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第82話 正体不明の銀髪少女

前回のあらすじ

妹(?)登場

 

「まさかまたこうして会えるなんて思わなかったよ、アタランテちゃん」

「ええ、あたしもよ」


 応接室で対面するアタランテちゃんは、最後に見た時よりも綺麗になっていた。

 まあ、約二十年という年月を考えれば、一人の美少女が一人の美人になっていても不思議ではなかった。

 それに加えて、子持ちの母親らしい雰囲気も纏っていた。


 何を隠そう、アタランテちゃんはワサトと結婚して第二夫人の地位を得ていた。

 どうしてそうなったのかっていう経緯だけど、一言で言えばワサトに一目惚れしたアタランテちゃんが半ば押し掛け女房みたいな感じでワサトに猛アピールしたらしい。


 そんなアタランテちゃんの猛アピールに押し切られてなのか、ワサトはクリュネちゃんと結婚した一年後にアタランテちゃんとも結婚した。


 オリュンポス王国は貴族なら第三夫人までなら重婚を認めているから全然問題無いし、結婚した経緯とかはクリュネちゃんからの手紙で知っていた。


 そして今、ワサトとの間に産まれた一人娘を伴ってアースガルド帝国への旅行のついでにわたし達に会いに来ていた。

 今はカストールが視察に出て行ってるから、わたし一人だけで応対していた。


「それで……娘さんは今何処に?」

「リオ……娘は今、少し散歩してくるって言ってここにはいないわ。……全く、自由奔放なのは誰に似たんだか……」

「アタランテちゃんじゃない?」

「あたしは自由を愛してるだけで、落ち着きの無い性格じゃないわよ?」

「そうなの?」

「そうよ」


 頷き、アタランテちゃんは洗練された所作でティーカップに口をつける。

 たぶんワサトの妻になるに当たって淑女教育を施されたハズだけど……恐らく教えたのはクリュネちゃんだろう。


 ……と、そう言えば……。


「アタランテちゃん、呪い解けたの?」


 今のアタランテちゃんには、獣耳も尻尾も生えてはいなかった。

 だからてっきり呪いが解けたものとばかりに思っていたけど、アタランテちゃんは首を左右に振る。


「いいえ。呪いはそのままよ。まあ、娘にまで呪いが移らなかったのが幸いと言えば幸いかしらね?」

「えっ? じゃあ、耳と尻尾は……」

「こうよ」


 アタランテちゃんは胸元からネックレスを露にすると、それを握り締める。

 すると一瞬だけアタランテちゃんの身体を光が包み込み、晴れた後には見慣れた姿のアタランテちゃんがいた。


「そのネックレス、ワサトの付与魔法が掛かってるのね?」

「そうよ。流石にあの見た目でジェミニの街以外には行けないからね。だから、呪いを偽装する効果が付与されてるネックレスをワサトがくれたのよ」

「そっか……愛されてるね、アタランテちゃん」

「ええ、十分に」


 ふわっと微笑むアタランテちゃんは、本当に幸せそうだった。

 と思った次の瞬間、突風に似た音と共に地面が抉れるような音が響いた。


 何事かと思って窓辺に近寄ると、大きな白いドラゴンに跨がる銀髪の女の子と、彼女の後ろにはぐったりした様子のジュリウスとティアちゃんの姿があった―――。




 ◇◇◇◇◇




「あ、えっと……えっ? おにいちゃん???」


 頭に疑問符をたくさん浮かべながらそう聞き返すと、目の前の銀髪の少女は首を傾げる。


「えっ、おにいちゃんでしょ? おにいちゃんの方がアタシよりも年上なんだから」

「そもそも、キミは誰なんだ?」

「あ、アタシとした事が。まだ名乗ってなかったね。アタシはリオ。リオ・デュオニクスよ」

「……うん? デュオニクス?」


 僕の記憶が確かなら、その姓は母さんの旧姓だったハズ……。

 なんて考えていると、リオが尋ねてきた。


「あ、そうだ。おにいちゃんは何処に向かう予定だったの?」

「えっ? ああ……うん。ルージュの街に帰省に……」

「ホント!? なら、アタシが連れてくね!」


 リオはそう言うと、指笛を鳴らす。

 するとすぐさま、上空から白い鱗を持つ大きなドラゴンが舞い降りてきた。

 リオはそのドラゴンの首元に軽い身のこなしで跨がると、僕の方に向かって手を差し出してくる。


「行こう、おにいちゃん!」

「それは良いけど……ちょっと待って」


 そう断りを入れ、ティアの方へと近付く。

 そして縄に触れ、破壊魔法で縄をバラバラに破壊する。

 ついでに、他の乗客や御者の縄も破壊しておく。


「うん? おにいちゃん、その人は?」

「僕の妻」

「妻……お嫁さんって事? はぁ〜、すっごい美人だね、おにいちゃんのお嫁さん」

「そんな……美人だなんて大袈裟な……」


 リオに褒められて照れているのか、ティアは顔を真っ赤にする。

 けれど今回ばかりは、リオの言葉に全面的に同意しかない。


「僕の他にティア……僕の妻が乗っても大丈夫なの?」

「ティアって言うんだ。ならティアおねえちゃんだね」

「それで? 大丈夫なの?」

「うん、大丈夫だよ」


 大丈夫らしいから、順番にドラゴンの背中に乗り込む。

 リオの後ろにティアを座らせ、その後ろに僕が座る。

 ……別に合法的にティアの身体を後ろから抱き締められるとか、あわよくば匂いを嗅ぎたいだなんて他意はない。ないったらない。


「しっかり掴まっててね。飛ばすから」

「……ちょっと待った。ゆっくりで――」

「ハッ!」


 ――いい、と言うよりも早く、リオは手綱をしならせてドラゴンに合図を送る。

 するとドラゴンは飛び上がり、風を切り裂くようにして空を駆ける。


「きゃああああああああああっ!!」

「ちょっ、リオ! 飛ばし過ぎじゃない!?」


 ティアはリオの身体にギュッと力強く抱き着き、僕もティアの身体を強く抱き締めつつそう尋ねる。

 するとリオは、とびきりの笑顔を浮かべながら振り向く。


「だってこっちの方が早く着くし、まだ全速力じゃないよ?」

「「えっ」」

「ハッ!」


 恐ろしい事を告げられた次の瞬間、ドラゴンは飛行速度を一段階上げた。

 僕とティアは、振り落とされないように前の人の身体に抱き着く事で精一杯だった―――。




 ◇◇◇◇◇




「うん?」

「どうかしたんスか?」


 ニブルヘイム皇国に向かう途中、ノームリア王国の領内を突っ切っている時にジュリウスの声が聞こえた……気がした。

 だが、前後左右を見回してもそれらしき人物の人影は無い。

 まさかと思い空を見上げるけど、一体のドラゴンが横切った姿しかなかった。


「……いや、気のせいみたいだ」

「そうッスか。それじゃあ行きましょう、アルくん」

「ああ」


 アルマの言葉に頷き、俺は再び歩き始めた―――。






ニアミスしてたジュリウスとアルセーヌ。




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