。でもどうやって盗んだんでしょう?」

「さあな?そう言うのは盗んだ本人に聞きゃわかるだろう」


そう言い、ジャクソンはカップを置く。

どうせ海を隔てた向こうの国の話だ、自分達には関係のない話である事に変わりはない。それよりも話題になっているのが…。


「魔王の杖か…」

「どんな物なんでしょうね?」

「名前しか知らないわよね…」


そう、勇者の大剣と魔王の杖はまず一般公開されることは無い。今は友好の証とはいえ、戦争の火種にもなりかねない品だ。一般公開すれば広場で大喧嘩になったりする可能性がある為に、普段は何処に置かれているかも分からない状態だと言う。


「(今は関係のない話だな…)」


今の自分の愛剣は自作したベリザーナだ。自分で作ったものほど愛着はよく湧くと言うものだ。

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