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普及と商業化

スコティとマーチの村の医療体制を充実させ、商会も順調に大きくなった。

そんな中、私はひとつの事を考えていた。

それは、王国中の獣人の村の医療体制のことだ。


マーチはスコティの村の状況を聞き、私に頼みに来た。

マーチの村の獣人は人間に対して比較的好意的だとは思うが、今後同様に人間に対して好意的な獣人は、コンタクトを取ってくるだろう。


その時、すぐに対応できる体制が整っているだろうか?


そして人間に対して比較的好意的な獣人の村が一通り、医療体制が充実したなら、今度は人間に対して多少疑念を持っている獣人の村がコンタクトを取ってきて、最終的に人間に対して敵意を持っている獣人の村までもが、コンタクトを取ってくると予想される。

なぜなら、他の獣人たちが健康的な生活を送っているのに、自分達だけが不健康である、これはそこの獣人達が納得しないし、仮に長老が止めたとしても、それにより、村が二分されたりという影響があるからだ。


この予想が当たる当らないは別として、大切なのは、コンタクトを取ってきた時に、対応できる体制があることだ。


私は1人、人間には私以外獣人の言葉を理解できるものはいない。

ということは、基本的な処置を獣人に教え、獣人同士で情報共有をして、生活レベルを上げる必要がある。


この方法であれば、人間に敵意を持っている獣人でも医療を受けることができる。

私はまず、スコティに相談して見る事にした。


「スコティ。この王国には獣人族の村はいくつくらいある?」

を私は尋ねた。


「猫族に関していうと30以上はある。他の犬とかビーバーとかは知らない?」

とスコティは言った。


「犬族はわかるが、ビーバーの獣人もいるのか?」

と私は驚いた聞き返した。


「ビーバー、国境沿いにたくさんいる」

とスコティは言った。


医療が必要なのが、猫族だけとは限らない。犬族もビーバー族も必要だろう。

とすれば、私だけでは間に合わない。


「スコティ。このままいくと、私一人の力では回らない気がするんだ」

と私は言った。


「そんなこと当然。私もマーチも簡単なことはもうできる。これは皆に教える。これで仕事減る。もう少し教える。そしたら、それもできるようになる」

とスコティは言った。


あまりにもできた答えなので、愛情が深まり、しばしモフモフを堪能した。

スコティは心なしか上機嫌だった。

獣人もモフモフされるのは、うれしいのか?

ふと疑問に思ったが、聞かないでおこう。


私は、スコティとマーチをメインの助手にして、二人には常に同行を求め、時間の空いた時に、医療の啓発を行ってもらうことにした。

私はこの2つに対して徹底的に指導を行った。


メインはダニ予防と食事についてだった。

『栄養と清潔』これは現代の医療でも、地味ながらも重要視される項目だ。

これに付随して、ハーブの育て方なども指導してもらった。


ハーブを自前で調達できれば、安価に清潔が保てる。

そしてそのハーブの育成技術を転用すれば、販売用のハーブも育てられるので、こちらとしても、持ち出しがなくなる。


商会のほうは、優秀なスタッフのお陰で、ほぼ自動的に回るようになった。

大きな問題や取引の時だけ、顔をみせるようにした。


医療協力を求める猫族の村は日に日に増えていった。

まずは、3人で視察し、スコティとマーチに医療指導をしてもらい、私はその村や種族特有の病や問題、そして交易の道を開いていった。

交易は主に薬草や木の伐採だった。


中には鉱脈のある村もあったが、鉱脈はなにかと問題も含む。

健康被害や領地争いなど、これらの問題があるがゆえ、そこには触れずにおくことにした。


獣人族の村は王国内にあったが、基本的に税の徴収を行われなかった。

王室も気付いていないわけではなかったが、基本的にはないものとしてあつかわれた。

ただ猫族が薬草や木の伐採で利益を上げるようになり、それで経済的な流れができるようになると、それは歓迎された。


獣人族からは直接取れなくとも、商会には納税の義務があるわけで、商会が潤えば、税収も増え、王室としても好都合だった。


この世界の獣人というのは、特殊な存在だ。現代風に表現するなら、超マイノリティーな存在だ。

まず獣人間でも、犬族と猫族であれば、言葉は通じない。

そして猫族でも、スコティとマーチの種族は、言葉が微妙に違う。

犬族と猫族であれば、英語と日本語の違い。

スコティとマーチの種族の違いは、方言の違い。

と表現するとイメージがしやすいだろう。


この言語に対して研究された書物なども存在しない。

話すにしても、身振り手振りで会話するのがやっとだという状況だ。

それに加えて獣人族は身体能力が高く、敵にすると、腹の中に虫を飼っているようなもので、いつ腹を食い破られるかもしれない。


こういう恐怖を常にどこの国でも持っているのだ。


だから私のような存在は、怖い反面、ありがたい部分もある。


私は白蛇さまが言っていたことを思い出していた。


「動物や獣人は、このままいけば、人に滅ぼされる。

頼む。救ってくれ」


救ってくれと言われても、何をすればいいって言うんだ。

あの時は、そう思った。

しかし今は少し手ごたえを感じている。


この展開でいけば、獣人を守ってやることはできる……。


しかし、ちょっと待てよ。

”動物や獣人は、このままいけば、人に滅ぼされる”

これはいったいどういう意味なんだ?


ひょっとして、間違っているのか……。



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