第84話 実家でゆっくり
前回のあらすじ
ダイナミックに帰省した
屋敷の中へと入り、リビングへと向かう。
懐かしの我が実家は僕が出て行った三年前と殆ど変わっておらず、変わってる物と言えば花瓶に生けられてる花くらいか。
リビングに入り、そのままソファーに腰掛ける。
ニブルヘイム皇国の自宅も落ち着くけど、それはそれとして実家もやっぱり落ち着く。
「はぁ〜……やっぱり実家は落ち着くね」
「そうだね」
「……ウチはティアの実家じゃないでしょ?」
「でも、小さい頃から通ってたんだから、もう第二の実家みたいなものだよ?」
「うふふ……嬉しい事を言ってくれるね」
すると、母さんがリビングにやって来た。
「あれ? アタランテさん達は?」
「少し街中を散策してくるって」
「そうなんだ。それよりも、あの二人は何でウチに?」
「ちょっとした旅行だって」
「そうなんだ」
「それよりも、いつまでウチにいるの?」
「本当なら往復の移動で二ヶ月掛かるから、一ヶ月くらいの予定だったんだけど……リオに半ば無理矢理連れて来られたから、そうだなぁ……だいたい二ヶ月くらいかな?」
「そっか……それじゃあゆっくり出来るんだね?」
「うん」
「失礼します」
すると、メイド服を着た少女がトレイを持って入ってきた。
彼女の名前はアスラで、オリバーの少し年の離れた妹だった。
一応従騎士としての鍛練は受けているけど、本人の強い希望で普段はメイドとして働いている。
アスラ曰く、「メイド服が可愛いから」らしい。僕には分からない感性だ。
「どうぞ、ジュリウス兄様、ティア姉様」
「ああ、ありがとう」
「いただきます」
アスラから配られた紅茶に口をつける。
美味しいには美味しい。
だけど……記憶にあるウチの紅茶の普段の風味より、少し苦いような……?
なんて思っていると、アスラが口を開く。
「この紅茶、私が淹れたんですよ? 奥様や他のメイドさんみたいに、まだ上手くは淹れられないですけど……」
「ああ、どうりで……」
「う〜ん? わたしはこの味も好きだよ?」
「お世辞だとしても嬉しいです。精進しますね」
「事実なんだけどなぁ……」
そう言いつつ、ティアは再びカップに口をつける。
「そうだ。アスラ、この二人が泊まる客室の準備をお願いしても良い?」
「はい、すぐにご用意致します」
「別に急ぎでもないから、ゆっくりで良いよ? 夜までに用意出来てれば良いから」
「……畏まりました」
僕の言葉に、アスラは渋々と頷く。
もしかしたら、久しぶりに会った僕に良い所を見せたいと思っているのかもしれない。
アスラは昔から、僕やオリバーに褒められたいと思って努力する娘だったからだ。
「……まあ、アスラの成長を見てみたいって言う気持ちもちょっとだけあるから、無理しない範囲で頑張ってくれると嬉しいかな?」
「……っ! 任せて、ジュリウス兄様!」
固い口調も砕け、昔みたいな言葉遣いになったアスラは満面の笑みでそう答えると、軽い足取りでリビングから出て行った。
ふと母さんの方を見ると、何故かニヤニヤとしていた。
「やっぱりジュリウスはみんなのお兄ちゃんだね?」
「どういう意味?」
「年下の扱いが上手いって事。その辺り、アルヘナお兄ちゃんに似てるね。まあ、身内だから似ててもおかしくは……あ。あっちでアルヘナお兄ちゃんと会った?」
「アルヘナさんと? うん、会ったよ。それとアル兄さん……アルノルトさんとも」
「兄さん呼びだなんて、随分と仲良くなったみたいだね」
「一ヶ月もあれば、そりゃあね」
ある意味では僕とティアを結ばせてくれた人だから、尊敬の念も親愛の情も家族と同じくらいに抱いていた。
すると、母さんは何かに気付いたような表情を浮かべる。
「あ、そうだ。手紙でも伝えられてたからもう知ってるけど……結婚おめでとう、ジュリウス、ティアちゃん」
「あ……ありがとう」
「ありがとうございます……」
こうやって改めて面と向かって結婚を祝福されるというのは、その……こそばゆい。
事実、ティアは頬をほんのりと赤く染め、僕も確認は出来ないけど顔を赤くしていると思う。
母さんはソファーの背もたれに深く身体を預けると、天井に視線を向け遠い目をする。
「でもそっか……ジュリウス達も婚約破棄された者同士で結婚かぁ……これも血筋って言えば血筋なのかな?」
「……? どういう事?」
「あれ、言ってなかったっけ? わたしとカストールも、元々は婚約破棄された者同士で結婚したのよ?」
「初耳なんだけど……」
「詳しく聞きたいです、おば様……あ、お義母様?」
「無理して呼び方を変えなくても良いよ、ティアちゃん。……そうだね。せっかくの機会だし、わたし達の馴れ初めでも語ろうかな?」
そう言って始まった両親の馴れ初め話は、夕飯の時間まで続いた―――。
今明かされる(?)、両親の馴れ初め。
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