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第99話 蒼銀の双子姉妹 後編

前回のあらすじ

ジュリウスに弁当を届けよう

 

 王城の中はとても綺麗で、壁や柱の装飾とかもとても凝っていた。

 普段見る事の出来ない場所だからシーちゃんと揃ってキョロキョロと見回していると、ママがフフッと微笑む。


「見ててそんなに楽しいの?」

「うん、楽しいよ」

「だって普段入れない場所なんだもん。ママは違うの?」

「昔働いてた場所だからねぇ。今更って感じかな」


 確かに昔、そんな話を聞いた気がする。

 子育てに専念するために、仕事を辞めたんだとか。


 ……と言うか、こういう場所って優秀なヒトじゃないと働けないと思う。

 だとすれば、ママって実は優秀なヒトだった……?


 なんて考えていると、廊下の向こう側から辺りをキョロキョロと見回しながら小走りしているパパの姿を見かけた。

 どうやら誰かを探しているらしい。


「ジュリウス!」

「うん? あれ、ティア? それにシエルとノエルも。どうしたの?」

「朝お弁当渡し忘れちゃって届けに来たの。はい、お弁当」

「ありがとう」


 パパがママからお弁当を受け取ると、ママが尋ねる。


「ジュリウス、どうかしたの? 誰か探してたみたいだけど……」

「うん。姫殿下を探してるんだけど、全然見つからないんだ」

「手伝おうか?」

「良いの?」

「うん」

「助かるよ。それじゃあシエルはティアと、ノエルは僕と一緒に行動しようか。見つけたらアーニャの執務室に連れてきて」

「分かったよ」


 アーニャって確か……私の記憶が間違ってなければ、アナスタシアって言う人名の愛称だったハズだ。

 そしてこんな場所でパパが働いてるんだから、対象は自然と一人に絞られる。


 それに同じく気付いたらしいシーちゃんが、そっと耳打ちしてくる。


「……ねえ。もしかしてだけど、パパって女王陛下の事愛称で呼んでる?」

「……たぶんね。不敬とかになったりしないのかな? 相手は国家元首なのに……」

「ならないよ。元々クラスメイトだったからね、僕とアーニャは」


 私達の声はパパに聞こえていたようで、そう答える。

 と言うか、元クラスメイトって、パパの学生時代っていったい……。


「……っと。そんな事より、早く姫殿下を探さないと。ティア、そっちは任せたよ」

「うん、任せて」

「ノエル、ついてきて」

「うん」


 そう答え、私はパパの後をついて行った―――。




 ◇◇◇◇◇




 パパの手伝いとして私も辺りをキョロキョロと見回すけど、初めて来た場所だからあまり役に立ちそうにない。


 なんて思っていると、ある部屋のドアがほんの少しだけ開いている事に気付いた。

 パパは気付いていないらしく、そのまま素通りしてしまっていた。


 私はそちらに近付き、ドアを開ける。

 キョロキョロと室内を見回すと、部屋の隅に蹲る小さい女の子を見つけた。


 後ろ姿だけど、氷を思わせる青くて長い髪とフリルがふんだんにあしらわれたワンピースを着ていた。


 まさかなぁ……と思いつつ、私は声を掛ける。


「あの……姫殿下?」

「!?」


 ビクッ! と身体を震わせた後、恐る恐る私の方を振り向く。

 そして、キョトンと可愛らしく首を傾げる。


「……? 誰ですか、貴女?」

「私は、えっと……ジュリウスの娘です」

「ジュリウスさんの娘ですか!?」


 パパの名前なら知ってるかな? と思ったから名前を出したけど、どうやら図星だったようだ。


「もしかしてジュリウスさんに頼まれたんですか!?」

「えっと、まあ……はい」

「あ、あのあの! ここにいる事は黙っていて――」

「ハァ……見つけましたよ、姫殿下」


 声のした方を振り向くと、部屋の入口に肩で息をしているパパの姿があった。

 姫殿下はパパの姿を見て、私の背中に隠れてしまった。


「アーニャ……お母上も心配なさっていますよ。お戻りになりましょう、姫殿下」

「イヤです!」

「何故です?」

「だって……だってお母様、わたくしが朝食に出たニンジンを残した事をまだ怒ってますもの!」

「……」

「……」


 姫殿下の主張に、パパと私は思わず顔を見合わせる。

 十才くらいの小さい子供なら好き嫌いがあって当然だけど、コレは……。


 なんて思っていると、パパはフッと微笑む。


「そんな事でお母上は怒りませんよ」

「でも怒ってましたもん!」

「姫殿下のために注意しただけですよ、きっと」

「むぅ〜……本当ですか?」

「ソフィア!」


 すると今度は、慌てた様子の女王陛下が入ってきて……って、女王陛下!?

 その女王陛下はと言うと、私の横を通り抜けて姫殿下を抱き締める。


「ああ、ソフィア! 心配したんですからね!」

「お母様……朝食の事、怒ってないんですか?」

「まさか。ソフィアには善き女性に育って欲しいからこそ、好き嫌いは無くして欲しいんですよ」

「お母様……」


 女王陛下は姫殿下との抱擁を解くと、その頭を優しく撫でる。

 その顔は一国の王と言うより、何処にでもいる一人の母親の顔だった。


「それにですね、ソフィア。実はわたくしも、ピーマンが苦手なんですよ?」

「えっ? でもお母様、普通に食べてたんじゃ……」

「娘の手前、お手本にならないとでしょう? なので少し見栄を張ったんですよ。出来ればあんな苦いだけの緑色の物体、食べたくなんてないですよ」

「ふふっ……お母様でも苦手な食べ物あるんですね」

「ええ。ですからね、ソフィア。今度はわたくしと一緒に苦手な食べ物を克服していきましょう?」

「はい、お母様!」


 姫殿下は笑顔で頷くと、女王陛下に抱き着く。

 頭を撫でながら抱き締め返しつつ、女王陛下はパパの方に目を向ける。


「ジュリウスさん、お騒がせしました」

「いや。無事に見つかって良かったよ」

「では先に戻りますね。行きましょうか、ソフィア」

「はい、お母様」

「あ、そうです。ジュリウスさん、せっかくですから、娘さん達に城内を案内して差し上げては如何ですか?」

「良いの?」

「ええ。今はそれほど忙しくはないので。ではまた」


 女王陛下はそう言い残すと、姫殿下と手を繋いで部屋を後にする。


「姫殿下も無事見つかったし、ティア達と合流しようか」

「うん」


 その後、ママ達と合流した後、パパが王城の中を案内してくれた―――。






きちんと母親もやってるアーニャ。




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