グレータ・シュタウピッツのお茶会 1
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「え? お茶会、ですか?」
ジークレヒトとフードの男の密会を目撃した夜から五日が経った。
夕食の席でディートリヒからお茶会の招待状が来ていると知らされたわたしは目を丸くする。
というのも、これまでもわたし宛のパーティーやお茶会の招待状は届いていたが、わたしが嫌がるとわかっているディートリヒやオイゲンが気を回して断りを入れてくれていたので、わたしまで情報が回ってこなかったのだ。
……ってことは、今回は断りにくい相手ってことね。
わざわざ知らせてきたということは、そういうことなのだろう。
「ええっと、主催者はどちら様ですか?」
「シュタウピッツ公爵夫人だよ」
「シュタウピッツ公爵夫人って……ん? ジークレヒト……様、のお母様ですか?」
危ない危ない。危うくジークレヒトを呼び捨てにするところだった。心の中でいつも呼び捨てにしていたせいか、驚きすぎたせいか、うっかり「様」を忘れるところだったわ。
ディートリヒはわたしのうっかりに気がついたようで、小さく笑って続けた。
「うん、ジークレヒトの母上……私の伯母上からの招待状だ」
あー、そっか。たまに忘れそうになるが、ディートリヒとジークレヒトは従兄弟同士だった。
グレータ・シュタウピッツと聞いて思い出すのは、わたしのお披露目パーティーのときにちらりと見た、ちょっとキツそうな外見の美人だ。
……気が進まないなぁ。
ジークレヒトの母親が主催と言うことはジークレヒトもいるかもしれないし……、あの日のグレータの様子を思い出す限り、あまり関わり合いになりたい相手ではない。
しかしディートリヒが断らなかったということは断れなかった相手なのだろうから、行きたくないとごねれば彼に迷惑をかけることになるだろう。
「今回は女性だけの集まりと言うわけではないようだから、私も一緒に行けるし……、その、王妃様にも招待状が届いているようなんだ」
ディートリヒが言葉を濁したので、恐らく国王からわたしも出席させるようにと言われたのかもしれない。
アレクサンダーは侍医の一件以来フランツィスカの周囲を非常に警戒しているので、お茶会の席でもわたしにいてほしいのだと思う。万が一が起こったときに、すぐに聖女の力(は持っていないけど、つまるところ癒しの力)が使えるように側に置いておきたいのだ。
パーティーのときでも見たように、グレータは国王であるアレクサンダーにも強気なので、お茶会を断るのは不可能だったに違いない。
「わかりました」
「……いいの?」
断れる状況ではないとわかっているだろうに、ディートリヒはとても申し訳なさそうな顔をする。
だからわたしは、彼が気に病まないように、にこりと微笑んだ。




