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第83話 ダイナミック帰省

前回のあらすじ

アタランテ再登場

 

「うっ……はぁ、はぁ……」

「はぁ、はぁ……」


 スリルしかない空の旅が終わり、僕もティアも荒い呼吸を繰り返す。

 なんとか呼吸を落ち着かせて周りを見回すと、そこは僕の実家の庭だった。


 すると、応接室のある窓から見慣れない女性が飛び出してきた。その後ろには母さんが続いてくる。

 見慣れない女性は僕の目がおかしくなったのか、ケモミミと尻尾が生えていた。

 それと、顔付きがリオによく似ている。


「ちょっとリオ! 何処まで行ってたのよ!」

「えっ? ちょっと北の方まで?」

「具体的には?」

「えっ? え〜っと、確か……雪が積もってる地域なのは覚えてるよ?」

「……この辺りだと、ニブルヘイム皇国周辺がそうかな? ちなみに結構遠いよ?」


 母さんはケモミミの女性と顔見知りなのか、砕けた口調でそう答える。

 すると女性は、呆れたように肩を竦める。


「はぁ〜……何処まで行ったのかと思ったら、そんな所まで行ってたなんて」

「でも収穫もあったよ? ジュリウスおにいちゃんとそのお嫁さんを連れてきたから」

「そう言えば、何でジュリウスとティアちゃんも一緒なの?」

「……うん。実は……」


 母さんの質問に、僕はこうなった経緯を軽く説明する。


「ふぅ〜ん、なるほど……まさかこんなに早く来るとは思ってなかったから、ジュリウスの部屋まだ片付けてないよ?」

「大丈夫だよ。しばらくは客室を使わせて貰うから。そっちならすぐに用意出来るでしょ?」

「まあ、出来るけど……」

「ならそれで良いよ。……よっと」


 呼吸も落ち着いたから、ドラゴンの背中から降りる。

 その後、手を貸してティアも降ろし、リオも軽い身のこなしで降りてくる。

 これでようやく、聞きたい事が聞けるようになる。


「それで……母さん。そっちの女性って誰なの?」

「ああ、紹介がまだだったわね。彼女はアタランテちゃん。昔ウチでお世話した娘で、今はわたしの弟の奥さんの一人なの」

「初めまして、アタランテよ。娘が迷惑掛けたみたいね」

「あ、いえ……と言うか、その……そのケモミミは?」

「えっ? あ……」


 アタランテさんは自らのケモミミを触り、気の抜けた声を上げる。

 そして胸元のネックレスを握り締めると、光が一瞬アタランテさんの身体を包み込んだ後にケモミミと尻尾が消え去る。


「ビックリしたわよね?」

「えっ? ええ、まあ……でも、驚いただけで怖いとか思いませんでしたよ」

「可愛かったでしょ?」

「そうそう……って、母さん!?」


 なんか余計な一言を言った母さんはクスクスと笑い、アタランテさんもただ微笑んでいるだけだった。

 ただ、ティアは不貞腐れたように頬を膨らませていた。


「ふぅ〜〜〜ん。ジュリウスってああいう人が好みなんだ?」

「えっ? ティア、不貞腐れてる?」

「全然、全く、これっぽっちも」


 口ではそう言うけど、態度はおもいっきり不貞腐れていた。

 そんな可愛らしい反応を示す妻のご機嫌を取るために、僕はティアの身体を真正面から抱き締め、なでなでと頭を優しく撫でる。


「機嫌直してよ。確かに可愛らしいとは思ったけど、一番可愛いのはティアだから」

「……もう。そんな事言ったって、簡単には機嫌を直さないんだからね?」


 と言いつつ、もっと撫でろと言わんばかりに頭を押し付けてきて、ギュッと抱き締め返してくる。

 ふと視線を感じて振り向く、リオは顔を真っ赤にして目を逸らし、母さんは微笑み、アタランテさんは呆れたような表情を浮かべていた。


「はぁ……やっぱり親子ね、貴女達。人前でも憚らずイチャつくんだもの」

「褒めても何も出ないよ?」

「褒めてないわよ」


 ……コレ、イチャついてるって言うのかな? ただティアのご機嫌取りなだけだけど……。


 なんて思っていると、母さんが僕達の方に目を向ける。


「……さて。こんな所で立ち話も何だから、中に入りましょうか」

「そうだね。……あ、そうだ。母さん」

「……? 何?」


 足を止め、僕の方を振り向く母さんに向かって、まだ言っていなかった言葉を告げる。


「ただいま」

「……ええ、お帰りなさい、ジュリウス」


 母さんはそう返し、いつもの見慣れた優しくて柔らかい微笑みを浮かべた―――。






今回の章、ジュリウスサイドは穏やか(?)に、アルセーヌサイドは苛烈に物語が展開していく予定です。




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