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第67話 白紙

前回のあらすじ

退学処分になった

 

 学園長室を出てすぐに、父さんに声を掛けられた。


「ジュリウス。後で時間ある?」

「えっ? うん、あるにはあるけど……」


 そう言いつつ、チラリと背後のティアに目を向ける。

 それだけで、父さんは察したようだ。


「ああ……じゃあこの場で話そうか。聞かれて困るような内容でも無いし。……今回の件、事が事だからレティシアちゃんとの婚約は白紙に戻そうと思ってるんだけど……良いかな?」

「えっ? ジュリウス、婚約してたの?」


 正式に発表されてから伝えようと思っていたから、ティアからそう聞かれても何ら不思議では無かった。


「うん。ティア達には伝えてなかったけどね」

「それとレティシアって……まさか委員長?」

「そのまさかだよ」

「どうりで最近、やたらと絡んでたんだ……」

「うん。……父さん。僕はそれで良いよ」

「分かった。先方には僕が伝えておくから、レティシアちゃんにはジュリウスから直接伝えておいてくれるかな?」

「うん、分かった」


 そう返事をすると、ムスッとした顔の母さんが近付いてくる。

 母さんは怒りを分かりやすく表現する人じゃないけど、こういう顔の時は大抵怒っている時だ。

 まあ、普段からあまり怒るような性格でも無いけど……。


「……? 母さん?」

「ていっ」


 軽い掛け声と共に、母さんがデコピンを喰らわせてくる。警戒していなかった分、地味に痛い。

 おでこを押さえつつ、母さんに食って掛かる。


「母さん!? 急に何するんだよ!?」

「悪い事した子にはきちんとお仕置きしなきゃでしょ?」

「悪い事って……でも」

「でもも何も無いのよ。結果がどうであれ、ジュリウスが人を傷付けた事は事実なんだから。でも……」


 母さんはそこで言葉を区切ると、ずっとムスッとしていた顔から、いつもの見慣れた柔和な微笑みを浮かべる。


「……大切な人を守ったその行動、わたしとカストールの息子としてとても鼻が高いわ。すごく誇らしい。大声じゃ言えないけど、良くやったわね、ジュリウス」


 そう言うと母さんは、小さい頃みたいに僕の頭を優しく撫でてくる。

 皆の前で……と思うと、結構恥ずかしい。


「……ああ、ソレもあったね……」


 ソロモンさんは何か呟いていたみたいだけど、僕の耳では上手く聞き取れなかった―――。




 ◇◇◇◇◇




 部屋―もちろん女子寮の方―に戻ると、丁度良く……と言って良いのか分からないけど、レティシアの姿があった。

 レティシアはアルマとアーニャの三人でお茶をしていた。


「レ……委員長、ちょっと」

「……?」


 レティシアは首を傾げつつも、僕達についてくる。

 ティアの部屋に入り、彼女と向き合う。


「レティシア。たぶん改めて報せがあると思うけど……僕とレティシアの婚約は白紙になったんだ」

「ああ……今回の件と、ティアさんの事があるから?」

「話が早くて助かるよ。それと……ごめん」

「謝らないで。私がジュリウス君に恋してたなら話は別だったけど、婚約してたとは言えクラスメイト以上の感情は無かったもの」

「そっか……そう言ってくれると気持ちも少しは楽になるよ」


 話したい事も話せたし、リビングに戻る。

 そして今度は三人に、僕とティアが退学する事を告げるとやっぱり驚いた表情を見せる。


「ジュリウスくんは分からなくは無いんスけど……ティアちゃんもッスか?」

「うん。もう普通の学園生活を送れないのは、わたし自身が良く知ってるから……」

「そうッスか……」

「それで……ジュリウスさん達は今後どうなさるんですか?」

「僕がティアの実家にお邪魔して、しばらく一緒に生活する予定だよ」


 これはソロモンさんの方から提案してきた事だった。

 ティアの今の精神状態だと、僕と一緒に居た方が良いだろうという判断からだった。

 父さん達も許可してくれていた。


「さて、と……一旦男子寮に戻って、荷物を片付けてこないとね」

「ジュリウス、行っちゃうの……?」


 そう言いながら立ち上がると、ティアが上目遣いでそう尋ね僕の服の裾を掴む。

 罪悪感を感じないでも無いけど、流石に部屋の片付けとオリバーへの説明はしておきたい。


「戻ると言っても、そんなに長い時間じゃないよ」

「本当……?」

「本当だよ。だから良い子で待っててね?」

「うん」


 ティアの頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細める。

 ……なんだろう。妹を相手にしてるような気分になってくる。

 まあ、実の妹であるジェシカとジェニカ相手に、頭を撫でた事なんて数える程度しかないけど……。


 一旦男子寮の僕の部屋に戻り、オリバーに今回の件の事を伝える。

 するとオリバーは少し驚いた様子を見せたけど、それだけだった。


「もう少し驚くと思ったんだけど?」

「十分驚いてるさ。表情に出ないだけだ」

「そう。……後悪いけど、僕の荷物片付けるのを手伝ってくれないかな?」

「いいぞ」


 オリバーの協力もあり、部屋の片付けは思いの外早く終わった。

 その後僕は再び女子寮へと向かう。

 僕とティアが学園を去ったのは、その二日後だった―――。






婚約破棄されたと言うか、婚約が無かった事になったと言うか……。




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