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ヴィオレットさまの推し活

取り巻き男爵令嬢は結果青田買いになった

作者: 高月水都

「大丈夫ですか?」

 ぼろぼろに怪我をして倒れていた俺に貴族令嬢が声を掛けてそっとハンカチを差し出して傷の手当てをしてくれた。


「あっ、汚れ……」

「物はいつか汚れるものです。それに……」

 少し言い淀んで、

「貴方に怪我をさせた生徒はわたくしの婚約者だったので……」

「婚約者……? えっ、あの伯爵令息は幼馴染(ナタリー)の……」

 侍らせている男子生徒と言えばいいのか、傍にずっといる生徒と言えばいいのか。どちらを選んでも婚約者だと言ったこの令嬢を傷付けないだろうかと言葉を選ぶ。


「気にしないでください。もともと男爵令嬢のわたくしのことをよく思っていなかったですし、ナタリーさんのことが無くても婚約は無くなっていたでしょうから」

 そっと悲しげに微笑む。


 淡い金茶色のまっすぐ腰まで伸びて、頭に天使の輪があるほどつややかで綺麗な髪。紅葉を思わせる赤茶色の目。

 あでやかとか目を引くという感じこそないが素朴な顔立ちで可愛い……。

(見る目がないな……)

 さっき人をぼこぼこにしてきた生徒を思い出す。


(なんでナタリーなんかを好きになって婚約者を捨てたんだ?)

 正直幼馴染だから言えるが、ナタリーはない。


 大事なことなのでもう一度言おう。ナタリーはない。


『私はヒロインなのよっ!!』

 幼い頃から変なことを言い出して、いろんな男たちに粉を掛けて自分の取り巻きにする。

『あんたはサポートキャラなんだから私の傍にいなさい!!』

 と意味不明なことを言って俺に何かを作らせる。そして、作らせた薬とか道具を、

『幼馴染だからただでいいでしょう。ったく、ゲームのあんたはなんであんな高額な値段で売っていたのよ。がめついわね!!』

 とせめて材料費くらいほしかったのにそれすら渡さずに持っていった。で、それに苛立ったので作るのをやめたら周りの男に泣きついて無理やり作らせたこともあったのだ。


 正直、あいつとは縁を切りたい。だけど、あいつは俺が【サポートキャラ】だからという意味が分からない言葉でくっついてきて、それがあいつにとって特別な存在のように見えるからかあいつの取り巻きになっている貴族令息から様々な脅迫をされたり暴力を振るわれる。


 それでいてこの中途半端な脅しにするのは俺に何かあったらナタリーが目に涙を溜めて――むろん嘘泣きだが――心配するのが気に入らないからそれ以上をすることに躊躇いがあるようだ。


 これで俺をこっそり消したらナタリーが俺のことを忘れないで探し続けるだろうと心の男になるのが嫌だとか。はっきり言おう。ナタリーにどんな夢を見ているんだ。


 あんな暴君よりもこの令嬢の方が素敵なのに。あの一見大人しめで可憐な雰囲気で皆騙されている。


「ハンカチ洗って返します」

「気にしないでください。……捨てるつもりだったので」

 綺麗に刺しゅうされたハンカチ。おそらく誰かにあげるつもりだったのだろう。悲しげに目を伏せる様に、そのあげるつもりだった相手が分かってしまった。


「で、でも、洗って」

「クラリス。どうしたの?」

 洗って返すと言い掛けたらその言葉を遮るように女性の声が届く。ナタリー曰く【悪役令嬢】のメリクリウス公爵家のヴィオレット嬢。と、貴族子女たち。


 ナタリー曰く、【悪役令嬢とその取り巻き】がハンカチを差し出してくれたご令嬢――クラリス嬢というらしい。


「すぐ戻ります」

 クラリス嬢がヴィオレット嬢の元に向かい、女性陣は去って行く。


 その時はこれでもう会えないんだろうなと少しだけ残念に思った。




 と思ったんだよな。

「たっ、助けっ!!」

 必死に暴れる音と声。


「いいのかよ。俺に逆らったらお前の領地の商品買う奴いなくなるぞ」

 そんな脅しに物音が収まる。


「そうそう。そのままじっとしていろよ」

 何が起きているのかと気になってそちらに近付くとクラリス嬢を押さえつけている二人の貴族令息。クラリス嬢の口や腕を押さえ込んで抵抗できないようにしている様にかっとなって、勢いよくドアを開いて、

