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獣人村とダニ

獣人の少女スコティの治療をしてから1か月がたった。

その間は、薬師としての私の仕事の手伝いと、獣医として仕事の手伝いをしてもらった。

ケガをした動物は、先日の小鳥たちや、小動物が教えてくれることが多かった。

主に罠にかかった動物の治療が多かった。

とはいえ、猟師も生活がかかっているので、どうしようかと考えた。


しかし気が付いた。


この地区には、猟師はいないことに。


私は不思議に思った。猟師がいないのに、なぜ罠だけがある。


答えは簡単だった。


昔に多量に罠を仕掛けた猟師がいて、その猟師がなくなった。

それだけだった。


私は、動物たちが罠にかかる度に、治療し、罠を回収した。

罠は鍛冶屋に売り、別の平和なものの為に活用してもらった。

途中から、動物たちが、罠のある場所を教えてくれるようになった。

報告がある度に、現地に向かい、罠を回収し、鉄くずとして売却する。

それをただひたすら繰り返した。

1か月ほどで、森中の罠はなくなった。そしてケガをする動物もいなくなった。


スコティのケガも良くなったところで、私達はスコティの村に行くことになった。

街から徒歩で1時間程の場所だった。


私は、いくつかの薬草や道具と共に、多量のカモミールとタイムとローズマリーを持って、村に向かった。


村に到着するなり、獣人たちは警戒態勢に入った。


「まって。私、人間、助けられた。

人間、白蛇さまの御使い。腕見せて」

スコティに言われて、私は印を見せる。

長老らしき獣人が近寄ってきて、腕をまじまじと見る。


「あんた、ワシの言葉、わかる」

長老らしき獣人は言った。


「あぁわかる。あんたらだけではない、鳥の言葉も、動物の言葉もわかる」

と私は言った。


「失礼した。私は長老。

この子、世話になった。

しかし帰ってくれ。

ここは人間の来るところではない」

と長老は言った。


「待って。

長老さま、この人間、私たちの呪い治してくれる」

スコティは言った。


「見て。この傷。

人間の罠にやられた。

この人間、これ治した」

スコティはみんなに見せつけるように、傷口をみせた。


「罠、あの挟む。トゲトゲの痛い奴か……あれ普通、もうダメ、あきらめる」

と若い男の獣人は言った。


「そうあのトゲトゲ。この人間、傷治してくれた。そして森中の罠を無くして、ケガした動物も全部治した」

とスコティは言った。


長老は深く頭を下げた。

「失礼した。私達も救ってもらいたい」

長老はそう言った。


長老の案内を受けて、スコティと一緒に村の中を見て回る。

人間の文明ほどではないが、道具を使うし、服も着ている。

家は人間の家と似ているが、入り口はとても狭い。

私は比較的入口の大きい集会所を、診療所として使うことになった。


まず住民の健康状態をチェックする。

目立ったのがやはりダニの被害だ。

ほぼ100%の獣人がダニの被害にあっていた。

彼らはこれを呪いと言っている。

まずこの認識を改めないといけない。

いや……呪いということでもいいかもしれない。

ただその呪いを解くすべを、医術にすりかえればいいだけだ。


「ここにカモミールとタイムとローズマリーという植物がある」

と私は獣人の前で、カモミールとタイムとローズマリーを見せた。


獣人たちに手渡す。


「神の草だから食べてはダメだぞ」

と私は注意をする。


みんなニオイを嗅いだり、かざしてみたりしている。神の草という表現に興味を持ったようだ。


そして、一人の獣人の少年に前に来てもらい。

「そして呪いを起こしているのは、このダニという小さい悪魔だ」

と、ダニを見せた。


「それ、俺の身体にもついている。あっお前の身体にも」

と集落は、パニック状態になる。


「静まりなさい」

と私は喝をいれる。


一同は静まりかえる。


「このダニは無理やり外すと、首が取れ、呪いを解除するのが難しくなる。そこで使うのが、このローズマリーだ」

と私は、ローズマリーを天にかざす。


「このローズマリーをダニに近づけると……」

一同静まり返り、ダニとローズマリーに注目する。


「あぁ悪魔が動いた」


「悪魔が嫌がっている」


そんな声が聞こえた。


「そうだ、このローズマリーの香りは、ダニという悪魔の退魔作用がある」

と私は言った。


「このローズマリー。森の中にもあった」

そんな声が聞こえた。


「ならまず、このローズマリーを村のあちこちに植えるといい。そして、ローズマリーの乾燥させた枝を寝床の下に入れたり、ローズマリーを水で煮込んだ液を薄く薄めた液で体をふくといい。そうしたら、ニオイでダニを退魔できる」

と私は言った。


集落から歓声が上がる。


「そしてこのカモミールは、体の燃える呪いを緩和させてくれる草だ。体が赤くなってかゆくなるのをしずめてくれる。これも水で煮込み、薄く薄めた液で体をふくといい。そうしたら、かゆみはなくなる」

と私は言った。


ふたたび集落から歓声が上がった。


「そしてこのタイムは、小さい目に見えない呪いを倒し、またダニも退魔する草だ。これも水で煮込み、薄く薄めた液で体をふくといい」

と私は言った。


ふたたび集落から歓声が上がった。



歓声が収まりきらぬ中、獣人たちの声が次々に上がる。

「これで……呪いが解けるのか!」

「子どもたちを守れる……!」

「人間が、本当に助けてくれるなんて……」

「悪魔じゃない、人間にも神の使いがいたんだ」

「ローズマリーを森から運んでくるぞ!」

「わしらの寝床も、これで清められる!」

興奮と安堵が村に広がっていった。

スコティは、私の横に立ち、胸を張って言った。

「みんな、私はこの人間に救われた。私の足の傷、見て!もう治った!」


村人たちは口々に驚きの声を上げ、スコティを囲む。

彼女は少し恥ずかしそうに尻尾を揺らしながらも、誇らしげに笑った。


長老が再び私に頭を下げる。

「御使いよ……。我らはあなたを歓迎する。これから、我らの村を導いてくださらんか」


私は少し迷った。


定住はできない。けれど、彼らを見捨てる理由もない。

それに、まだまだモフモフが足りない。

「週に一度でよければ、通おう。村の診療所として、ここを使わせてもらう」

そう答えると、再び村中に歓声があがった。


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