第79話 闇に潜む者達
前回のあらすじ
デートした
復活した『アラジン』の下部組織の基地を強襲し、これでもかって言うくらいに丁寧に丁寧に殲滅していく。
下部組織の基地と言っても人数は軽く五十人近く、もしくはそれ以上いて、流石に俺とアルマだけでは手に負えなかった。
だから――予め助っ人を呼んでいた。
「フッ! ハッ!」
槍を器用に振り回して敵を次々と薙ぎ払っていくヤツの名は、ジャンヌ。
見た目は正に聖女と言っても過言では無いほどに麗しい女性だけど、その血は穢れている。
彼女も俺と同じスプリガンの血を引く者――つまり俺と異母兄妹だった。
「お姉様の邪魔はさせませんわ!」
ジャンヌの背後を取ろうとした相手の前に一人の少女が立ちはだかり、長短の二本の剣を素早く振るって相手を沈める。
少女の名はジルで、ジャンヌの実の妹と言う訳では無い。
ジャンヌの育ての親の実子らしく、正確にはジャンヌの義妹になる。
それでも、実の姉妹以上に姉妹らしいと感じる。
二人の呼吸はピッタリで、片方の死角をもう片方がカバーするという立ち回りをしている。
だからか、面白いほどに相手が次々と倒されていく。
俺とアルマもただ眺めていただけではなく、きちんと刃向かって来た相手を始末していた。
ただ、尋ねたい事があったからしたっぱの一人だけは生かしておいた。
まあ、逃げられないように足の腱は斬ってはいるが……。
「おい、質問に答えろ」
「ぐっ……な、何だ?」
自分が不利である事を悟ったのか、したっぱは大人しかった。
末端が知っているハズもないと思いつつも、尋ねずにはいられなかった。
「『アラジン』の真の頭領、スプリガンは何処にいる?」
「真の頭領? スプリガン? 誰だそれは?」
単にすっとぼけているのではなく、本当に知らないような素振りを見せる。
……いや、違うか。知らないのでは無く、知らないと錯覚させられている。
そんな芸当が出来る人物は一人しかいない。
よく魔法は遺伝すると言われているが、少し違う。
正確には、子供は親と似た系統の魔法を発現する事が多い。
だから親と子供で魔法の系統が違うなんて事は普通にあるし、中にはジュリウスみたいに魔法が複合化する事もある。
そして俺の魔法である幻影魔法もまた、親―スプリガンの魔法の系統として発現したモノだった。
俺の魔法もスプリガンの魔法も、相手を錯覚させるという点では同じだ。
唯一違う点は、それが直接的か間接的かでしかない。
そしてその錯覚を解除する手段を、今の俺は持っている。
「ジャンヌ」
「うん。《ディスペル》」
ジャンヌの魔法は世にも珍しい解除魔法と言うモノで、その効果は相手の毒や麻痺、催眠や洗脳などを解除して元の状態に戻すと言った強力なモノだった。
その力で、こいつの錯覚を解除する。
効果はあったようで、したっぱは驚愕したように目を見開く。
「な、なんだ!?」
「改めて尋ねる。スプリガンは何処にいる?」
「ス……スプリガン様は、ニブルヘイム皇国に向かわれた……」
「ニブルヘイムに? どうしてまた?」
そう聞き返すと、したっぱは激しく首を左右に振る。
「し、知らないし分からない! 組織の具体的な運営は俺達みたいな幹部級にも知らされていないんだ! 知っているとすればそれは、スプリガン様の寵愛を受けているアリババ様とモルジアナ様だけだ!」
「……そうか。分かった」
俺はそう言い、したっぱ改め幹部の胸に剣を突き刺す。
そして剣を捻りながら引き抜くと、胸から血飛沫を上げながら仰向けに倒れ込む。
ヒュッと剣を軽く振って血糊を振り落とすと、ジャンヌが尋ねてくる。
「それで……これからどうするの、お兄ちゃん?」
「そうだな……ニブルヘイムに行ってみるか。もしかしたらスプリガンの足跡を辿れるかもしれない。可能性は低いがな」
「ニブルヘイムッスか……」
見ると、アルマは何処か不安げな表情を浮かべる。
「ティア、だったか? 彼女の事が心配なのか?」
「えっと、少しだけ。でもあまり心配してないッスよ。なんたってティアちゃんの傍には、ジュリウスくんがいるんスから」
「そうだな」
友人の俺が言うのも何だが、あんな規格外な存在がいれば、流石のスプリガンだとしても容易に手は出せないだろう。
スプリガンは一度目を付けた女性には、何が何でも手を出す悪癖があるからだ。
しかも、能力が非常に高いという条件と、未婚の女性という条件もある事は調べていく中で判明した。
「さて……そろそろ行くか」
そう言い、月明かりが照らす中、三人を引き連れて闇に紛れるようにして移動を始めた―――。
アルセーヌの仲間はあと三人くらいいます。
彼等の登場は後程。
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