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第73話 急な手伝い

前回のあらすじ

レティシアと再会した

 

 そして二週間後。

 レティシアが店長を務めるオルレアン商会フェルゲルミル支店が開店したから、ティアと一緒に出掛ける。


 商会の名声はこの国にも届いており、やっぱりと言うか予想通り数多くの人々で賑わっていた。

 ニブルヘイム皇国内では初の商会の店というのも大きいのかもしれない。


「どうする?」

「う〜ん……少し落ち着いてからでも良いかな?」

「じゃあ後日改めてって事で」

「そうだね。そうしよ……」

「あ! ジュリウス君にティアさん!」


 すると、人混みを掻き分けてレティシアがやって来た。

 気のせいか、少し疲れているように見える。


「レティシア。来たよ」

「ようこそ、二人共。……って、あれ? ティアさん、眼鏡してたっけ?」

「これはその……あはは」


 レティシアの指摘した通り、ティアは家にいる時以外は眼鏡を掛けるようにしていた。

 この眼鏡は僕の創造魔法で創った物で、効果としては視力の補強では無く、男の顔がハッキリと見えないようになる効果がある。


 ティアの男性恐怖症は、顔さえ見えなければ意思疎通に問題は無い事が分かったから、それならばと眼鏡で顔が見えないように細工した。

 四六時中ティアの傍に居られる訳でもないしね。


 それとこの眼鏡、ティアが恐怖心を抱かない相手―僕やアルスさんとか―には効果を発揮しない事も証明されている。

 なんじゃそりゃ? って思うけど、僕自身もそういう風に創造したわけじゃないから完全に欠陥だった。

 やっぱり母さんみたいに上手くは創れない。


「まあ良いや。ところで二人に相談何だけど……」

「「……?」」

「ゴメン! 手伝って!」


 レティシアは両手を合わせ、頭を下げてきた―――。




 ◇◇◇◇◇




 レティシアが言うには、予想以上の大繁盛で人手が足りないらしい。

 そこで丁度僕達の姿を目にして、駄目元で手伝いを頼んだみたいだ。

 僕達も今日は特に用は無いからレティシアの頼みを引き受けた。


 それは良いんだけど……。


「お疲れ様、二人共」

「ああ、ありがとう……」


 ティアと二人、店の裏側にある事務所のソファーでぐったりとしていると、レティシアが紅茶を淹れて運んでくれた。

 慣れない仕事だったから、思った以上に疲れていて紅茶が身体に沁み渡る……。


「はぁ〜……生き返るぅ〜」

「大袈裟だなぁ。でもありがとうね。二人のお陰で、何とかピークを乗り越える事が出来たよ。はい、今日のお礼」


 レティシアはそう言い、僕とティアに茶封筒を差し出してくる。

 それを受け取り中を確認すると、幾らかのお金が入っていた。


「時給分にちょっとイロをつけて入れてあるから」

「ああ、良いのに」

「いいから受け取って。今日は本当に助かったんだから」

「そう言う事なら」


 そう言い、茶封筒を上着の内ポケットに仕舞う。

 すると、事務所に一人の男性が入ってくる。


「あ、そうだ。二人に紹介しないとね。こちら、私の旦那のエドモンド」

「エドモンドです。気軽にエドと呼んで下さい」

「へぇ〜、旦那……」

「なるほどぉ〜……」


 ティアと同時に紅茶を啜り、カップをソーサーに戻す。

 ……うん、聞き間違いの可能性は……限り無く低いだろう。

 取り敢えず落ち着こうと思って、再びカップを手に取る。

 だけどもう中身が無くて、仕方無いからそのまま戻す。


「……旦那って事は結婚したんだ?」

「ええ。皇国に来る前にね」

「ふぅ〜ん、そうなんだ……」

「驚かないんだね?」

「いや、十分驚いてるよ。感情が追い付いてないだけ」

「ティアさんは?」

「……えっと、おめでとう?」

「ありがとう」

「レティ。こちらが?」

「うん。ジュリウス君とティアさん。私の元同級生」


 レティシアに紹介され、座ったままお辞儀をする。


「なるほど……噂はレティから聞いている。特にジュリウスさんの方はレティの元婚約者だったとか?」

「呼び捨てで構わないですよ。確かにそうですね」

「俺の方もタメ口で構わない。だからと言う訳では無いが、レティに思う所は無いのか?」

「全然、全く、これっぽっちも」

「な、なるほど……コホン。俺達はこっちに来てまだ日が浅い。頼りにする時があるかも知れないが、その時はよろしく頼む」

「こちらこそ。……それじゃあ僕達はこれでお暇しようか、ティア」


 そう言って立ち上がると、ティアもソファーから立ち上がる。


「うん。それじゃあね、委員長……じゃなかったんだ、もう。それじゃあ……レティ。また今度」

「ええ、また。二人共、今日は急な頼みだったのにありがとうね」


 そう別れを告げ、僕達は店を後にした―――。






おそらくしばらくは事件は起こりません。




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