「何をしている!!」

 と怒鳴り込む。


「なんだお前。ああ、平民か」

「なんだ次期伯爵に逆らうつもりか?」

 馬鹿にするように笑い、

「いいところだったのに邪魔すんじゃねえよ」

 と腹を勢いよく蹴り飛ばされる。


「あんな邪魔放っておいて続き♪ 続き♪」

 と無理やりクラリス嬢の制服を脱がそうとするが……。


「――何をしているのかしら」

 ドアを立ち塞がるように立っているヴィオレット嬢。扇で口元を押さえて、優雅に微笑んでいるが目は笑っていない。


「空き教室に女子生徒を無理やり連れ込んでの暴力沙汰。ああ、嘆かわしいですわね。――この件はわが家を通して報告させていただきます」

 ヴィオレット嬢の後ろから警備兵が現れて貴族令息を捕らえていく。抵抗しようとするがヴィオレット嬢が、

「大人しくしなさい」

 と微笑みながらの一喝であっという間に大人しくなった。


「クラリス。だから離れてはいけないと言ったでしょう」

「も、申し訳ありません……」

 頭を下げるクラリス嬢にヴィオレットは気遣うようにそっと手を差し伸ばす。


 クラリス嬢は怖かったのだろう身体を小刻みに震えているが気丈に微笑んでいる。貴族としての矜持なのだろうが、その様に慰めたくもなるし、そこまでして守りたい誇りを尊重したい気持ちになる。


「モーリスさんでしたね」

「えっ⁉ は、はい!!」

 ヴィオレット嬢にいきなり名前を呼ばれて驚く、名前を知っているとはまさか思わなかったからだ。


「クラリスを助けてくださってありがとうございます」

「いえ。結局助けたのはメリクリウス公爵令嬢だったので……」

 自分は役に立たなかったと慌てて首を横に振ると、 

「貴方が居なかったらわたくしは間に合わなかったでしょう」

 と訂正される。


「歯がゆいものですね。わたくしの力が及ばないのを痛感させられますよ」

「い、いえっ!! ヴィオレットさまはわたくしを守ってくださっています。わたくしが油断したから……」

「だけど、守り切れなかったわ」

 ごめんなさいと謝っている様を見て、

「あの……どういう……」

「ああ。そうね。――モーリスさんにも関係あるかもしれないわね。本当はナタリーさんにも関係あるはずの内容だけど」

 とヴィオレット嬢が話をしてくれたのは高位貴族……王族の学園での暗黙のルール。


 表向き平等と言えど、学園の外に出ればそうでもないし、貴族の中には自分よりも身分の低い者たちを脅す者も多々居る。


 それゆえ、高位貴族や王族は学園内で優秀な人材の発掘を目的に身分の低い者たちを庇護するという役目がある。


「この学園に庶民が入れる時点で優秀さが分かります。その才能を活かして、人材を確保する。学園の成績以外にそれらの行動をわたくし達は常に見られているのですよ。ですが、一人の女性を数人の高位の方々が優遇しているので……」

 そこで安定が崩れてしまったと嘆く。


 ああ、そういえば、ナタリーを多くの貴族令息が取り囲んでいるな。ヴィオレット嬢の婚約者である第二王子も。


(見る目ないな)

