#22
裏門での援護に加わったレオポルトはジャクソンのボールの射撃も見ていたが、やはりそれでも敵の数は多かった。物陰に隠れていたりしてこちらからは狙えないと思っていると誰かが叫んだ。
「M3が来るぞぉ!!」
その瞬間、地面が揺れ出し。建物の影から一台の白く塗装された履帯式の車両が現れた。それを見てレオポルト達は驚いた。
「M3ブラッドレー!?」
「何で歩兵戦闘車が学校にあんだよ!!」
「M3だから騎兵戦闘車だな」
「細かいのはどうでも良いわ!!」
最後にヴァージニアに突っ込まれ、三人は真正面に戦闘区域に突っ込んで行き二五ミリ機関砲の射撃を開始したM3ブラッドレーの陰に隠れる形で前進を開始した。さっき先輩の言っていた支援車両ってこれのことか!!
「ははっ、これだとこの学校。戦車でも持っていそうだよ」
オマケに車体には風紀委員所有のマークが記されているし…。下手しなくともこの学校、軽戦車くらいは防衛用に保有していそう…。
裏門の援護も終わり、地下のバスターミナルの方も他二つが制圧された事やM3ブラッドレーの登場で投降をしたらしく。レオポルトはジャクソン達を引き連れて校内にテロリストが残っていないかを探す為に敷地を捜索していた。
「特に無さそうだな」
ボランティアという形でレオポルトに追従してジャクソンやヴァージニアは学院内の森の中を探索する。
「こちら巡回班12、グリットB4を探索。異常無し」
『こちら本部、了解した。次にグリットA4を捜索せよ』
「了解」
無線を切り、レオポルトは森を進む。先ほどの襲撃があってから四時間が経過した。すっかりハロウィンの気分どころでは無く、気持ちは完全に沈んでいた。
「ったく、こんな日に襲いやがって…」
「こういう時だから。襲ってきたんじゃない?みんなの気が緩む時期だし…」
「ジニーの言う通りだ。この様子じゃあ、来月のクリスマスパーティーは中止かな?」
「えぇ、それは無いわよ〜。結構楽しみにしていたのに〜」
分かっては居るが、いざ言われるとなって寂しげにヴァージニアは語る。
「仕方ないだろう。こんだけの大騒ぎだ。暫くは警備も厳しくなるだろうよ」
「うわ、なんか真面目に答えられて腹立つなぁ」
「何だ、この尼ぁ?!」
「やめとけ、お前ら」
喧嘩になりそうな所を仲裁しながら三人は森を抜けると、視界の先には軍の装甲車が止まっており、他にも白色に塗装された先ほどの学院保有の軍用車両が止まっていた。
「しかし、まさか学校が戦車持っているとはね…」
「あれは戦車じゃないよ。騎兵戦闘車だよ」
「何が違うのよ?」
「そもそも積んでる砲が違うのさ。あれはM3ブラッドレー騎兵戦闘車。…まぁ、俗にいう偵察戦闘車だな」
「ふーん」
そう言い、駆けつけた部隊によって連行されて行くテロリストを見ながらジャクソンは思わず呟く。
「しかし、今日此処にアニが居なくて一安心だな」
「ええ、アニだったらまともに対処できないでしょうしね…」
「全くだ…」
そう話しながら車列を見ていると、ふとレオポルトは声をかけられた。
「あれ!?レオじゃない?」
「「「ん?」」」
声のした方を振り向くとそこには背中に狙撃銃を抱えたネルが立っていた。オリーブドラブ色の士官学校の制服を着ており、訓練兵の肩章を付けていた。
「おぉ、ネルじゃないか。久しぶりだな」
「レオもね」
「何で此処に?」
「応援でね。何だか他の学校にも襲撃したらしくって、他の場所にも応援が色々行ったらしいのよ。それで、取り敢えずひと段落した此処で警護よ」
「なるほど」
するとネルが携帯を触って確認を取ってレオポルトに言う。
「さっき、ヘンリーからも連絡が入ってね。どうやら奴ら、商工学園にも襲撃したらしいわ」
「あそこにか…金目当て?」
「さあね。私はそこまで詳しく知らないし」
そう言い、二人は親しげに話しているのを見てジャクソン達は疑問に思っていた。
「誰?」
「士官学校の制服だな」
「知り合い見たいね」
そんな事を話しながら二人はレオポルトとネルの関係に少し気になっていた。そしてジャクソンはネルを見ながら思わず口に出てしまった。
「って言うかあの子の乳でっけぇ…」
「…」
その後、ジャクソンはヴァージニアに盛大に殴り飛ばされるのであった。
「ああ、そうそう。この前の件、色々調べがついたよ」
思い出したようにネルはレオポルトにデータを送る。その間、苦笑しながら彼女は言う、
「あんたも大概余計なもん引っ掛けてくるわねぇ…」
そして送られてきたデータを読み、レオポルトはやや目を大きく見開いた。
「これは…」
思わずネルを見てしまうと、彼女は鋭い目線を向けて話す。
「貴方の友人。結構な闇を抱え込んでいるわね。よりにもよって家族が…」
「…」
データを読み、今までの経験と過去の事象からレオポルトはある考えに行き着いた。
「…ネル、ありがとう。お陰で色々片付きそうだ」
「そう…どういたしまして」
「今度好きな飯を奢ってやる。じゃあな」
そう言い残すとレオポルトは校門に向かって歩き出す。
「ジャック、ジニー。俺のことを聞かれたら先に帰ったって言っといてくれ」
「え?」
「あ、あぁ…」
そう言うとそのまま彼は去って行った。その様子を見届け、幼馴染のネルは察すると少し帽子を深くかぶて小さく呟いた。
「good luck」
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学園都市中で騒ぎとなり、至る所にパトカーのサイレンが鳴り響き。装甲車の走る音が聞こえるビルの薄暗い路地の間。そこで大柄な男と魔学院の制服を着た一人の少女は顔を合わせていた。
「例の物は?」
「…こちらに」
少女は震えた声でそう言い、男の前にUSBを取り出す。それを確認した男は小さく口角を上げると少女に言う。
「褒めてやる。これでお前も、お前の家族も助かる…良い選択をした」
「…」
もう、後戻りはできない。
これも、家族を助けるため。
自分にはこれしか出来ないから…。
そして男がUSBに触れようとした瞬間。
「おや?アニじゃないの」
「「っ!?」」
路地裏の入り口に立つ様に一人の青年が立っていた。反射的にメモリをしまってその方を見ると、その青年は首を傾げた様子で路地裏の先で立っていた。驚愕して固まっている二人にジリジリと近づいて話しかけた。
「その男の人は知り合いかい?」
「え、えぇ…」
路地裏の入り口付近で立ち止まり、彼は話す。
「それなら良かった。前みたいに変な輩かと思っていたからな。…知り合いならじゃあな。気をつけろよ、今日は危険だからな」
そう言い残すと彼は路地裏から去っていき、暫く間を置いた後に男も警戒を少し許した。
「おい、早く渡せ」
「は、はい…!!」
そして慌ててアニはメモリの端を持ってその人物に手渡そうとした時。
ダァンッ!!
