第69話 五年後
唐突に新章開幕です!
前回のあらすじ
ティアも婚約破棄された
ニブルヘイム皇国。
アースガルド帝国の遥か北方に位置し、一年の半分近くが冬という土地柄からか、寒さ対策が施されている建物しかなかった。
具体的には、レンガ造りの建物には例外無く煙突が備え付けられており、窓も二重構造になっていた。
それは首都である皇都フェルゲルミルにある建物も例外ではなく、皇族が住まう皇城にも何本か煙突が立っていた。
ここの今の季節は丁度冬の時期で、灰色の空からは粉雪がパラパラと降っている。
道行く人達は皆コートやマフラー、帽子などを身に着けて防寒対策をしている。
そこら辺は僕もきちんと対策していて、最近新しく買い直した黒いロングコートを羽織り、手編みのマフラーとニット帽、それと手袋を身に着けていた。
僕が何故この国にいるのか?
それは約二年前、学園を無事に卒業したアーニャから直々に側近として働かないかとスカウトされたからだった。
アーニャが学園に編入した一番の理由は、自身の側近となりうる人材を発見・登用する事で、彼女の中では僕が最有力候補だったらしい。
だけど僕が退学したせい(?)で探し直したらしいけど、結局僕と同等かそれ以上の人材は発見出来なかったらしい。
だから駄目元で僕に直談判しに来たと、僕にスカウトしに来た時に言っていた。
僕としてもアースガルド以外の国を見てみたいと思っていたし、それに―環境を変える事でティアの症状も改善すると思ったからだ。
ティアの男性恐怖症は五年経っても完治はしていないけど、僕の父さんやレメゲトン邸の男性使用人とか、昔から知っている相手であれば以前と同じ……とまでは言わないまでも、僕が傍に居なくても接する事が出来るようになるくらいには回復していた。
それでも、初対面の相手や見ず知らずの相手だと怖いらしいけど……。
そんなティアと僕は、この街で同棲生活を送っていた。ちなみにティアもアーニャの側近として登用されている。
ソロモンさん達からもティアの事を任されていて、「既成事実を作っちゃっても良いよ?」なんて謎のアドバイス(?)も受けていた。そんな事する気は更々無いけど……。
ちなみに、僕が精神を破壊した相手の侯爵令息だけど、どうやら親である侯爵自身もその不良行為に頭を痛めていたようで、抗議されるどころか何故か感謝された。
跡取りがいなくなるんじゃ? って思ったけど、令息の弟が兄以上に優秀らしく、今回の件で正当な手順で弟を次期当主に出来ると言っていた。貴族って怖いね。
だからまあ特にお咎めとかは無かったけど、せめてものお詫びとして質の良い羊毛を贈っていた。
ちなみに、羊毛はルージュの街の特産品だったりする。
閑話休題。
僕は白い息を吐きながら、ティアの待つ僕達の家へと足早に帰って行った―――。
◇◇◇◇◇
僕達の暮らす家は、一般家庭が暮らすようなありきたりな一軒家だった。
家に入った瞬間、暖気が僕の身体を包み込む。
防寒具を外しつつリビングへと向かうと、ティアがキッチンで夜ご飯の準備をしていた。
「ただいま、ティア」
「お帰りなさい、ジュリウス」
「今日の夜ご飯って何?」
「今日はビーフシチューだよ。ほら、何時にも増して今日は寒いから」
「なるほど……身体が温まりそうだね」
「後少しで出来るから、リビングで待っててね」
そう言われ、ロングコートを脱いでソファーの背もたれに掛ける。
待っててと言われても、ただ待ってるだけっていうのは性に合わない。
「ティア、手伝うよ」
「ありがとう。それじゃあサラダとかをテーブルの上に置いてくれないかな?」
「分かった」
そう返事し、一旦洗面所に行ってから手洗いうがいをして戻って来る。
それからティアの手伝いをし、準備が済んだ後にティアと向かい合う形で席に座り夜ご飯を食べ始めた―――。
◇◇◇◇◇
夜ご飯も食べ終わり、ティアがお風呂に入っている間に洗い物を済ませておく。
家事を分担しようと提案したのはティアの方からで、僕も特に反対する理由が無いから受け入れた。
それも済み、ティアが上がるまでの間にリビングでゆっくりと過ごす事に決めた。
ティアは結構長風呂派だから、そうすぐには上がってこない。
……っと、そうだ。
アーニャから預かってた書類があったんだ。
そう思い出し、魔法袋の中から一枚の紙を取り出す。
僕が持っているのはコピーした物で、原本はアーニャが持っている。
その紙には、僕達がニブルヘイム皇国に来るのと同時期に発生したお家騒動が起きたオリュンポス王国から、近々大使がやって来ると書かれていた。
そしてその大使の名は、アルヘナ・ジェミニアスと言うらしい―――。
懐かしい人物の名前が出て来ましたね。
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