 何であんな女に引っ掛かるんだ。先日あいつが貴族令息に渡していたハンドグリップは俺があいつに言われて作った物だったな。

『これで好感度上がったわ』

 と意味不明なことを言って製作費をよこせと言ったのに渡さなかったな。


 腹立ったからもう作らないと言ったら自分の取り巻きの貴族に泣き縋って、結果殴られた。

『私の【サポートキャラ】なんだから言うことを聞きなさいよ。じゃないとまた誰かにお願いしちゃうから』

 わざわざそんなことを言いに来たあいつは自分の思うようにことが行くだろうと確信しているようにしか思えない。


 つまり、ナタリーの取り巻きになっている連中が風紀を乱した結果こんなことがまかり通ってしまったと言うことか。


「幼馴染がすみません」

 謝罪すると、

「謝罪はいりません。貴方の責ではないので」

 ヴィオレット嬢がそう言ってくれるけど彼女の心労は計り知れないだろう。


「……せめて、わたくし達が居なくても彼女たちを守れる術があれば」

 守る術……。


 ヴィオレット嬢の独り言に常日頃ナタリーに無茶振りされてきた影響か。

「それなら作ってみたいものがあって」

 思いついたアイディアをたくさん語りだすと、

「ああ。それなら、エアニウムを使えば軽量化できませんか。わたくしの領地はエアニウム鉱石が多く産出しているんですよ」

 空気のように軽いと例えられている鉱石の名前を出されて確かにと納得する。ちなみに軽すぎて加工しにくいと言われているがなれてしまえば簡単だし、貴重な資材なのにその加工が大変なことで価値が低かったので、安く手に入った。


 ちなみに元婚約者はその加工技術を持つ人が領地にいたからこその婚約だったのだが、その所為で足元を見られていたとか。


「エアニウムの簡単な加工技術発見しました」

 クラリス嬢からエアニウムを安値で仕入れた――そこは親しき仲にも礼儀ありだ――ので実験してみたら、エアニウムは水槽の中に入れてその中で加工をすればやりやすいというのが判明したのでその技術を教えた。今までエアニウムを加工できなかった職人も加工できるようになったとクラリス嬢が喜んでいた。


 そんなクラリス嬢にもっと喜んでほしい。彼女の役に立ちたいと思えるのはきっと……。

(身分が違いすぎるからな)

 ならばせめて彼女のためにもっといろいろできることをと考えて、創意工夫した結果様々な発見があった。


 …………どうも職人の中にはエアニウムが加工できないだけで繊細な技術を持つ人が多かったのだが、エアニウムが加工できないというだけで元婚約者のところから来た職人や商人たちに足元を見られていたとか。


 クラリス嬢からすればそんなエアニウムの使い道が増えてほしいと思っての提案だったがみごと当て嵌まったと言うことだ。


「モーリスさま。ありがとうございます」

 嬉しそうに新しい発見があるたびに喜んでくれる。


「モーリスさま。あの、もしも学園を卒業してからの進路に……」

 クラリス嬢が思いついたかのように何かを言い掛けて、そっと首を横に振る。


「いいえ。なんでもありません」

 寂しげに微笑む。


「そっ、それより。この部分を我が領地で取れた小型の魔石で応用できませんか?」

「そうですね。装飾品に思わせて交換可能な魔石にしたら……」

 微妙に距離の置いた位置でそれぞれ言い合うさま。おそらくクラリス嬢も俺も同じことを思っているだろう。だけど、俺は身分の差で言い出せず。クラリス嬢もクラリス嬢で言うことは出来ない。