持っていたメモリが上からの射撃で砕け散った。
「きゃっ!!」
「なっ!?」
その事に驚愕している隙に上から何者かが男の両肩を踏みつけた。
「がぁっ!?」
そのまま男は地面に倒れ、地面叩きつけられる。
「っ!?てめぇっ!!」
咄嗟に銃を取り出そうとした所を持っていたM686のマグナム弾で撃たれ、そのまま両腕を足で踏まれてへし折られる。
ベギッ「ぎゃぁぁあっ!?!?」
悲痛な叫びが裏路地に響き、レオポルトはその男の首を掴むとそのまま地面に何度かぶつけた。
「あ…が…」
鼻から血を流し、白目を剥いて気絶した男を一瞥した瞬間。
カチャ
レオポルトの後頭部に銃口が突きつけられる。銃を向けているのはアニだ。
「貴方…何をしたの?」
「…機密漏洩を防止しただけさ」
「…」
「怖いねぇ…いつもの気弱な君らしくない」
見ていなくても分かる。酷く怯えた感情。そして悲しさ。
「そんな物騒な物をしまってくれないか?今、その銃を下ろせば、君を見逃してあげられる」
「…」
応答はない。もう後がない証拠だろう。息も荒い。弾薬は装填されている。この距離では防壁魔法も効果は薄い。
「貴方は…自分がした事が分かっているの…?」
「それを言うなら君の方だ。わざわざサーバールームから情報を抜き出して。何をするつもりだったんだい…っ!!」
そう言い、レオポルトは一瞬のうちに振り向いた。
「っ!?」
その事に驚き、人として本能か、あるいは恐怖か、反射的に引き金を引いてしまった。
パァンッ!!
「…なっ!?」
引き金を引いてしまい、全てに一瞬絶望した彼女は次の瞬間、驚愕に包まれた。
「それはっ…!!」
発射された弾丸は銃口のすぐ先で時が止まった様に静止し、宙に浮かんでいた。そして彼女の動きが止まった瞬間。レオポルトはアニの拳銃を握っている右手首を握り、上に高く持ち上げた。
「っ!!」
その勢いで彼女は銃を手放し、彼は拳銃を遠くに蹴飛ばした。そして鋭い視線を向けてアニに問いただす。
「誰の命令だ?」
その問いかけにアニは答える。
「…違う、これは自分の意思よ」
「違うな。声が震えている。脅しを受けているな?」
「違うって言っているでしょう…!!」
少し強めに反論すると彼は続けて言う。
「なるほど…話す気は無い。と言うわけか…」
そう言うと彼はアニの腕を下ろす。彼女の持ち上がった体はそのまま地面にへたり込んだ。
「全く、迷惑な事を…」
「…ハハッ」
地面にへたり込んだ彼女はそのまま自傷する様に笑う。
「終わった…何もかもが…家族も、友人も、全部…」
そんな悲観する彼女にレオポルトは言う。
「それは、反政府組織に人質になっているお前の家族の事か?」
「っ!?何で君が…?!」
気絶する男を縛り上げながらレオポルトは少し笑って言う。
「前々から可笑しいとは思っていた。君の行動は…
帰りによく会っていたのは、俺を尾行していたから。
そして、君がよく襲われていたのは、俺を誘き出して、俺を怪我させるため。
君は思ったんだろう。俺が作戦の障害になる可能性があると…」
「…」
今の所大きな動揺はしていない。と言うことは…。
「それはおそらく一般的な意見だろう。だが、君は違う。そうじゃ無いか?」
「っ…」
「俺がよく襲われたのは俺を怪我させて学校に行けない状況を作る為だった…そうじゃ無いかい?」
「っ!?」
レオポルトの追求にアニは目を見開いて驚いた。どうやら当たった様だ。
レオポルトは男を手錠で縛ると、アニに近づいた。
「連行するの?」
「そうだな…」
「相変わらず冷徹な人…」
そう言うと、アニは両腕を前に出した。そんな彼女の眼前に彼は手を突き出すと、目の前に魔法陣が現れた。
「っ!?」
「目覚めた時、すべての事が片付いているだろう…」
そう呟くと、アニはそのまま力を失ってそのまま地面に倒れ込んでしまった。




