第70話 久しぶりの再会
前回のあらすじ
ジュリウスとティアはニブルヘイム皇国にいる
「こうして顔を会わせるのは……二十年近く振りか?」
「そうだね……って、もうそんなに経つのか。月日が経つのは早いね」
「まるで年寄りみたいな物言いだな?」
「僕はまだまだ若い、とは言わないけど、三児の父だからね。領主の仕事と子育てしてたら、あっという間に過ぎたよ」
「それは同感だ」
応接室で、カストールはアルヘナお兄ちゃんとあははと笑い合う。
久しぶりにアルヘナお兄ちゃんと会った事が少なからず嬉しいらしい。わたしもだけど……。
何でアルヘナお兄ちゃんがウチの屋敷にいるのかと言うと、ニブルヘイム皇国と友好条約を結ぶために皇国に向かう最中、アルヘナお兄ちゃんが率いる使節団が道中の宿場町としてこの街を選んだからだった。
そんなアルヘナお兄ちゃんの隣には、お兄ちゃんにとても良く似ている青年が座っていた。
目元なんかは特にヘレネお姉ちゃんにそっくりだった。
「……っと、そうだ。二人には紹介しとかないとな。俺とヘレネの息子のアルノルトだ。今回、俺の補佐役として同行してる」
「初めまして、アルノルトです」
アルノルト君は礼儀正しく、ソファーに座りながらペコリとお辞儀をする。
「初めまして、カストールです」
「ポルクスです。……うん、若い頃のアルヘナお兄ちゃんにそっくりだね、アルノルト君は」
「恐縮です」
「……ポルクスちゃん。俺でも少しは傷付くぞ? まるで俺が若くは無いみたいな物言いじゃないか」
「四十越えの中年のオジサンは若くは無いでしょ?」
「せめてオジサマにしてくれ」
それで良いのかな? と思わなくも無いけど、本人がそう言って欲しいのなら今度から気を付けようとは思う。
「……まあ良いや。お姉ちゃんは元気?」
「ヘレネも娘達も元気だぞ」
「うん? 兄さん、娘もいたの?」
「ああ、二人な。……ところで、カストール達の子供は?」
「僕達の息子は今はニブルヘイム皇国の皇女の側近として働いてて、娘二人は帝都の女学園に通ってて、そこで寮生活を送ってるよ」
「なるほど、道理で姿が見えない訳だ」
アルヘナお兄ちゃん達の近況はたまに送られてくる手紙で知ってはいたけど、やっぱり直接顔を会わせて話す方が早い。
それと、いつかの手紙に少し気になる事があったから、いつか直接会って話せたらなぁ……と思っていた。
「お兄ちゃん。少し聞きたい事があるんだけど、良いかな?」
「ああ、良いぞ」
「父上。長くなるようなら、少しこの屋敷を見て回りたいのですが……」
アルノルト君がさっきからソワソワしてた理由はそれだったのか。
カストールに目配せすると、無言で頷く。
「良いよ。存分に見て回ると良い。何なら、街中を少し散策しても良いかもね? 案内は……オリバー、君に任せる」
「畏まりました、旦那様」
ずっと壁際で待機していたオリバーはそう返事をする。
オリバーは学園を卒業後、ジュリウスの下へは行かずにウチの従騎士として勤めるようになっていた。
なんでも、ジュリウスの方から「まだこっちには来るな」と言われているらしい。……その台詞、今際の際の人が先に死んだ人から追い返されるシチュエーションと同じ……。
それと、ウチの屋敷でアルノルト君と年の近い従騎士と言ったらオリバーしかいないから、妥当な人選だと思う。
アルノルト君はソファーから立ち上がると、わたし達に向かってお辞儀をする。
「ではおじ上、おば上。失礼します」
「ではアルノルト様、こちらに」
オリバーの案内に従い、アルノルト君は応接室を出て行く。
「礼儀正しい子だね、アルノルト君は」
「だろう?」
カストールに息子を誉められた事が嬉しいのか、アルヘナお兄ちゃんは誇らしげな笑みを浮かべる。
昔は両親がわたしの自慢をする、もしくは誉められて嬉しそうに笑う姿を見て、そんなに喜ばなくても……なんて思っていたけど、子供を持った今だと両親の気持ちが今なら凄く良く分かる。
それはきっとアルヘナお兄ちゃんも例外じゃないのだろう。
「後はそろそろ孫の顔を見せてくれると嬉しいんだがな……」
「……うん? アルノルト君、結婚してるの?」
「いや、まだだが……この仕事が終わったら式を挙げる事は決まってるんだ。無事に――」
「ストップ、アルヘナお兄ちゃん」
不穏(?)な事を口走りそうになっていたアルヘナお兄ちゃんの言葉を、わたしは遮る。
するとカストールとアルヘナお兄ちゃんの二人は、揃って首を傾げる。
「うん? どうしたんだ、ポルクスちゃん?」
「アルヘナお兄ちゃん。それってたぶんフラグになるから、言わない方が良いよ」
「フラグ?」
「小説とかだと、この戦いが終わったら結婚するんだ〜みたいな事言ったキャラは大体死ぬんだから」
次に多いのは……なんだろう?
「やったか!?」って言ったら大体やってないパターンとかかな?
「だが小説の中の話だろう? 現実もそうとは限らないだろう」
「極東の島国には、『言霊』っていう言った事が現実になるみたいな考えがあるんだって。だからね、わざわざ不幸になるような事を言わなくても良いと思うの」
「迷信だとは思うが……分かった。気を付けよう」
アルヘナお兄ちゃんが頷いたのを見て、ようやく聞きたかった事を聞ける雰囲気になってきた。
「……アルヘナお兄ちゃん。話は変わるけど……結構前に手紙に書かれてたアレって……本当?」
「……そうだな。ポルクスちゃんにはきちんと知る権利があるか。それとカストールも」
「僕も関係があるって……ああ、アレか」
カストールも思い出したように頷く。
わたしがアルヘナお兄ちゃんに……と言うよりも、オリュンポス王国に居た親族なら別に誰でも良かった。
でも今回直接会う機会があったから、アルヘナお兄ちゃんから聞くという形にはなっている。
わたしが聞きたかった事。
それは――ポセイドン殿下が国王に即位せず、逆に国家反逆罪で処刑された事だった―――。
実は前からやろうやろうと思っていたポセイドン周りの話。
挟めるタイミングを逃し続けて、やっと次回描けることが出来ます。
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