第62話 コイバナ
前回のあらすじ
デートに誘われた
テストも終わり、寮に戻ってきたわたし達はソファーに腰掛けてちょっとしたお菓子パーティーをしながら、今年の聖光祭をどう過ごすのかを話し合っていた。
他国出身のアーニャには馴染みの無い行事かと思ったけど、ニブルヘイム皇国でも差異はあれど聖光祭自体はあるらしい。
「去年はどのように過ごされたのですか?」
「去年は当時のクラスメイトの女子全員でパーティーを開いたわ」
「パーティーですか?」
「ええ。寮の一階にあるレクリエーションルームでね」
「あら、楽しそうですね」
「実際楽しかったわよ? プレゼント交換とかもしたしね」
「では今年も?」
「そうね。皆の予定次第だけどね」
「予定次第とは……?」
まだピンと来ていないらしいアーニャに対して、わたしは肩を竦めながら答える。
「中には彼氏と過ごそうと思ってる娘もいるかもしれないでしょ? ニブルヘイムだと違うの?」
「ええっと、その……そういう方もいらっしゃるというのは聞いた事があります」
「でしょう? だから皆の予定次第って言ったのよ。……うん? どうかしたの、アルマ?」
聖光祭の話題が出て来た辺りから何故か黙り込んじゃった、何かあったのかな?
何て思っていると、アルマは今まで見た事が無い表情を浮かべていた。具体的には、恋する乙女みたいな。
「えっと、その……アタシは予定と言うか、予定になると言うか……」
「……? ハッキリしないわね。誰かに告白でもするの?」
「こっ!?」
「告白ですか!? 何時しますか!?」
わたしの言葉にアルマは耳まで顔を真っ赤にして、アーニャは謎に興奮している。
……クラス対抗戦の代表を決める時にも薄々と感じてはいたけど、アーニャって結構庶民的と言うか、何と言うか……あまり皇女様って言う感じがしない。
まあ、友達だからっていうのもあるとは思うけど……。
「告白するかどうかはアルマに任せるにしても……もし良ければ、好きになった相手を教えてくれる?」
「え〜っと、そのぅ………………アルセーヌくんッス」
「アルセーヌ? ……ああ、ジュリウスの友達の」
「クラス対抗戦でB組の代表の方でしたよね? アルマさんと接点は殆ど無いのでは?」
去年はまだ学園にいなかったアーニャの疑問はもっともだし、そんな彼女の疑問を解消するために軽い説明を加える。
「アルセーヌとアルマ、ついでにジュリウスもだけど、去年同じクラスでクラス対抗戦の代表だったのよ」
「なるほど……そこでの活躍で好意を抱いた、と……」
「……(コクン)」
「図星みたいね」
そう言い、ソファーの背もたれにもたれ掛かる。
まさか身近な人物、しかも従騎士(予定)のコイバナとか……全力で楽しむ……ゲフンゲフン。全力で応援するしかない。
「それじゃあ、アルマの恋が成就するように協力するわよ。今年の聖光祭を楽しく過ごせるように、ね」
「もし告白に失敗したとしても、骨は拾って上げますから安心して下さい」
「何で失敗する前提なんスか!? ……って、違う! 二人共、アタシをいじって遊んでるだけなんじゃないんスか!?」
「「いいえ、全然?」」
アーニャと揃ってそう答えるけど、ニヤニヤが抑えられなかった―――。
◇◇◇◇◇
レティシアの手伝いは結局夕飯の時間前まで掛かってしまった。
レティシアのお誘いは彼女曰く、「まだ発表前とは言え、少しは婚約者らしい事をした方が良いのかなって思って」と言う事らしい。
まあ僕自身も当日の予定はまだ無かったから、レティシアとデートする事に決めた。
男子寮に入ると、エントランスホールでアルと出会した。
方向的に、食堂に向かうらしい。
「やあ、アル」
「ああ、ジュリウス。どうしたんだ、こんな時間まで? 街に遊びに……行っては無いか。制服だしな」
「うん。ウチのクラスの委員長に、図書室の本を片付ける手伝いを頼まれてね。今の今まで手伝ってたんだ」
「そうなのか。……そろそろ夕飯の時間だ。食堂まで一緒に行かないか?」
「そうだね」
そう答え、アルと一緒に食堂に向かう。
「そろそろ聖光祭の時期だけど、アルは予定とかあるの?」
「いや、無いな。そう言うジュリウスはどうなんだ?」
「ちょっと街に出掛けようかなって」
「そうか」
「……アルはアルマとデートとかしないの?」
って言った瞬間、アルは何も無い所で転んだ。
と言うより、動揺して態勢を崩したって言うのが正しい気がする。
「バッ、おまっ……! まだ告白もしてないんだぞ!? そんな恋人みたいな――」
「なら告白すれば良いじゃん。何をそんなに怖じ気付いてるの?」
「だってお前、アルマも俺の事好きだとは言い切れないじゃないか」
そうかなぁ?
なんとなくだけど、アルマはアルに好意を抱いてるとは思う。カンでしかないけどね……。
だけどまあ、友達の恋愛成就のために協力するのは別に悪い事では無いだろう。
当分はこの手のネタでからかう気満々なのは隠しつつ。
「まあでも、告白しない事には前進しないと思うよ? 成功するにせよ、失敗するにせよ、ね」
「……そうだな」
短くそう答えたアルの顔は、何処か覚悟が決まったような表情だった。
これなら大丈夫かな? って思っていると、食堂に辿り着いた―――。
学園物と言えば告白イベント(偏見)。
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