第96話 幸せへと至る道
前回のあらすじ
スプリガンはもう死んでいた
新婚旅行から戻ってきてから三ヶ月後。
ティアの着るウエディングドレスや式場も決まり、今日はこっちで挙げる結婚式当日だった。
あまり時間があったわけじゃないのに、こんなに早く式を挙げられるように奔走してくれたレティシアには頭が上がらない。
後でお礼として、オルレアン商会で高めの物を買おうと心に決める。
あっちでのタキシードは白だったけど、こっちでは黒のタキシードにしていた。
理由はウエディングドレスと同じだ。
僕の着替えは終わったから、ティアのいる控え室へと向かう。
今回も、ティアのサポートをジェシカとジェニカがやってくれていた。
なんで妹二人がいるのか?
それは、二人が先月突然僕達の下にやって来たからだ。
何でも、「こっちでお兄ちゃん達がどんな生活をしてるのか知りたかったから。後、単純にニブルヘイム皇国を旅行したかった」らしい。
ジェシカとジェニカらしいと言えばらしかった。
閑話休題。
控え室のドアをノックすると、中から妹の声が返ってくる。
「は〜い」
「僕だけど。入って良いかな?」
「お兄ちゃん? ………………うん、大丈夫だよ」
間があったのは、ティアに確認を取っていたからだろう。
許可も降りたので、ドアを開けて中に入る。
中にはジェシカとジェニカ、それと当然ティアの姿があったんだけど……うん。椅子に座っているティアの姿に見惚れていた。
白いウエディングドレスも似合ってたけど、元が良いからなのか黒いウエディングドレスもすごく似合っていた。
……ノロケ? そうだよ。
「あ、ジュリウス……どう?」
「その……うん、すごく似合ってるよ」
「お兄ちゃん。もうちょっと何かないの?」
「ティアお姉ちゃん、こんなに綺麗なのに?」
「だからだよ。見惚れて、似合ってる以外の感想が出ないんだよ」
「……」
「……えっ、ノロケ?」
「ティアお姉ちゃん、顔真っ赤……」
すると、コンコンとドアをノックする音が響く。
振り向くと、ここの式場のスタッフが入ってきた。
「新郎新婦様、そろそろお時間です」
「分かりました。……行こうか」
「ええ」
ティアは椅子から立ち上がると、僕と腕を組む。
ティアはスタッフからブーケを受け取り、ドレスの裾をジェシカとジェニカが支え、僕はティアを連れ式場へと向かった―――。
◇◇◇◇◇
結婚式には僕達の関係者―レティシアやアーニャ、職場の同僚とか―が参列してくれて、僕達を盛大に祝福してくれた。
そしてその日の夜。
僕達の家に泊まっていた妹二人は、「今夜はお邪魔出来ないから」とか変な気を回して、街中にある宿屋に泊まると言って今家にいなかった。
「な、なんで二人は急に、街中の宿屋に泊まるって言ったんだろうね?」
「……なんでだろうね」
寝室でティアと並んでベッドの端に座り、ティアは二人が家から出た意味を悟ったのか顔を少し赤くしていた。
……全く。変に気を回さなくても良いのに。
そうは思っても、妹達の心遣いに感謝している事も事実だった。
なんて思っていると、ティアが僕の方へと身体を寄せてくる。
肩と肩がぶつかり、お互いの体温を直接感じ取れる距離感だった。
「……ジュリウス。一つお願いしても良い、かな……?」
「何?」
「あのね? ジュリウスとの二人きりの生活は悪くないし、すごい幸せだけど……もっと幸せになりたいし、この幸せを分かち合いたいの。……だからね、ジュリウス? わたし……子供が欲しいの。わたしとジュリウスの愛の結晶が……」
「ティア……」
最愛の妻の名前を呟き、頬に手を添えて僕の方に顔を向かせる。
顔は羞恥からか真っ赤だし、瞳は熱に浮かされたように潤んでいる。
でも、だからこそ魅力的に映ったし、自然と唇を重ねていた。
「ティア……」
「ジュリウス……」
「僕も……僕も、ティアとの子供は欲しいよ。女の子なら、ティアみたいに可愛い子だろうし」
「なら男の子だったら、ジュリウスみたいにカッコ良い子だろうね」
「そうなったら良いね」
「……」
「……」
お互い無言のまま、見つめ合う。
ここから先は言葉にせずとも分かる。
再び唇を重ね、優しい力加減でティアを押し倒す。
ティアはそれに抗う事なく、むしろ受け入れるように僕の背中に腕を回す。
それから僕達は、お互いの愛を確かめ合う行為以上に、子供を作ろうという目的のために身体を何度も重ねた―――。
おそらく次回が、ジュリウスが主人公としての最終回です。
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