第88話 闇に潜む者達④
前回のあらすじ
アルセーヌ達の活動のパトロンがレティシア
俺とレティシアの関係は浅くも深くも無く、せいぜい学園の最終学年が同じクラスだったくらいだ。
まあ、共通の知人にジュリウスがいるという点はあるが……。
レティシアが俺達の活動を陰ながら支援してくれるようになったのは一年ほど前からで、きっかけはレティシアがエドと結婚してからだった。
エドとクリスは双子の兄妹で、それもあってレティシアは支援してくれている。
理由はそれだけではなく、レティシア達とほぼ同時期にクリスも結婚していて、そして――夫を『アラジン』所属の人間に殺された。
クリスは当時塞ぎ込んでいて、一日中部屋の中に引き込もっていたらしい。
その時に俺とアルマは、仲間に引き入れたばかりのジャンヌとジルの装備を整えるために、帝都のオルレアン商会を訪れ、レティシアから事情を聞かされた。
ならばと、『アラジン』を壊滅させるために仲間にならないかと持ち掛け、クリスは夫の復讐が出来るならと俺の手を取り立ち上がった。
そういう縁もあるから、俺達はオルレアン商会……と言うより、レティシア個人からの支援を受けていた。
まあ、レティシアはパトロンではあるが、俺達に『アラジン』壊滅を命じた人物は他にいる。
その人物は何を隠そう、俺達が通っていた学園の学園長だった。
学園長は元々、アースガルド・ミッドガル両国の平和を脅かす存在を排除する役割を担っていたらしい。
だが、学園長に就任してからというもの、思うように活動出来ていなかったらしい。
だから一度は潰したと思っていた『アラジン』が再興した時、自分が動けない事を危惧した。
そこで白羽の矢が立ったのは、『アラジン』の関係者と言えなくもない俺だった。
学園長は俺だけでなく学園生全員の素性を細かい所まで調査しているらしく、だからこそ俺に『アラジン』壊滅の命令を指示してきた。
と言うか、学園長の人脈はどうなってるんだ?
少なくない人間の素性を調べ上げるとか、普通じゃない。
まあ、学園長が噂通りの人物であるなら不思議ではないが……。
そしてその際、連絡役と俺達のサポートとして、学園長の実の息子であるトモエを寄越した。
実際、トモエは戦力として十分以上の働きをしてくれていた。
学園長とレティシア。
その二人の支援があるからこそ、俺達は十分な活動を行えていた―――。
◇◇◇◇◇
「ようこそ。ここに来たって事は……装備の新調かしら?」
「ああ。特に外套だな。しばらくこの国で活動する上で防寒具は、ある意味では命綱だろう?」
「確かにそうね。倉庫に廃棄予定の物があるから、そこから好きに見繕ってもらって構わないわ」
「助かる」
「良いわよ。きちんとツケておくから」
「……そこは助からないな」
「冗談よ」
学生時代にレティシアが真面目な性格というのは知っていたから、こんな冗談を言うとは思わなかった。
「それじゃあまずは女性陣からか」
「何処にあるんスか?」
「ああ……ここに来るのは初めてなんだっけ。なら私が案内してあげるわ」
「助かるッス」
レティシアに連れられ、アルマ達は倉庫へと向かう。
エドが淹れてくれた紅茶を飲みながら気長に待ち、アルマ達が戻ってきてから俺達男性陣も倉庫に向かう。
俺が選んだのは黒いロングコートで、今まで着ていた物に似た物だったが、こっちの方が生地が厚い。
だから十分、防寒具として機能する。
「あ、そうだ。アルセーヌ君に伝えないといけない事があったんだった。たぶん知らないと思うから」
「伝えたい事? 何だ?」
もしや『アラジン』関係の何かか……と思っていたが、俺の想像の斜め上の事を告げる。
「ジュリウス君結婚したのよ」
「……そうか。相手は?」
何となく予想しつつ、聞き返す。
「ティアさんよ」
「やっぱりか」
「あれ? 驚かないのね?」
「いや。十分驚いてるし、相手も納得だ。もしジュリウスに会う機会があったら、俺からの祝いの言葉を送っておいてくれ」
「良いの? 私が言う事じゃないけど、アルセーヌ君達の活動ってあまり人に知られちゃいけないんじゃないの?」
「それもそうだが……あ。こういうのなら怪しまれないんじゃないか?」
そう言い、俺がここに来ていた事を怪しまれないようにするアリバイをレティシアに伝える。
「なるほど……それならジュリウス君にも怪しまれない、かな?」
「ならそれで頼む。……俺達はそろそろ行く」
「気を付けてね」
「ああ」
そう告げ、俺達はオルレアン商会の建物を後にした―――。
闇に潜むのなら、表向きの肩書きも必要ですよね?
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