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私と万里愛(まりあ)さまの出会い

 私が倉餅(くらもち)万里(まり)()さまと(はじ)めて接触(せっしょく)したのは、都内(とない)高校(こうこう)入学(にゅうがく)して最初(さいしょ)夏休(なつやす)みが(はじ)まる直前(ちょくぜん)だった。私が(かよ)っている高校(こうこう)に、(すご)いお金持(かねも)ちの二年生(にねんせい)女子(じょし)がいるというのは情報(じょうほう)として()っていたけれど。そんな(すご)(かた)と私は、(なん)(えん)もないんだろうなぁとしか(おも)っていなかったのだ。


 そんな私は夏休(なつやす)みが(ちか)いことに()かれながら、部活動(ぶかつどう)にも所属(しょぞく)していないので放課後(ほうかご)自宅(じたく)(かえ)ろうと、学校(がっこう)のグラウンド(ちか)くを(ある)いて校門(こうもん)()かっていた。その私に、野球部(やきゅうぶ)()った硬球(こうきゅう)のボールが()んでくるとも()らずに。


(あぶ)なーい!」という男子(だんし)(こえ)()こえて、「え?」と(おも)って。見上(みあ)げると硬球(こうきゅう)が私を目掛(めが)けて()ちてくる。球技(きゅうぎ)なんか経験(けいけん)はなくて、私はその()()()ったまま(うご)けなかった。(かた)いボールが私の(かお)破壊(はかい)する光景(こうけい)()かんで、(こわ)いのに()()じることすらできない。


 だから私は、先輩(せんぱい)女子(じょし)(かろ)やかに()けてきて、左手(ひだりて)で私の(かた)()いたことも。そして素手(すで)右手(みぎて)で、私に直撃(ちょくげき)するはずだったボールを(つか)()った光景(こうけい)も、(すべ)てを脳裏(のうり)()きつけることができた。()けていた()()()んできた、彼女(かのじょ)姿(すがた)(ひと)ではなく(かみ)さまとしか(おも)えなかった。


()()って()かったわ。ケガはないわね?」


 ケガはない。でも私の(こころ)には、(けっ)して()えない(おも)いが(ふか)(きざ)まれていた。


 (かみ)(なが)彼女(かのじょ)は私より()(たか)くて、制服(せいふく)のリボンの(いろ)二年生(にねんせい)だと()かる。私は先輩(せんぱい)(かた)()かれたまま静止(せいし)していて、二人(ふたり)でダンスをしているような距離(きょり)(ちか)さだ。ふと私を()つめる先輩(せんぱい)(ひとみ)に、(ねつ)()められた()がした。


貴女(あなた)、私の(いもうと)になりなさい」


 先輩(せんぱい)が私に、そう()った。うなずく私は、その()先輩(せんぱい)名前(なまえ)倉餅(くらもち)()()()であると()って。それから私は、二人(ふたり)きりの(とき)先輩(せんぱい)を「お(ねえ)さま」と呼ぶようになった。ボールを()ったままの万里(まり)()さまは満足(まんぞく)そうに私の(かた)()いていて、野球(やきゅう)部員(ぶいん)()()ずかしそうに「あのぉ……ボールを(かえ)してください……」と()っていたことを(おぼ)えている。

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