第89話 妹達と再会
前回のあらすじ
装備を新調した
新婚旅行と称してルージュの街に戻ってきてから二週間が過ぎた。
当初の予定では、往復の移動で二ヶ月掛かってしまうから、ルージュの街に二週間、オーロラの街に二週間滞在するつもりだった。
だけど、リオのお陰(?)で往路の移動時間が短縮されたから、ルージュの街とオーロラの街にそれぞれ一ヶ月くらい滞在する予定に変更していた。
普段が休みがあったとは言えそこそこ忙しかったから、こっちにいる間はのんびりと過ごして英気を養いたかった。
だから今日もティアと一緒に、街中を散策していた。
今日は春らしくぽかぽかとした陽気で、絶好の散歩日和だった。
いつも通りティアと手を繋ぎ、ゆっくりとした歩調で通りを歩いていく。
「あったかいね」
「そうだね。今の時期だと、あっちはまだ寒いからね。戻る時期を考えると、丁度暖かくなる時期になるんじゃないかな?」
「じゃあ、新婚旅行の時期は丁度良かったのかな?」
「たぶんね……うん?」
すると、通りを走る馬車の一台が僕達の傍で停まる。
普通なら多少は警戒する所だけど、その馬車はウチで使ってる物だった。
だから然程警戒しなかったけど、馬車の中からジェシカとジェニカが現れたのは少しだけ驚いた。
「「ティアお姉ちゃん!」」
そんな二人は、実の兄そっちのけで義理の姉に勢い良く抱き着く。
「久しぶり、二人共」
「ティアお姉ちゃん、いつからいたの?」
「二週間前からかな」
「いつまでいるの?」
「再来週くらいかな」
「じゃあ、いっぱい遊ばないと。ね、ジェニカ?」
「そうね、ジェシカ」
「……二人共、僕には?」
「あれ? お兄ちゃんいたの?」
「気付かなかったよ」
薄情と言うか何と言うか、二人は本当にティアの事が好きみたいだ。
「と言うか、二人って学校に通ってたんじゃないの? 何で戻って来てるの?」
「えっ? そりゃあ、卒業したからだよ」
「卒業? 卒業って事は、卒業式があったんじゃないの? 父さん達ずっとこっちにいたけど……」
「私達の方から来なくていいって言ってたんだよ」
「だからパパもママも卒業式には来なかったの」
「そうなんだ」
学園を退学になった僕が言う事じゃないとは思うけど、卒業式は一大イベントのハズだ。当人にとっても、親にとっても。
それを妹達は……まあ良いや。当人達がそれで良いって言うなら僕から言う事は何もない。
二人はティアとの抱擁を解くと、僕に尋ねてくる。
ちなみに馬車は僕達の前から去っていて、屋敷の方へと向かっていた。
「ところで、二人は何してたの?」
「えっ? 普通に散歩――」
「お散歩デートしてた所よ」
僕の言葉を遮り、ティアがそう答える。
その答えに、妹達は色めき立つ。
「えっ、デート!?」
「ティアお姉ちゃん、お兄ちゃんと付き合ってたの!?」
「付き合ってるどころか、少し前に結婚したんだよ、わたし達」
「「本当、お兄ちゃん!?」」
「うん、本当だよ」
ジェシカとジェニカの質問に答えるように、僕とティアの左手薬指に嵌められている指輪を見せつける。
「あ! 本当だ! おめでとう!」
「おめでとう、ティアお姉ちゃん!」
「ありがとう、二人共」
「これで名実共に、ティアお姉ちゃんは私達のお姉ちゃんになったんだね!」
「すごく嬉しいよ!」
そう言って再び、二人はティアに抱き着く。
ティアは何故か僕の方を向き、勝ち誇ったような表情を浮かべる。
「……何?」
「どう、ジュリウス? わたしに大事な妹達を取られた気分は?」
「別に? 義理とは言え姉妹仲が良くてなによりだよ」
「で、本音は?」
「妹達にティアは渡さないよ」
そう言い、ティアの肩に腕を回して僕の方に抱き寄せる。
すると当然のように、妹達から不満の声が上がる。
「あ、お兄ちゃんズルい!」
「あたし達あまりティアお姉ちゃんに会えないんだよ! 少しくらいティアお姉ちゃんと触れ合ったって良いじゃん!」
「今はデート中なんだ。二人はウチに戻ってなよ。ウチだったら好きにして良いから」
「本当に……?」
「約束出来る?」
「約束するよ。それにティアだって二人と同じ気持ちだと思うし。でしょ、ティア?」
少し卑怯だとは思うけど、ここはティアの二人への愛情を利用させてもらう。
するとやっぱりティアもそうだったみたいで、僕の言葉を肯定するように頷く。
「うん。だからね、ジェシカちゃん、ジェニカちゃん。今は屋敷に戻っててくれないかな? デートから戻ったら二人と思う存分触れ合うから」
「……分かった」
「ティアお姉ちゃんがそう言うなら」
二人はそう言い、僕達から離れていく。
だけど少し進んだ所で足を止め、ニヤニヤとした笑みを浮かべながら振り返る。
「「二人共、新婚だからって『休憩』して帰るのが遅くなったとかしないでね?」」
「余計なお世話だ」
シッシッと手を振ると、二人はカラカラと笑いながら屋敷の方へと歩いて行った。
ティアはティアで、首を傾げている。
「……? 休憩? 喫茶店とかで休むなら、そんなに時間掛からなくない?」
「……そうだね」
「……?」
そういう知識に疎いらしく、ティアは妹達の言葉の真意に終始気付かなかったようだ―――。
大人になっても純心さを残してるティア。
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