 そんなジレンマの中で開発された。




「と言うことで、防犯魔道具を作りました」

 クラリス嬢の協力もあり、小型の簡易結界を張れる魔道具を開発した。

「まあ……、よくエアニウム鉱石を加工できましたね。しかもこんな細かい魔法陣を」

 一見模様の描かれている金属のペンダントに見えるが、実は魔法陣である。


「クラリス嬢に他にも自然で面白いものがあるか尋ねたら大きさを自由に変換して転写させる道具もあって」

「今まで退治しても使い道のなかったハリネズミの針で彫ってくれました」

 あと、今まで使い道のないと思われていた諸々が小型化するに至って便利なことに気付いたので存分に利用させてもらった。


 ちなみに作っている間にナタリーの襲撃が無かったから無事に作れたともいえる。


「クラリス嬢がいろいろアイディアをくれたおかげで……」

「いえ、モーリスさまが試行錯誤してくれたからです」

 互いに褒め合っていると、

「仲いいのね」

 微笑ましげに告げられる。そんなことはないと二人で反論するとヴィオレット嬢が少しだけ考え込むようにしてから。


「――まあ、そういうことにしておきましょう」

 と軽く流してくれる。


「……………」

 ヴィオレット嬢がじっと試作品を見て、使い方を確認する。


「……ヒロインのパシリ扱いされるだけではもったいない人材ね」

 小声で何か呟いて、

「モーリスさん。貴方」

 ヴィオレット嬢が告げた内容に俺よりも先にクラリス嬢が嬉しそうに笑みを浮かべて、

「流石です!! ヴィオレットさまありがとうございます」

 自分のことのように喜んでくれるのだが、いくら何でも自分には重いと思って断りの文句を言おうとしたが、

「――わたくしの提案に乗れば貴族令嬢に結婚を申し込めるわよ。そう、男爵令嬢とかなら」

 扇で口元を押さえてそっと耳元で囁かれる。


 先ほどのことを流してくれなかったのかと思いつつもその甘い提案に断るなどと言う選択はなく。


 ごくりっ

 その提案につばを飲み込んで頷いてしまった。





「アルさまの好感度を上げるためにブックカバーを作りなさい!! 手作りの刺しゅう入りのブックカバーを見てその作りを見て感動するというシーンがあったんだから綺麗に作りなさいよ!!」

 久しぶりにナタリーが俺のところに来てそんなことを言い出してくる。ちなみにアルさまというのはもしかして第二王子のアルフレッドさまのことかと思ったがいったらやばい気がしたので聞かないでおく。


「そう言えば、最近貴族令嬢の間に防犯魔法具が流行っているけど、あれあんたの作ったのでしょ!! 何で私の作れって言ったものを作らないであんなのを作るのよ!! って、言うか私の前世の知識を流用したでしょう。アイディア料渡しなさいよっ!!」

 アイディア料って、何考えているんだこいつ。と思ったけど、こいつは昔からそうだったと思い返す。


「って、何しているの?」

 ナタリーは俺の部屋に物がほとんどない状態になっているのに気づいて辺りを見渡す。


「ちょっ、ちょっと!? 工房はっ⁉ あんたの工具が全くないじゃない!! これじゃあアイテムがっ⁉ ど、どうしてくれるのよっ⁉」

 ナタリーが必死に隠していないかとわずかに残っている荷物を漁っている。


「どういうことなのよっ!!」

 やっとこっちを見てくるナタリーにやっとかと少し皮肉気に笑い、

「父さんたちには報告済みだけど、メリクリウス公爵が支援をしてくれる形で雇ってもらったんだ。で、公爵家の寄り子。だっけな。公爵家の派閥の男爵家に養子にしてもらったんだ」

 高位貴族は学園内で将来有望な下位貴族とか庶民を見極めて自分の庇護下に置く。それで目を付けてもらったのだ。


『わたくしの庇護下という前提で貴族の養子になれば絡まれにくくなりますし、男爵令嬢(クラリス)と結婚も叶いますよ』

 養子先の男爵家はすでに跡取りもしっかりいる。俺を養子にして公爵家に恩を売れるし、クラリス嬢の家はクラリス嬢が婿取りをして跡を継ぐ事が決まっているので縁が出来るのもいいことらしい。


