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第75話 邂逅

前回のあらすじ

側近としての仕事をした

 

 翌週の休日。

 レティシアに結婚祝いを贈るために、再びオルレアン商会の店を訪れていた。

 店員にその旨を伝えると、相手も僕達の事を覚えていてくれていたようで、事務所で待っていて欲しいと案内されていた。


 五分くらいして、レティシアがやって来た。


「お待たせ。今日はどうしたの?」

「結婚祝いを贈ろうと思ってね。はい、コレ」

「別にいいのに。でも、ありがとう」


 そうお礼を言い、レティシアは僕から結婚祝いを受け取る。

 僕達からの結婚祝いは、普段使い出来る物が良いかな? と思ってタオルセットを贈った。


「……うん? 二つ?」

「ああ。もう片方はある人から頼まれて預かった物なんだ。そっちも結婚祝いだよ」

「ある人?」

「うん。アーニャから」

「アーニャ……ああ、なるほど」


 アーニャはアナスタシアの愛称の一つだけど、それ自体も名前として普通に使われている。

 だから誰かに聞かれてもまさか皇女からの贈り物とは思われないし、レティシアはそれだけで送り主が誰なのか察したようだ。


「後で『アーニャさん』にもお礼言っておいて?」

「分かった。……あ、そうだ。一つ頼みたいんだけど……」

「……?」




 ◇◇◇◇◇




 二ヶ月後。

 件のオリュンポス王国使節団の方々が来訪され、今は謁見の間で女王陛下や皇族の方々と謁見している。

 僕とティアはアーニャの側近だから、他の皇族直属の家臣団の中に控えている。


「お会い出来て光栄に思います、女王陛下」

「遠路遥々ようこそお越し下さいました。歓迎いたしますわ」


 使節団の先頭にいる男性―おそらく大使のアルヘナさん―の挨拶に、女王陛下であるエカテリーナさんは微笑みながらそう返す。


 ニブルヘイム皇家は歴史的に女性皇族が王位を継承し、それは今でも受け継がれている。

 それと他国の王族と比較して、珍しく一夫一妻制を取っていた。

 他の国だと、王族の血を絶やさないようにするために一夫多妻制や多夫一妻制を取っているにも関わらず、だ。


 だから、と言う言葉が正しいのか分からないけど、女王陛下は夫である宰相と夫婦仲がとても良く、皇国随一の仲良し夫婦とまで噂されている。

 アーニャによると、実際に陛下と宰相は今でも新婚のように仲睦まじいのだとか。


「慎ましやかですが、今晩使節団の歓迎パーティーを開催します。是非楽しんで下さい」

「陛下のお心遣い、痛み入ります」

「それまでの間、別室で長旅の疲れを癒して下さい。……アナスタシア、後は頼みますよ」

「はい、陛下。……では皆様、どうぞこちらへ」


 玉座の傍に控えていたアーニャがそう返事し、使節団を案内する。

 僕達も家臣団の列から離れ、アーニャに合流する。

 すると、アルヘナさんが僕の顔をジッと見ている事に気付いた。


「……? 何か?」

「皇女殿下。個人的に少し彼と話がしたいのですが、よろしいでしょうか?」

「ジュリウスさんと、ですか? ……ええ、良いですよ。ジュリウスさん、応接室まで案内してあげて下さい」

「分かりました。……すみません、彼女の同席も許可して頂けますか?」


 ティアを示しつつ、伺う。

 するとアルヘナさんは、笑顔で頷く。


「ええ、良いですよ。第三者に聞かれたらマズイ話をする訳でもないですからね。それとこちらも息子を同席させますが、よろしいか?」

「はい。それとありがとうございます。どうぞこちらに」


 そう言い、アルヘナさんと彼の息子と思われる青年を応接室に案内する。

 アーニャの部下は僕とティア以外にもいるから、彼女の周辺警護は問題無いだろう。


 応接室に案内する途中、ティアがひそひそと耳打ちしてくる。


「……ねえ。あのアルヘナさんって言う人の息子さん、ジュリウスに何処と無く似てない?」

「……それを言うなら、アルヘナさんは父さんに似てるよ」

「……言われてみれば、確かに」


 だいぶ昔に、オリュンポス王国に親戚がいるみたいな事を告げられた事があったけど……まさか、ね。


 そうこうしている間に、応接室へと辿り着いた。

 中に入って最初に口を開いたのはアルヘナさんだった。


「やっぱり……カストールに良く似てるけど、目元とかはポルクスちゃんに似てるな」

「僕の両親を知ってるんですか?」

「二人からは……何も聞かされてない顔だな。なら改めて。アルヘナ・ジェミニアスだ。カストール……君の父親の実の兄で、ポルクスちゃんの従兄で義兄だ」

「初めまして……で良いんですかね? 僕は……」

「ジュリウス君だろう? 二人から名前は聞いている。ここに来る前にルージュの街にも立ち寄ったからな」

「なるほど……」


 それなら、僕の名前を知っていても不思議じゃない。


「さて……こっちは俺の息子のアルノルト」

「アルノルトです」

「ジュリウスです」


 互いにそう名乗り、握手を交わす。

 ……うん。確かに瓜二つとまでは言わないまでも、僕とアルノルトさんは良く似ている。

 父親が実の兄弟同士なんだから、多少似ていたとしても不思議じゃない。


 手を離し、血縁関係と言う点では部外者のティアをアルヘナさん達に紹介する。


「アルヘナさん。彼女は……」

「カストール達からおおよその事情は聞いている。ティア・レメゲトンさんだろう? 初めまして」

「は、初めまして」


 多少の緊張は見られたものの、ティアはきちんと挨拶を返す。

 アルヘナさんはティアのある部分を見つめ、口を開く。


「……うん。事情は聞いていたが……二人共、結婚してたのか?」

「ああ、コレですか……一種のカモフラージュですよ」


 レティシアに頼んでいた事。

 それは――偽装用の結婚指輪だった。


 ティアは客観的に見たら美人の類いだから、他国の人間がコナを掛けてこないとは言い切れない。

 下手したら、多少改善してきたティアの男性恐怖症が一気に悪化してもおかしくはない。


 だからレティシアに頼んで、ティアの指に合うサイズの指輪を用意してもらった。

 既婚者だと判れば、余程の馬鹿じゃない限り手を出そうとは思わないハズだ。


 ……って言うような事を説明したら、アルヘナさんは納得してくれた。


「なるほど……分かった。二人の関係は口外しない事を約束しよう。アルノルトも良いな?」

「はい、父上」

「ありがとうございます。……それじゃあ、使節団の方々の所に戻りましょう。案内します」

「助かる。……そうだ。俺達とジュリウス君の関係は明かしても良いか?」

「はい。別に隠すような関係でもないですし」

「それは良かった」


 それから二人を、使節団の人達がいる部屋まで案内した―――。






偽装結婚なんていうズル賢いことを考えるジュリウス。




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