 第一、

「お前の言う【サポートキャラ】という意味の分からない理由で絡まれることもなくなる」

「えっ……。じゃあ、誰が課金アイテムを作ってくれるの? あんたがいないと攻略キャラを攻略できないじゃない」

 相変わらず意味が分からないことを言ってくる相手に、

「なあ」

 前から気になっていたことをここで聞く。


「ナタリーは俺の名前覚えている?」

「えっ?」

 ずっとサポートキャラとか幼馴染とかあんたとか言われているけど名前を呼ばれた記憶がない。昔は呼ばれていたかもしれないが。


「えっ。そ、それは……」

 言い淀んでいるナタリーに、

「俺はお前の都合のいい道具じゃない」

 奴隷とか召使かもしれないがナタリーはずっと俺を都合のいい存在扱いしていた。


「なっ、何を……」

 必死に反論するが言葉が出ないだろう。


「モーリスさま」

 ドアのノックと共に侍女を連れてクラリス嬢が現れる。


 貴族の養子になるのが決まってすぐにクラリス嬢に告白した。元庶民が図々しいと思ったが、クラリス嬢は受け入れてくれた。


 最初は躊躇っていた。やっぱり庶民ではダメなのかと思ったけど、

『婚約破棄されたバツイチ女をわざわざ選ぶ必要はありません』

 という理由だったので、婚約破棄はバツイチにならないとか人を殴ってきた男と同じ感覚にしないでほしいと伝えて、最終的にクラリス嬢の素晴らしいところを語り続けた。


 男爵家だから別に貴族相手と結婚する必要はなく、相手が庶民でも関係ないし、俺の発明で今まで貧乏だった暮らしが楽になったという実績だけでも婿に迎えるのに躊躇う必要はないと言われたのだ。


 そう、魔道具の開発だけでなく、今まで皮肉なことにナタリーによってもたらされた無茶ぶりでクラリス嬢の男爵家に役に立ちそうな道具のアイディアが次々と浮かんできて開発が進んだのだ。


 初期投資こそ大変だったが、そこはヴィオレット嬢が助けてくれる。そこで恩を売るのも上位貴族の役目だと笑いながら。


 ヴィオレット嬢の実家が支援してくれるから俺の魔道具の権利もしっかり守られることになった。


 もう、ナタリーが俺に無理やり作らせるために手を回そうとしても公爵家を敵に回せない以上無理だろう。第一、クラリス嬢と婚約するという話が出た時点でナタリーの取り巻きが手を出す必要もなくなった。



「じゃあな」

 幼馴染だった存在が信じられないと呆然としている隙に部屋を出て、クラリス嬢と共に新しい新居兼工房に向かう。


「クラリス嬢に会えてよかった」

 いろんな意味で幸せだと思ったから漏れる言葉に。


「じゃあ、わたくしは貴族らしく優秀な人材を手に入れたのですね」

 最初に心惹かれた時と同じような笑みを浮かべているので、確かに捕まったなとむしろクラリス嬢のためなら何度でも掴まっていたいなと初めてナタリーの取り巻きの男性陣の気持ちを理解した。

前世の記憶があった。


前世とあるゲームをやっていてそこで【推し】を見付けた。

推しはヒロインの【サポートキャラ】で攻略キャラと仲良くするために協力。情報。プレゼントを常に用意してくれるキャラで、最終的にヒロインと攻略キャラの幸せを見守っていた。

そして、サポートキャラの推しはヒロインが攻略失敗すると告白してきて、結婚するBADENDキャラとも言われていた。


それが不愉快だった。

好きな子に利用されて、都合のいい男扱い。BADENDルートと言われるほど。


だからそのゲームの世界に転生して【推し】に会えたら推しとヒロインの関係を確かめたかった。


推しがヒロインをどう思っているか。ヒロインのことをゲームのように恋愛対象なのか。


だけど、違った。ヒロインは都合よく利用する相手で推しはそれをよく思っていない。ならばこそ、彼を助けよう。


自分の庇護下の男爵令嬢と推しがそれぞれ相手を意識しているのなら障害を取り除くのに協力しよう。


「悪役令嬢に転生してよかったと思えることね。権力もあるし、恩も売れる」

 ヴィオレットはモーリス(推し)とクラリス(寄り子)の幸せそうな横顔を見て満足げに微笑んだのだった。




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